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野木亜紀子 × 磯山晶 トークショー レポート・『逃げるは恥だが役に立つ』(2)

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【『逃げるは恥だが役に立つ』】

 野木亜紀子脚本と新垣結衣主演の3度目のタッグによる『逃げるは恥だが役に立つ』(2016)。磯山晶氏は編成としてクレジットされている。第6話の電車のシーンが上映された。

 

磯山「原作にはうまい台詞がありますけど量が多くて、普通のドラマにするとはまらない。でも野木さんに向いている、野木さんは理屈っぽいからちょうどいい、と私言ったらしいんですけど(笑)。マンガは問題意識をはっきりさせていて、そのままやるとずっと考えてるようになって。野木さんがうまく台詞に収斂してくれたなと」 

野木「(上映されたシーンに)きゅんきゅんしましたか。していただけてよかったです。私も含めスタッフも好きなシーンで、自画自賛。よかったねってバカみたいに誉め合って。峠田(峠田浩)プロデューサーが“野木さん、6話ができてドラマ人生終わってもいいです”と。まだ6話であと5本あるんだから、こんなので満足してちゃダメって檄を飛ばしました」

磯山「金子(金子文紀)さんの演出が素晴らしくて、顔の寄りで、それで終わる。普通ならいろいろするのに。6話は台本が難航して、大した話じゃないじゃないですか」

野木「いっしょに泊まりに行って、何もしないで帰ると。箱書きも直して。まむしドリンクは、書いてるうちにいよいよやばいと、時間に追われてるうちにひらめいた」

磯山「ガッキー(新垣結衣)の髪型をどうするかを話し合って、本人は“何でも言ってください”と」

野木「1時間半話して、本人も疲れてきて“で、結局どうしますか?”と(笑)。

 那須田(那須田淳)さんは二枚目よりも…気持ちが平匡(星野源)なんですよ。本打ちしてても、風見(大谷亮平)に厳しい。“いいんだよ、風見は!”って。いや彼にもいいところは…(一同笑)」

 

 タイトルバックの恋ダンスもブームになった。

 

野木「踊れるわけないじゃないですか(一同笑)。打ち上げVTRでスタッフみんながちょっとずつ踊って、それを流す。書き終わってTBS行かなくていいと思ったら、磯山さんからひとりじゃ厭だから野木さんとなら踊ると連絡が来て。金子さんがはげなのに、ガッキーの役をやって(一同笑)」

磯山「星野さんは唄ってるときがいちばんかっこいいと思っていて、劇中で平匡さんが唄ったらどうかと。でもありえないでしょって。キャラが崩壊する。それでも唄ったらフェロモンが出るのに。そこで(タイトルバックで)唄って踊ったらいいんじゃないか。那須田さんは、ガッキーが踊ればいいと、ポッキーのCMみたいに。カメラ目線で唄うという戦略で、那須田さんが自ら恋ダンスを演出して。那須田さんは『ビリギャル』(2015)のプロデューサーですので、そのスタッフをつれて来て。ドラマの収録もあるのに(笑)。『ぴったんこカンカン』で石田(石田ゆり子)さんと安住(安住紳一郎)さんが踊るときも、那須田さんが撮りました。私も踊れません(一同笑)」

野木「打ち上げではみんなで踊りましたね。古田新太さん以外は。古田さんはずっとお酒飲んでました(笑)」

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 『逃げ恥』は恋愛や結婚を考察するテーマ性も話題になった。

 

野木「多様性っていうんですか。いまは世の中やかましい。みんな人のあれこれに口を出さなきゃ気が済まない。でも人それぞれで、処女も童貞も同姓が好きでもみんなが自由に生きられたらいいというのを、水面下のメッセージとして考えていました。ラブコメでありつつも、と」

 

 主人公・みくり(新垣)の妄想シーンに、多数の新旧テレビ番組がねたとして出てくる。

 

磯山「(ねた部分は)基本、許可は取ってません」

野木「ソフト化にあたってはもちろん…(笑)。他局のは、タイトルは使ってませんので」

磯山「『真田丸』(2016)は、NHKの番組で屋敷さん(屋敷陽太郎プロデューサー)と那須田さんがごいっしょして、それで。台本ができてから撮るまでに時間がないので、乱暴に」

野木「(ねたは)みんなで考えるけど、打ち合わせで考えてもはまらない。みくり(新垣)の心情をからめてここだと決まるので、プロットだけでもダメで、初稿を書いてるときに「何ということでしょう」とか匠とか。プロポーズのときにヒラマサがきらきらしてるところは、磯山さんが、恋愛シミュレーションゲームがいいんじゃないのと」

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【磯山作品を振り返る (1)】

 磯山晶プロデューサーは、宮藤官九郎脚本の作品を頻繁に手がけている。磯山 × 宮藤コンビの第1作が深夜ドラマ『コワイ童話』(1999)の「親指姫」。最近人気の高橋一生の小さくされる映像が上映された。

 

磯山「大変だったんですよ、これ。ガムとかつくるの。思い出しました。

 『コワイ童話』というのは、童話と同じタイトルで怖い話をつくりましょうと。若手のプロデューサーがやって。好きな男の子を小さくして、引き出しで飼うという。それで宮藤くんと出会って、ホットプレートで高橋一生を焼くとか、8×4をかけるとか。簡単に書くけど、それをどうやってやるか。CG技術が当時はダメで、高橋くんは朝から夜中までずっと緑のバックの前で…。マネージャーには「このままじゃ一生が!」って怒られました。高橋くんは、当時は若手でしたね。オーディションしたんじゃないでしょうか。

 大人計画の長坂(長坂まき子)さんが、うちの宮藤くんが台本書くんで読んでくださいと。面白かったので、こういうお題で書いてくださいと。プロット持って来たら面白くて。こっちのお題に対してのレスポンスが面白い。好きな人をちっちゃくしていじめるとか、ストラップにしてつけたいとか」

岡室「ストラップにしたいですね(一同笑)」

磯山「予算が普通のドラマの倍かかって、怒られました。面白い作家さんで、次も深夜やって、その次が『池袋ウエストゲートパーク』(2000)ですね」

 

 石田衣良原作の『池袋』は、原作人気に加えて宮藤脚本と堤幸彦金子文紀らの演出によるアナーキーな青春ドラマとして注目を集めた。2000年代初頭のザラザラ感を象徴する1作であろう。(つづく)  

 

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