私の中の見えない炎

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黒沢清監督 トークショー レポート・『散歩する侵略者』(2)

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黒沢「メインの長澤(長澤まさみ)さんと松田(松田龍平)さんでない、長谷川(長谷川博己)さんと高杉(高杉真宙)くん、恒松(恒松祐里)さんの3人が笹野(笹野高史)さんに追われて対決する。3人は警察組織や軍事組織が本気で出てきたら、ひとたまりもないんですね。宇宙人とはいえ。女の子は妙に強いけど撃たれたら死ぬし、肉体は普通の人間と変わらないんです。暴力組織が出てくると歯が立たない。

 彼ら(笹野さんたち)は宇宙人の侵略に気づいた組織で、緊張関係にあるドラマを進めていくためには、強すぎてはいけない。でもふざけすぎてもいけない。武装してはいけないので、同じような制服は厭で、思い思いのジャンパーを着てる。武器も警官よりはごつい、でもほんとのアーミーの戦闘用の銃でない軽機関銃を持ってる人たち。フランスの警察官が持ってるベレッタという古い銃で、詳しい方は判ると思いますけど。米軍や自衛隊はあんなの持ってない。微妙なところを狙って。

 最終的に笹野さんが登場すると持ってかれる。大好きです。怖いと言えば怖いけど、ふざけてると言えばふざけてる。いそうにないけど、いるように見える。笹野さんの演技の力です。映った瞬間の出た感は半端じゃない。笹野さんに本当に助けられました。狙ってたんですけど。脚本上にいつもやるんですけど、100ページあったとしたら、ど真ん中の50ページがセンターにどんなシーンが来てるかが重要で、そこからがらっとタッチが変わる。それが基本形だと考えていて、まさに50ページが笹野さん登場シーン(笑)。あそこから少し変わる。それまではふざけたように進んでいくけど、客観的にそういう現象が起きていると判る瞬間ですね」

 

 黒沢作品としては珍しく笑える場面もある。

 

黒沢「笑いって難しい。笑ってほしいところは、笑わなくてもいいんですが、可笑しいってストレートに受けとめていただけたら。音を入れるときに笑い声を入れようかなと、カメラの向こうでスタッフが笑う声入れようかなとか(一同笑)。さすがに控えましたが、宇宙人侵略の話で冗談なのか判りづらい。コメディではないですけど。児島(児嶋一哉)さんのシーンはギャグですよね。(笑うかどうかは)見ている方の自由ですが、ぼくとしては珍しくコミカルにつくりました」

 

 韓国から来られたというファンの方から、ロケ地についての質問があった。

 

黒沢「ロケ地(の選定)は難しかったです。原作では地方都市、東京でない地方のそこそこの都市という設定で、東京から離れると方言が出てくるわけですね。方言を使いたくなくて、標準語で喋ってても許されるくらいの都市と設定しました。

 実際のロケ場所は茨城、栃木、埼玉、静岡、神奈川。東京周辺の各県のあちこちをつなげて。地元の方は判るかもしれませんが、多くの人には特定できない場所をさがして撮影しました」

 

 WOWOWではスピンオフドラマ『予兆』(2017)が放送中。映画にわずかに登場する東出昌大がメインなのだという。

 

黒沢夏帆さん、染谷将太さん、東出さんで、東出さんは映画にはワンシーンだけ出ています。『予兆』ではどうなっているか、同じ人物なのかどうか、見所ですのでご自分の目で…(一同笑)。東野さんは『あなそれ』(『あなたのことはそれほど』〈2017〉)どころではない(笑)。夏帆さん、染谷くんも素晴らしいです」

 

 最後に黒沢監督からのメッセージ。

 

黒沢「ひとことでこういう映画と言うのは難しいかと思います。だからこそああでもない、こうでもないと考えていただいて、言葉にする必要はないですが、映画が心の中に残ってくれたらいいなと思います。言葉で簡単に言えるものだけが映画でないと思っていますので」

 

 この前日にも青山で黒沢氏と篠崎誠氏のトークショーがあり、筆者はそちらも観覧。筆者も含めて信者の集いという感じだった前日に比べると、今回は大人しめのイベントだったが、『散歩する侵略者』はやはり「ふざけてる」映画なのだとつくり手の口から聴けたのが面白かった。 

散歩する侵略者 (角川文庫)

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世界最恐の映画監督 黒沢清の全貌

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