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中川梨絵 トークショー(神代辰巳監督特集)レポート・『恋人たちは濡れた』『女地獄 森は濡れた』(2)

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 『恋人たちは濡れた』(1973)で、初めて神代さんと仕事しました。千葉に日活の保養所があって、そこで2、3週間泊まって、勝浦とかへ行って(撮影した)。

 衣装は私の自前です。日活は衣装にお金がかかってない。自分でだいたい用意して、あとは衣装さんと伊勢丹へ行って。

 神代さんが思ってもいないことをこちらがやると、嫉妬されて嫌われるんですよ。厭な女優と思われる。『恋人たちは濡れた』は、まあまあうまくいきました。

 こないだフランスの方にも言ったんですけど、I can swim very well(笑)。(最後の海に入るシーンで)神代さんは沈んだら出てこないで、ギリギリまで長いこと沈んで、と。でも(相手役の)彼は、すぐ上がっちゃったらしい。私は知らずにずっと潜ってて、2分くらい経ってもういいかなって上がったら、みんな向こうで焚き火してて(一同笑)。衣装も自前なのに。私、すごく怒りました。“神代、出てこいや!”って。酔っぱらった後は、全然覚えてません(笑)。

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 2本目が『女地獄 森は濡れた』(1973)。例の伊佐山ひろ子さんが相手です。私、ものすごく気合い入りましたよ。

 最初のクラシックカー、調布のお金持ちの方のクラシックカーです。(劇中で)運転している方がお持ちで、運転手さんの衣装もご自分のを着ていらして。私の衣装は、浅丘ルリ子さんが『戦争と人間』(1970)で高橋英樹さんと歩くシーンで着ていたものだって言われて、何だ!とか思ったけど(一同笑)。あんな細いのによく私が入ったな(笑)。『戦争と人間』はお金かけてつくりましたからね。

 こちらは、『恋人たち』とは違う観念の世界。最初に「あなた」って戻ってきて(主人公の伊佐山ひろ子に声をかける)。これが私、判らなかった。神代さんは、“相手に興味を持つんだよ”って。何で私が、伊佐山ひろ子に興味を(一同笑)。神代さんは、“行くんだよ、梨絵”って。私は、何言ってんだって、うちのワンちゃんみたいに(笑)。神代さんは、あまり指導しないんですよ。

 撮影が進んできて、これは観念のお芝居だと、だんだん判ってきた。いまは亡き高橋明さんの屍体を(テーブルに)寝かしてごはんを食べるとか、バカみたいですけど。

 台詞が膨大で、私全部覚えようと思ったら、誰も覚えてない。アフレコだから。伊佐山さんも(現場では)棒読みで。スクリプターの人が、(撮影中も)後ろからワーワー言ってて。私も、もういいやって。カメラも姫田(姫田眞佐久)先生じゃなかったし。

 山谷初男さんは、「お前ら!」って鞭で叩いてるのに、撮影の合間には編み物してる(一同笑)。天才・伊佐山の夢も崩れた(笑)。

 アフレコで普通にやっちゃうとつまらないから、変なアフレコにした。高い声と低い声で、抑揚をものすごくつけて、上品さと下品さ、エキセントリックさを表そうと。神代さんは怒って、普通にやってくれと。神代さんはみなさんの意見を聞くタイプで、最後はどういう音楽をかけようか。スクリプターの方はクラシックって言ってたけど、私が凄惨な出来事の後はラジオ体操でしょ!って、神代さんは私に負けて、厭な女だなって。アフレコも、あれで通っちゃった(笑)。

 私は「よーいやさー」って歌ってるんですが、松竹歌劇団があれ言って始まるんですね。山谷さんの「じさまとばさまがー」って歌、あの人が普段から編み物しながら歌ってて、これいいなって思って私も歌いました。神代さん、また怒って(笑)。でも『青春の蹉跌』(1974)でもショーケンがずっと歌ってるし。

 

 神代さんの作品としては、『恋人たち』のほうが、どうぞ見てくださいと言えます。でも私の女優としての資質のすごさは、『森は濡れた』のほうに(笑)。私のアイディアも入ってるし。

 

 神代さんのお宅でみんなで飲んで、奥さんに朝ごはんをつくっていただいて。藤田敏八さんと神代さんが争った女性なんですが、不思議キャラでしたね。争ったってこの方なんだなーって。お豆腐ににらがかかってておいしかったなって、覚えています(笑)。

 

 酒井和歌子さんは東宝の1年先輩で、共演はなかったんですけど。日本映画専門チャンネルのインタビューを見ていたら、印象に残る監督は神代辰巳さんだって。“私に悪女を教えてくれた”って、ああそうなんだって。

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 全編に渡ってテンションの高いトークで、圧倒された。

 神代辰巳監督は、酒井和歌子主演の2時間ドラマの秀作を撮っており、今後触れてみたい。

女地獄・森は濡れた (日本カルト映画全集)

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