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寺田農 トークショー レポート・『ラブホテル』(5)

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相米作品と役者】

 相米相米慎二)はゴミ、タコ、カスしか言わない。その中にランクがあって、ゴミはまだ形がある。タコは、やろうとしていることは判るけど面白くない。カスは最低で何にもない。

 でもだけどね、相米は女優にだけ厳しいの。男には優しい。何でだって言ったら“男はだらしないからダメなんだ。男になんか言ったら立ち直れないけど、女はたくましいから言えば言うほどがっと来る”って。ありとあらゆる女優の涙を現場で見ましたよ。だけども結果、上がってみると自分が光り輝くようで、監督に言われた芝居じゃなくて自分の芝居だってことで、みんなまた相米さんとぜひと。相米も、何か変わっていくような人が好きだよね。

 相米は、自分が言うと教えることになるから、そうするとそいつの芝居じゃなくなる。おれなんかスポークスマンで、この芝居を笑いながらやってみなさい、次は泣きながらやってみなさい、3回目に笑うのと泣くのと半分ずつ。4回目に好きなようにやってみなさい、と言うと相米は“さっき笑ってたの面白いのに、何でそこで笑わないんだ”。そうやって積み上げていくから、時間はかかるけどひとつひとつ活きたものになっていく。金がないのに時間は贅沢で、そのかわりみんな寝ないでやるわけだけど。

 佐藤浩市三浦友和も薬師丸(薬師丸ひろ子)も、相米という通過点があってみんな素晴らしい役者になっていったね。

 出番がないときも現場に“いろよ”って言われてただいるだけなんだけど、相米が困ると“なんか言えよ”と。役者の側のことも判るし、相米がやってほしいことも判るから。

 相米が死んだ後で「キネマ旬報」とかの相米特集にいろいろ出て、役者編とスタッフ編とで分かれてるんだけど、おれは役者なのかスタッフなのか(一同笑)。実相寺(実相寺昭雄)の作品では、おれがキャスティングディレクターもやってたからいいんだけど。

 相米のお墓がある田子町、にんにくで有名なんだけど毎年夏に相米祭りがあって、ぼくも行ったんだけど。 

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【その他のエピソード】

 (ベテランの役者は)相米の“あい”“はい”みたいなのはね(一同笑)。お好きなようにって言われるのが、日本の役者はね。こうしてくれって指示があるけどできるけど。それが日本の役者と向こうとの決定的な違いかな。おれはこうやりたい、ああやりたいってよくやって、テストのときと本番のときで全然芝居が違うってよく怒られる。おれはリハーサルが好きじゃなくて、毎回違う。師匠の三木のり平がテストをやってもしょうがない、いきなり本番という人で。おれは舞台も好きじゃなくて、稽古の仕方が判らない。台詞は簡単に覚えちゃうけど、すぐ飽きちゃう。30日も45日も稽古して、よく飽きないな。

 のり平師匠に聞いたけど、松林宗恵とかは回してるだけで整合性はあまりとらない。有名な言葉だけど二枚目は人が悪い、敵役は人がいい、三枚目は意地が悪い。当たってるね。だいたい主役はそっくり返ってて、悪役は中では悪いことするけど、普段はいい人。コメディアンは意地でも他の人に笑わない。いまみたいにバラエティで他の芸人に笑うことはなかったね。のり平さんはねたを7つくらい考えて行くけど、みんな意地でも笑わない。テストやって本番だけど、同じことやっても絶対笑わないから違うことやる。するとカメラが笑っちゃってNG(一同笑)。もう1回本番やるから、また違うことやる。だからねたを7つくらい持ってないと。そういうほうが新鮮で面白いよね。

 『ラブホテル』(1985)は全部シンクロ。いまはほとんどアフレコはやらなくて、ハード面がよくなったんだろうし。飛行機が来ちゃって、映像は大丈夫だけど音が入ったというときは、オンリーっていって、ひとことだけ後ではめかえる。

 音の考え方で言うと、昔はクリアーで綺麗な音が求められて劇場のスピーカーもよくないから、それだけ音をクリアーにしないといけなかったけど、ヌーヴェル・ヴァーグ以降はリアルな音でいいじゃないかってことになって。雑踏の会話が活きてくるとかね。ちなみに『肉弾』(1967)は全部アフレコ。アフレコは芝居とシンクロしないから。音だけ浮いちゃう。だってアフレコでラブシーンなんて(一同笑)。 

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 映画監督協会の大島渚や若松(若松孝二)さんが監督の権利を頑張っているけど、著作権では役者がいちばん遅れてる。『天空の城ラピュタ』(1986)なんておれに1円も入ってないし(一同笑)昔の2時間ドラマとかも。日本の契約ではいかに役者の権利がなかったか。ニュースで昔の映画なんか10秒でも使ったら監督に使用料が入るけど、役者ではカラオケのバックにおれが出てきても何にも。

 おれはだいたいNG出さないんだよ。姑息に取り繕う。厭なんだよね、もう1回やるのが。台詞とんだこともあるけどね。新鮮というか、不安になりながらやるのが好きなんだよね。どうだってのじゃなくて、いいのかなって不安がよぎりながらやるのがいい。

 おれはあんまり大変だと思わない。監督がタコだとかあるけど、修行だと思うから、明ければおれは一段と大きな人間になっていると(一同笑)。相米や実相寺とやってても面白くて、仕事と思ったことは1回もない。仲のいい奴と時間を共有してると。みんな死んじゃったけど。

 

 寺田氏の主演映画『信玄の父 信虎』(2020)が12月に公開予定。トーク後のサイン会では「天空の城ラブホテルだね!」と笑わせていた。 

 

【関連記事】寺田農 × 中堀正夫 トークショー(実相寺昭雄監督特集)レポート・『悪徳の栄え』(1)

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