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山田太一 × 中井貴一 × 堀川とんこう × 内山聖子 トークショー レポート・『時は立ちどまらない』(1)

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 東日本大震災から3年を経た2014年、震災を描いたホームドラマ『時は立ちどまらない』が放送された。

 震災と津波によって家や家族を喪った一家(柳葉敏郎橋爪功神木隆之介)と無事だった一家(中井貴一樋口可南子黒木メイサ吉行和子)。両者の葛藤が描かれる。

 この作品は放送文化基金賞など各賞を受賞し、放送から1年後の今年1月に作品を振り返るトークショーが行われた。脚本の山田太一先生、主演の中井貴一氏、演出の堀川とんこう内山聖子プロデューサー(テレビ朝日)が出席。司会は演出家の渡辺紘史が務める。

 中井山田太一ドラマの常連で、『ふぞろいの林檎たち』シリーズ(1983〜1997)、『刑事の恋』(1994)、『春の惑星』(1999)、『終りに見た街』(2005)などに出演。

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 堀川も山田先生とのつき合いは古く、『岸辺のアルバム』(1977)、『丘の上の向日葵』(1993)、『やがて来る日のために』(2005)などで組んでいる。

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(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際とは異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください。後半の展開にも触れていますので、未見の方はご注意ください)

 

中井「俳優という仕事を生業にして、もう34年。忘却力も養われて、もうほとんど覚えてないです(一同笑)。

 震災は大きな出来事で、俳優という商売は何ができるだろう、おれたちは無力だなって。歌手は被災地で唄うことで元気づけられる。でも役者は芝居をするわけにもいかない。でも自分たちができるのはこれしかない」

堀川「1年経ってきょう改めて見てみて、演出のおざなりなところ、至らないところもあってはずかしい思いです。1年経つと、つらかったことは忘れてますね。これだけの豪華キャストで、その全員が揃うトップシーン。セットを5台ぐらいのカメラで、切らずに一気に撮りました。あれを撮ったのが初日で、難しいけどとても愉しかった。あのときのわくわくした思いは強烈で、なつかしいですね」

 

【企画とテーマ (1)】

内山「私の記憶では、山田先生のほうから3.11に触れざるを得ないというアイディアをいただいて、2013年の1月に先生とお会いしたとき、ふたつの家族というキーワードが出てきまして。先生はハコやメモを書かれないので、チーフプロデューサーの五十嵐と私でお聞きして、震災もあるホームドラマ、と。震災を扱うには覚悟もいりますので。2月の時点では、ホンはまだないんですけど、中井さんなどキャストも決まりまして、堀川監督にもお願いしていました。

 山田先生と東北へシナリオハンティングに行かせていただいて、5月に寒い中で、ドラマに出てきた小さな舟に乗って。そこの人たちの小学校時代の話をお聞きして、山田先生は少年時代の話のメモを一生懸命とっていらして。震災でなく、主にいじめの話でしたね。1泊でしたが、朝から何時間もバスに乗って、その間も先生はメモをとっていらして」

山田「シナリオハンティングに行ったのが、一昨年の5月でしたね。内山さんが言ったように、案内してくれた漁師さんの話に面白い話がいろいろあったんですね。ヤギのお乳に直に口をつけて飲むって、ぼくが疎開して行ってたらそれ死ぬほど厭だろうな(笑)、そういうの書こうって。

 何しろ震災ってすごいことで、あの(取材の)ときも駅も何もなかったですね。それをそのまま描いても、ドキュメンタリーにかなうわけない。でもマイナスのことを放映できない。他の人からはもらってもあいつのプレゼントはいらないとか、内輪揉めは映せない。ドキュメンタリーでは励まされる傑作がいっぱいあって、ぼくはたくさん見て、ぼくはどうしたらいいだろうって。でも頭を冷やすと、ドキュメンタリーにマイナスは描けない。また、何でもないことでも、ドキュメンタリーでは美談になって感動できちゃう。

 ネガティブな部分も含めて人間を描けるのは、ドラマしかないんだって。そうそう人の身になれるかって、中井さんの(演じる)支店長が言っています。そういうことがないと、どうしても綺麗ごとになってしまう」

堀川「山田さんのホンの特徴として、案外あぶない部分を含んでる。絆とか思いやりは無条件に美しいのか、被害に遭わない人が叫ぶ絆が被災者の慰めになっているの、っていうのがある。思いやりが美しいという通念があるとしたら、社会に行き渡った通念をドラマでチェックする。こういう弱点や嘘が含まれてるじゃないかと指摘してしまう。うまくいけば理念を疑うって成功するけど、失敗すると失礼になる。ホンを読んで、そこを踏み外すと失敗するなって考えて迷いましたね。こないだの『ナイフの行方』(2014)でも社会に行き渡ってる思い込みは疑わしいですよって。それが、最近の山田さんのひとつの視点の中心なのかな」(つづく)

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