私の中の見えない炎

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大海赫 × 松井周 トークショー レポート・『ビビを見た!』(3)

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松井「大海さんが普段何を考えているというか、哲学的なことを考えられていた時期があったんでしょうか」

大海「ありますよ。ぼくは一時坊主になろうと思っていた時期があってね。真剣によ。鎌倉の東慶寺へ行って、住職に“坊主になりたいんだけど、どうしたらいいですか”って訊いたんですよ。坊主に坊主なんて言って、失礼なんだけどさ(一同笑)。“円覚寺行って座禅やれば、答えが見つかるでしょう”って言われたの。それから座禅やったんですけど、変わりますよそりゃ。みなさんも座禅やってみてくださいよ。じっと座ってるって大事なことで、女の人もいいんですよ。円覚寺がいいですね(一同笑)。

 座禅は考えちゃいけないから、終わった後でぱっとひらめく。自分はどうやって生きればいいか。悩んでたときは、座禅がいちばんいい。その前は宗教的にも悩んでたね。どうやって生きてったらいいのかとか」

松井「『ビビを見た!』(復刊ドットコム)のホタルが救いを見つけた気がしましたけど、それはご自身が生き方を見つけたというのとつながっているんでしょうか」

大海「つながってるでしょうね。意識してませんけどね。第六感でこっち行く。考えるというよりひらめく。考えちゃダメなんですよ」

松井「でも考えてしまいますね」

大海「考えてるうちは、ろくな考えが浮かばない」

松井「そうですね。どうしようかな(一同笑)」

大海「考えてるうちに、やがてひらめく」

松井「考えちゃダメなんじゃないんですか(一同笑)」

大海「考えちゃダメ。でも考えないわけにはいかない(一同笑)。仕事でもしながら生きてるうちにひらめくんだね。ぼくの言うことは荒唐無稽かもしれないけど、実際そうなんですよ」

松井「大海先生の作品がぼくのルーツとしてあって、一度きちんと舞台にしたい。それで『ビビを見た!』の世界は現代の社会だって気がすごくしたんですね。視力を失うっていうのもそうで、比喩的な意味でも先が見えない。そういうときに人は大きな音がするほうへ走って行っちゃう。いまやったほうがいい作品だと思いました。完成度が高い作品を舞台にするので、舞台でしかできない表現に変換・翻訳する感じでつくっています」

大海「『ビビを見た!』はいまでこそ騒がれてるけど、出版したときは1冊も売れなかった。全く売れなかった。結構長い時間(笑)。だから売れないなんてことにショック受けちゃダメよ(一同笑)。そのうち売れるだろうと思ってね。じわじわ売れ始めたのね。出版した理論社の小宮山量平さんが偉大な人で、これをどうしても出そうって言ったんですよ。慧眼ですね。売れなくたって、悲観することはないです。名作はそういうもので、自分のこと名作なんて言ってるけど(一同笑)。

 『ビビ』は、あっという間にできて考えてる暇もなかった。ビビという強烈なイメージがあって、妖精が日本文学に出てきたためしがないでしょ。この妖精をどう表現するか。あんた、妖精のこと考えたことあります? ひらめくと自然にストーリーができちゃう」

ビビを見た! (fukkan.com)

ビビを見た! (fukkan.com)

大海「天国は誰も行ったことがない。こういうところかなって想像し始めると具体化していく。ぼくは天国のことしか考えることないですよ。面白いですよ、天国は(笑)」

松井「死んだ人がみんな笑って待ってて、この世って苦しかったけど大したことなかったみたいになってたらいいですよね」

大海「そうそう。暗く考えないほうがいい。仏教が好きだから悪口言いたくないけど、死んだ後の世界を冥土って言うでしょ。暗いところって意味で、それじゃダメなんですよ。うんと明るいと思ってないと。終わり!」

松井「『ビビを見た!』の世界のためにいろんなアイディアを出し合って、総動員してつくっています。形はできていまして、ああこうなったかと。みなさん原作を読まれている方ばかりでしょうが、ぼくなりに五感を使ってつくった作品になっております。俳優もあざだらけになって特殊なこともやっていますので、いろいろ体感していただけると思います」

大海「ぼくはおまかせよ(笑)。ぼくが愉しみにしてちゃしょうがないでしょ。期待してるだけ」 

 

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