『独立愚連隊』(1959)などの映画作品で知られ、2005年に世を去った岡本喜八監督。
昨年11~12月には、銀座シネパトスにて特集上映が行われ、岡本監督を信奉する庵野秀明、樋口真嗣両監督のトークショーもあった。この日の上映は『激動の昭和史 沖縄決戦』(1971)と『ブルークリスマス』(1977)で、両氏はこの2作を愛好することで知られる。トークの模様はシネパトスのサイトにアップされていたのだが、今年3月の閉館とともにそのページもなくなってしまったので、レポを載せることにした(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや、整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。
この時点では庵野秀明監督の最新作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(2012)の公開から2週間後であった(今回のトークでは『Q』について一切触れられことはなかった)。樋口真嗣監督の新作『のぼうの城』(2012)もまだ公開中。真嗣監督は『ブルークリスマス』の劇中に登場するロックバンドの台詞「なーんちゃって」と言って登場したが、あまり受けていなかった。
トークの進行役は、映画批評家の樋口尚文氏が務める。氏はこの銀座シネパトスを舞台にした映画『インターミッション』(2013)にて、監督デビューを果たした。
【『激動の昭和史 沖縄決戦』】
『激動の昭和史 沖縄決戦』は、太平洋戦争末期の沖縄戦を描いた大作で、一般人を多数巻き込む凄惨な地獄図がこれでもかと描かれる。徹頭徹尾シリアスなタッチで、特殊技術を務めた中野昭慶は「喜八ちゃんらしくない気がした」と後に述懐していた(『特技監督 中野昭慶』〈ワイズ出版〉)。
庵野「『激動の昭和史 沖縄決戦』は、『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(1987)が終わった頃にレンタルで借りて見ました。以前は100回以上見て(絵コンテ執筆のときに)BGVに流してた。この映画のエネルギーを浴びてると、コンテも進む。最近は見てないけど」
真嗣「東宝(映画)の予告編集のビデオがあって、それで見て、猛烈に買ってよかったと思った。(同じく岡本作品の)『日本のいちばん長い日』(1967)の曲が流用されてて、それでしびれたんです。どんな映画だろうと思って見たら、頭を殴られたような…。
『ふしぎの海のナディア』(1990)に入ったころ、ふたりで競うように(岡本作品を)見てました」
庵野「あのテンポのよさ。『トップをねらえ!』(1988)も『沖縄決戦』を見た後で変わるんです。1~4と5、6は違ってる」
真嗣「それまではマンガ、アニメだったのが、邦画のイメージが入ってくるんですね」
尚文「ぼくは公開された日に見たんです。『ガメラ対深海怪獣ジグラ』(1971)と『沖縄決戦』が同じ日で、親にちゃんとした映画を見ろって言われて『沖縄決戦』を見たら熱出した(笑)。その前に見たのが『斬る』(1968)で、重い監督って印象でした」

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庵野「リアルタイムじゃないから『日本のいちばん長い日』も『ブルークリスマス』もテレビで見て、似てると思ったら同じ人。文芸坐やPARCOで特集があって、できるだけ見た。他に『斬る』とか、プログラムピクチャー時代は大概好き」
真嗣「『血と砂』(1965)もいいです。
岡本監督は、悪意の人かなって。権力に対する悪意で彩られている。理不尽に人の命が軽んじられるっていうか、大人っぽく言うと意地悪さだな」
庵野「大人の言葉で言えば皮肉(一同笑)」
真嗣「あ、持っていかれた(一同笑)」(つづく)
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