私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

佐藤優 × パスカル・ペリノー × ヤン=ヴェルナー・ミュラー × コリン・ウッダード トークショー “台頭するポピュリズム、危機に瀕する民主主義” レポート (2)

パスカル・ペリノー氏 (2)】

 何故このような動きがあるのでしょうか。ジークムント・フロイトは、1930年に「文化における不安」というテーマで本を書きました。両大戦間にファシズムが台頭してきたのは、ヨーロッパの文化に不安があるからだと書いたのです。私は現在同じような仮説をもとに考えることができると思います。現代のヨーロッパには不安、居心地の悪さがある。経済的な不安、古き工業社会が崩れつつあるという現状。中心を担った労働者は、ポスト工業社会では占める位置がない。労働者の抗議がナショナルポピュリズムの形をとっています。また文化的な不安もあります。グローバル化という課題に直面しています。政治的なグローバル化EUの政治的統合に巻き込まれている。移民の問題もある。それらの課題を前に、われわれの社会は分裂している。一方は(グローバル化には)メリットがあると主張し、もう一方はうんざりだ、もっと内向きになって場合によっては閉鎖するべきだと主張する。

 ヨーロッパは複数政党の社会です。第二次大戦の後に生まれた形で、大統領制あるいは半大統領制です。この代表制民主主義の形が疲弊しています。投票することにも疲れて、選挙ごとに棄権率が高まっています。政治的な代表制の危機がある。ポピュリズムは政治を拒否して、古い代表制と戦おうとしています。

 雑駁なプロファイルを描いてきました。ポピュリズムはいずれ沈静化すると言われてきましたが、熱は決して冷めない。年々、高まりつつあります。ブレグジットEU離脱)の後、英国は島国に閉じこもろうとしている。オーストリアでは、政府がオーストリア自由党と連立している。東欧には非リベラルなナショナリズムが生まれている。複数政党制のメカニズムにゆらぎがあります。何十年ぶりに一部のオブザーバーは、欧州議会でもナショナルポピュリズムが台頭するのではないか、EUに終止符を打つのではないかと危惧します。世論調査でも不安な兆候があり、何十年ぶりに強いリーダーを求める声があります。権威のある強い人間を、若者たちが求めているのです。複数民主制の将来には大きな懸念があると、私は思っております」

 

【ヤン=ヴェルナー・ミュラー氏 (1)】

ミュラー「世界中でポピュリストという語があまりにも使われています。右派であろうが左派であろうが、政治家はラベルづけされています。ポピュリストであるか否なのか。マカロン氏でさえ、フランス国内では一時、中道派のポピュリストとうたわれていました。

 メディア関係者にはイメージのバイアスがあるのではないか。ポピュリズムは波となって押し寄せていると、イギリス独立党の党首ナイジェル・ファラージも言っていました。ポピュリストは津波のようだ、津波だからこそ旧態依然とした体制をかき消してしまうと表現しました。しかし津波というイメージは誤解を呼んでいると私は考えます。

 そもそもポピュリズムの定義は何なのか。今日のポピュリストと呼ばれる人たちは、エリート・体制を批判するものと広義の意味で定義されています。しかしよく考えると不可思議な概念ではないでしょうか。21世紀に入ると、権力者に対して批判的なのは危険なポピュリストであると言われたものです。しかし話はそれほど単純ではありません。ポピュリストは政府を批判するだけでなく、自分たちのみが本当の国民を代表している、代弁者であると主張します。

 ポピュリストは、他の人びとが合法でないと訴えます。違いを認めるというのが民主主義の世界では健全です。しかしポピュリストは、反対勢力にある者は腐敗している、間違っている、国民のために動いていないと言います。ホワイトハウスに君臨する現職の大統領も、2016年の大統領選では極端な文言を使っており、例外ではありませんでした。ポピュリストは、トランプ氏が対戦相手に使ったのと類似した言葉を使ったりします。そして一般市民の中で彼らと価値観を共有しないのであれば、真の国民ではない、疑ってかかるべきだと定義します。

 ブレグジットの夜、ファラージ氏が言いました。この決定は、まさに本当の民のための決定で、勝利であると。イギリス人の48パーセントがEUから脱退したくない、だが彼らは本当の国民ではないと彼は言ってのけた。また2016年のアメリカ大統領選でトランプ氏は、いちばん大事なのは国民の統一でそれ以外の人はどうでもいいと言いました。

 ポピュリストは(他者が)真の民であるか否かを決めるのです。パスポートを持っているか否かなどではなく、自分たちに賛同するかどうかという話です。いちばんの危険性は反多元主義です。ポピュリストは、彼らに賛同しない人たちを排除していきます。

 それでは、ポピュリストは国を統治することができるでしょうか。リベラル派は、ポピュリストは統治できない、反エリートである彼らは政権に回るとエリートになってしまいポピュリストではなくなると主張します。またポピュリストは世界の複雑さに比して単純なアイディアを持っており、一旦政権を担うと、初日から何も実践できない。国境沿いに壁をつくることもできない、と言われてきました。しかし、こうした発想が危険だと私は思っております。世界各地を見渡せば、実証例はあります。トルコ、ポーランドハンガリーベネズエラなどで台頭してきています。アメリカもそうなりつつあるかもしれません」(つづく

ポピュリズムとは何か

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