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三池敏夫 トークショー “特撮映画の美術 井上泰幸の時代” レポート (3)

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三池「『ウルトラQ』(1966)の第1話「ゴメスを倒せ!」で、おそらく世の中に初めて井上さんの名前が出ました。映画では『ゼロファイター大空戦』(1966)が最初ですが、これは夏公開です。

 円谷(円谷英二)監督に美術センター、のちの東宝ビルトで “テレビをやるから井上くん、ちょっと行ってくれ”と頼まれて行ったらしいです。ゴメスはゴジラの、リトラはラドンの飛び人形の改造です。この怪獣のデザインもセットデザインも井上さん、人手がなくて飾り込みも井上さんがやったらしいです。このセットのディテール、やりすぎてますね。こんなにやるから、やって当たり前みたいになって、のちの『ウルトラマン』(1966)は大変なことに(一同笑)。セットの中から中島春雄さんのゴメスが出てくるんですが、もぐってなきゃいけないから大変ですね。当時は中島さんも元気だったんでしょう。井上さんは4話やってて、「クモ男爵」のクモのデザインも井上さんですが、知識がなくてクモなのに目をふたつしか描かなかったと。だからのちの『ゴジラの息子』のクモンガは複眼です。クモ男爵の館が沼に沈む仕掛けも井上さんですね。「五郎とゴロー」のセットもテレビでここまでやりますかと。「1/8計画」は、東宝のミニチェアをおそらく持ってきたんですね」 

三池「怪獣映画の金字塔『サンダ対ガイラ』(1966)は、井上さんは美術監督になってます。渡辺さんと入江さんは退社されて東宝から抜けてます。デザインは成田亨さんで、円谷プロで同時進行で『ウルトラマン』(1966)もやってるころですが、円谷監督は東宝とプロとを行き来してますからその中でやることになったんでしょうね。スーパー兵器のメーサー車のデザインは井上さん。

 カット割りは監督の裁量ですが、井上さんは台本をどうセットに置き換えるかを把握するために、カット割りして絵コンテを描いています。タコが漁船を襲うところ、羽田でガイラが女性を食うところとか全ての特撮カットを描いてます。羽田のセットでどういうミニチェアが必要か、材料はどれくらいかが書いてあります。そこまで仕切ってました。海から出てくるんですが、ひとつのステージに海も飛行場もつくったのかと思ったら飛行場だけ。海は別セットです。意外と切り返しでやってて、贅沢ですね。ほんの短いワンショットのためにセットをつくってるところもあります」

三池「井上さんが初めてメインでゴジラに関わったのは『ゴジラ モスラ エビラ 南海の大決闘』(1966)ですね。人間との対比図もあって、これをもとに美術がセットをつくる。エビラも井上さんのデザインで、実は人が入っていて、画面では見えないですけど足がある。怪獣に入るのは大変な苦行ですね。入るだけで大変なのに、周りは火薬や煙で地獄です。エビラは水にいるので濡れますし、冬場は寒いし。出現では爪だけ海から出るんですが、巨大感を出すために爪だけ別スケールでつくってます。それまでは実在の場所をセットで再現してましたが、この時代はもう架空。台本をもとに井上さんのイメージで設計してます。島の地形図、役者さんのシーンも含めて、このシーンはここでと指定してあります。演出に踏み込んだ部分もやっている。この時期には円谷さんは体を悪くされてて、有川さんが仕切ってやられてたみたいです」 

三池「『キングコングの逆襲』(1967)は合作で、キングコングゴジラの半分くらいのスケールなので、セットは大きいです。怪獣デザインは向こうから来たみたいで。キングコングとメカニコングは手が長くて、継ぎ手で延長してます。俳優さんが入るものの3分の1くらいの金属製メカニコングもブリキでつくられていて、高木敏喜さんというマイティジャックやウルトラホークをつくった方がやられたとご本人から聞きました。引き画のために使ってたと。ホバークラフトは、デザインがどなたか判りませんけど空気で浮かすというのをつくったらしいです」

 

 当時スタッフだった白崎治郎氏も来られていて、「割合スムーズにいきましたよ」と証言。

 

三池「あ、吊ってないんですね。ドクターフーのヘリは、前と後ろのローターに動かない軸があって、そこを吊ってる。吊るときは基本は3点で吊ると安定するんですが、ヘリは2点。すぐぐらぐらして、予算がない特撮ではヘリがぐらぐらしてしまう。この映画では5機が出てきて、キングコングを引っ張ってる。一挙に5機やるってすごいですね。

 南極基地は井上さんのデザインです。キングコングは高いところに登るのが定石で、東京タワーは『モスラ』のような小さいのじゃなくて、俳優さんの入った怪獣が登れるタワーを4種類つくっています」 

三池「『ゴジラの息子』(1967)のカマキラスやクモンガは井上さんのデザインです。ギミックは口くらいで、操演で動かしてる。カマキラス3体を上で動かしてて生命感を出してて、すごいですね。この作品でも井上さんが絵コンテまで描かれてて、どんどん描いているのでお上手になってますね(笑)。特技監督は有川(有川貞昌)さんですから、井上さんはご自分のために描いてて人には見せてないんだよっておっしゃってましたけど、出来上がった映画はコンテに近い流れになってます。カマキラスがミニラを襲うシーンは、井上さんのコンテそのまま。いかに井上さんの指揮で全部が動いてたかということですね」(つづく) 

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