私の中の見えない炎

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藤木孝 トークショー レポート・『乾いた花』(2)

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藤木「役者は、本番の前にリラックスするために天気のこととか話して本番にパッとできるタイプと、そのずっと前から集中するタイプがいます。ぼくは不器用で、後者のタイプ。(共演者と)あまりお話が弾まない(笑)。

(『涙を、獅子のたて髪に』〈1962〉での犬を投げるシーンでは)本当に投げました。いまほど、動物を愛していない時代(笑)。飼い主さんも判っていて、犬にとっても仕事です。殴り合いでは、本当に殴っています。舞台とは違う点ですね。

 (『乾いた花』〈1964〉では)加賀(加賀まりこ)さんとは、篠田(篠田正浩)監督が呼吸を合わせてくださった。

 葉役で藤木を使ってみようと思ってくださったのは幸運でしたね。石原慎太郎さんの短編小説をまず読んで、自分なりに(演技の)設計図をつくって現場に行くんですね。

 『獅子のたて髪に』の主人公・三郎は現在生きている人でした。でも、葉は抽象的な存在。冴子も池部さんも、賭博にのめり込まずにはいられなくなる、その水先案内人のような…。大事なのは村木と冴子の心の動きです。出演しているときは思いつかなかったんですけど、葉は生きているのか死んでいるのかも判らないような儚い存在。篠田監督の演技指導の賜物ですね。

 賭博の場面で、ぼくの後ろに唐獅子牡丹の衝立がありました。そこで自分がただ息をしている。篠田監督の美的センスですね。“ここにすわるんだ”って言われたときは嬉しかった。

 台詞はなかったんですが、ぼくは下手だったから、台詞を言ったらぶち壊しになると思ったんじゃないでしょうか。

 爪を噛んでるところがあって、忘れてましたけど、“藤木、ちょっとそこで噛んでごらん。何も表現しようとしないで、目線はこっち”って。“ライトの下を見て、その1メートル先”とか、カメラの位置で目線の指示が違う。撮影の小杉正雄さん、あの方のセンスもすごくて、ワンカットずつをプリントして展示できるくらい」

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 『獅子のたて髪を』、『乾いた花』の音楽は武満徹。『美しさと哀しみと』(1965)、『心中天網島』(1969)、『はなれ瞽女おりん』(1977)など、武満は篠田監督作品の音楽を多数手がけた。

 

藤木「池部さんが街をさまよった後、歌声が聞こえる。当時のロケはアフレコで、アフレコ現場で音楽の武満徹さんに“譜面はないけど、藤木、きみのフィーリングで唄ってくれ”と。記憶が定かじゃないけど、世界的な大作曲家に勝手に唄えと言われたことを嬉しく思いまして、即興で唄いました」

 

 藤木氏と池部良との映画での共演は、『乾いた花』のみのようである。

 

藤木「池部さんは22歳も上の大スター。初めてお会いしたのはこの作品の制作発表のときで、どうぞよろしくお願いしますと頭を下げた気がします。

 横浜の日の出町でのロケでは、近くの旅館が控え室で、そこで池部さんとご一緒しました。恐れ多くて、こちらから話しかけたりする心の余裕はなかったですね。池部さんは本当にジェントルマン、さわやかで凛となさっていて、芸能界でない世界にいたとしても立派な方だったんじゃないかなって、若いぼくは思いましたね。

 賭場のシーンは、松竹大船のセットで、長い時間撮っていました。

 麻薬を打つシーンは、すっかり忘れていました。こんなことやったなって…人間っておそろしいですね(笑)。

 自分で勤務評定すると『獅子』は落第。そんな下手な藤木を『乾いた花』では使っていただいて。その後、ぼくは文学座福田恆存先生の劇団欅に入れていただいて、劇団昴などに30年以上所属して勉強しておりました。

 『梟の城』(1999)では篠田監督から久々にオファーをいただきまして嬉しかったんですけど、その期間に舞台の契約があって出演できなかったんです」

 

 藤木氏は「みなさま、ありがとうございました。失礼いたします!」と颯爽と館内から出て行った。

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