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私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

真船禎 × 切通理作 トークショー レポート・『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンエース』(2)

切通理作 テレビ

【「悪魔と天使の間に…」(2)】

切通「『帰ってきたウルトラマン』(1971)は恐竜型(の怪獣)が多くて、でも途中で市川さんの脚本ですけど宇宙怪獣が出てきた(第18話「ウルトラセブン参上!」)。そして当時幼年誌に、今度は宇宙人が出てくると。でも(第31話「悪魔と天使の間に…」には、宇宙人は)出てくるとワンカットだけで、主人公の郷秀樹が(少年は宇宙人だと言っても信じてもらえず)逆に疎外される。その少年はあどけないのに、急にすごい魚眼の画になる。

 怪獣をやっつけるとき、(必殺の武器の)ブレスレットが(逆に)ウルトラマンを攻撃するとか娯楽としてもよくできています。

 ラストシーンは、子どものときに気づかなかった。真船さんがアレンジされてますけど。これから真実を知る。ウルトラマンが怪獣を倒しても解決していない、これから始まるんだと」

真船「市川さんは子ども番組を長くやっていらした。でもぼくはこれがウルトラ作品のデビューでした。市川さんは30歳でぼくは38。ぼくはジャリ番組はできないと断ったら、プロデューサーで円谷プロ社長の円谷一さんが、ぼくの先輩の方ですが、“ジャリ番と思ってつくっていない、誤解だよ真船ちゃん。親父(円谷英二監督)は『ゴジラ』(1954)をつくったけどあれは子ども向けじゃない。ぼくはあれをテレビでやりたい。怪獣倒して解決したくない。偏見を棄ててくれ”と。ぼくは恥ずかしい思いをして。

 脚本も既に決まっていました。それを軽い気持ちで読んだら、ちょっと唖然とした。こんなホンを7時台の子ども番組でやるのか、真面目に取り組まなきゃと。『ウルトラマンエース』(1972)、『ウルトラマンタロウ』(1973)、『ウルトラマンレオ』(1974)とつづけてやりましたけど、そのデビューですね。

 市川さんのことは、同じ業界ですから新進気鋭の作家として名前は知っていました。その後組むことはなくて、それから再会まで40年ですね。

 困ったのは、脚本で少年を殺すと。(視聴者は)少年は劇団若草とかから来て、隊長は根上淳さんと判ってる。フィクションの世界なんですが、大人が口のきけない少年を撃つ。撮るほうとしてはいろんな手を考えたんですけど。

 この作品は倫理を否定する。悪魔は、悪魔でございますって顔で出て来ない。表だけ見るのは危険で、表だけで同情するのは100%のものじゃないっていうテーマ。宇宙人は地球人のウィークポイントを狙ったわけだから、これは撃たなきゃいけないって、やけっぱちになって撮りました」

 

 「悪魔と天使の間に…」で怖いのが、魚眼レンズで撮られた少年の無気味なアップで、これは大人が見てもぎょっとするほどのものである。

 

真船宇宙人が撃たれてもいいって思ってもらうためには、少年の正体が出てこなきゃいけない。かわいい子役だけど、郷秀樹に宣戦布告する。そういうショットを入れれば、撃ち殺される衝撃が少ないかなと。当時は、魚眼レンズはあまり使われてなかったですね」

切通「画が止まって、目が点滅してる。それが怖かったって、きょう控え室でも話したんです」

真船「当時は光学処理が必要で、画をストップ・モーションにしないと膨大な費用がかかる。やむを得ずストップ・モーションにした。残念なんです、ぼくは」

切通「技術的制約ですけど、逆に怖かったですね」

真船「それはひょうたんから駒ですね。

 市川さんのホンでは郷隊員が(自分なら)嘘を言うと、でも隊長は真実を伝えようと歩き出す、そこで郷隊員のアップで終わるとなっていた。でも監督というのは脚本の通りがいいのかという葛藤があって。これから美奈子は地獄のような話を聞かなきゃいけない。育っていくのは彼女だから、恐ろしい話を聞く直前の彼女の顔で終わりにした。小学生だった人には、難しかったかな」

切通「シナリオでは郷のアップでも、(完成作品では)彼女のアップ。真船さんがそこまでシナリオを読み込んでいたからで、だんだん意味が判っていったというところがあります」

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市川森一の人間像 (1)】

真船「ドラマは、目に見える表側から表現する。でもインナーな部分、心の部分も表現するのが大事です。ウルトラマンは極端な世界で、善と悪が対立する。でも人間そのものが善か、と投げかけるのはキリスト教的ですね。

 キリスト教(の世界観)は神と悪魔の戦い。悪魔は悪いほうへ人間を引っぱっていく。『創世記』で神様が人間をつくった後、蛇が嘘をつくことを教えた。人間の悪の心を目覚めさせるものがあって、ウルトラマンがそれを止める。市川さんはそういうふうに考えていたんじゃないかな」

切通「市川さんはテレビ人としてインタビューに答えるときは、悪意の部分を強調していたというか。でも教会での対談では素直で。

 脚本家は、よく覚えていないってことも多い。つくっている人たちは徹夜したりして心血を注いでいて、にもかかわらず忘れる。でも見た人は覚えてる。市川さんは、それは自分のために考えてないからじゃないかと。普段は損得しか考えてないのに、ドラマを書くときは違うって。ぼくは、だから見る人の心に残るのかなって思いましたね。

 市川さんは対談の後で、これからは教会に通うと言ってて。テレビ人的な軽いリップサービスかと思ったけど、奥さまが教会での対談の後にほんとに教会に通われるようになったと」(つづく)

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