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山田太一講演会 “いま生きていること” レポート (1)

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 シナリオライター山田太一先生は、シナリオの書き手としては、ほぼ日本最高と言っても過言でない巨匠である。ご当人曰く“片隅の話”である、無名の人びとを主人公にエンターテインメント性と社会批評の視点を併せ持つ作品で、テレビ『男たちの旅路』(1975~1982)、『岸辺のアルバム』(1977)、『早春スケッチブック』(1983)、『ふぞろいの林檎たち』(1983~1997)などの作品で知られ、昨2012年には『キルトの家』で健在を示した。2011年には小説『空也上人がいた』(朝日新聞出版)、小説・シナリオ集『読んでいない絵本』(小学館)の二冊を刊行(特に後者は出色だった)。今年1月には舞台『心細い日のサングラス』が開幕するなど、いまだ旺盛に新作が発表されるのがすごい。

 3月19日に、渋谷にて山田太一先生の講演“いま生きていること”が開催され、行ってまいりました(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや、整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

 壇上の山田先生はお元気そうで、先生が「今年79歳」と言われると、客席から驚きの声が漏れる。

 

【幼い頃の想い出】

 若いとき、戦争を少し知ってるんですが、浅草から疎開しました。うちは縁故なしで疎開したから近隣に知り合いがいないので、食べものがない。だから、こんなに顔色の悪い男がいるのかと思ったと、後で同窓会で言われました。

 母の実家に白米をもらいに行ったことがあるんですが、警察が(闇米を)摘発していたんです。そこで9歳の姉が、これは正月にみなで食べるんで、商売じゃありませんと一生懸命言った。すると警官は高架を指して“ふたりで逃げろ”って言うんです。姉は“ありがとうございます!”といっしょに逃げて。

 その経験が自分の自己形成に大きくて、ぼくは何かの職業から、はみ出さないとダメだっていう固定観念を持ったんです。市役所なんかで仕事をしている人を見ても、“あ、はみ出してるかな?”なんて思って(一同笑)。

 50代になったとき、(当時の)警官のルールを知ったんです。“みじめなおばあさんと子どもは逃がせ”っていうルールがあったんですね。あれははみ出したんではなくて、システムだったんだ(一同笑)。厳しい食糧事情のときに、警官にそういう通達があった。現実ってそういうものかと、ひとつの体験を規範にしちゃいけないなって、50代になって反省しました(笑)。

 

【時代の変化 (1)】

 昔、身障者の雑誌に出たことがあったんです。渋谷の喫茶店で写真を撮ってくれるのが脳性麻痺の人で、(体が)動いてしまって(撮るのが)難しいんですね。ああ、ぼくは身障者のことを知らないなって。公園通りから駅までぼくが車いすを押したんですが、当時は(道に)段差がたくさんあった。で、押し方が下手で怒られた(笑)。

 当時の身障者の人は、他人に迷惑をかけるからってうちに閉じこもっている人が多かった。映画館へ行っても、昔は席が決まっていないから、空いてるときに来いって言われたり、身障者に対する感覚が荒っぽかったんですね。

 人に迷惑をかけてはいけないっていうのは確かにそうなんだけど、それでいいのかと。そこでドラマ(『男たちの旅路/車輪の一歩』1979)では(主人公の)鶴田浩二さんが、つまり健常者の人が、人に迷惑をかけてもいいって言うことにした。ドラマのラストで、みなが見守ってる中で(それまで引きこもっていたヒロインが階段の前で)「どなたか上げてください」って言うと、(周りの人が)上げるところでラストにした。

 その後、大阪駅で初めてエレベーターがついたりして、すると今度は上げてくれって言わなくなって、私の主張は無意味になって(笑)。時代の変化は激しいと、テレビの仕事をやっていると思う。小説では、あまりそういう問題を扱えなかったんだけど。

 昔、九州のRKB制作の東芝日曜劇場で、気の弱い青年が電車の切符を買う話を書いた。どもる人はカ行が言いにくいそうなので、駅の行き先の春日原(かすがばら)が言えない。ラストで、どもらないで「春日原まで一枚」って言うシーンを書きました。でもいまは(自動販売機があるので)こんなシーンは書けない。時代の変化で、こういうひどい目にあう(一同笑)。(つづく) 

 

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