私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

高村薫 インタビュー(2002)・『晴子情歌』(2)

Q:『晴子情歌』は、高村作品初の、女性を主人公とした物語です。はじめて女性をじっくり描くときに感じた面白さ、難しさなどについてお話ししていただけますか?

 

A:女性を描くことに関しては、自分が女性ですから、そんなに抵抗はありませんでした。むしろ、どうして今まで書かなかったのかと言いますと、ミステリーや警察小説の枠組みの中では、刑事に付属している家族や女性のことはどうしてもつけ足しになってしまいます。つけ足しという形では女性は描けないから、あえて中途半端なことはやめたほうがいいと思っていました。逆に言うと、女性をまともに書こうとすると、余計なものを全部そぎ落としてもこれだけの分量になった、ということです。晴子はけっして変わった女性ではなく普通の女性です。それでもこれだけの分量になるのですから、歴史に名を残すような女性だったら、一体どれだけ枚数がいるんでしょうね。

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佐藤優 × パスカル・ペリノー × ヤン=ヴェルナー・ミュラー × コリン・ウッダード トークショー “台頭するポピュリズム、危機に瀕する民主主義” レポート (5)

【パネルトーク (2)】

ミュラー「ここ数年、新しい政権が誕生しています。ハンガリーポーランドベネズエラ、トルコしかり。どのような名称で新しい政権を呼ぶか。独裁、専制ではぴたっとこないという感じがあるんじゃないでしょうか。ただ重要なのは用語ではなく、民主主義が機能不全に陥っているというところがあるのではないでしょうか」

ペリノーポピュリズムが1980年代にヨーロッパに出現したとき、通常の代表制民主主義が難しくなってきたのを表しています。既に述べたように中間団体が弱体化した、市民が選挙から遠ざかったということです。棄権した人は庶民階級に多いです。ポピュリズムは、庶民を選挙に引き戻したいと主張しています。その意味ではポピュリズムがよい問いかけをしたと言う人もいますが、ポピュリズムがよい問題提起をしたとしても、その解答はよくない。庶民が選挙に戻っても、結局は権威主義や独裁が目指されている。

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佐藤優 × パスカル・ペリノー × ヤン=ヴェルナー・ミュラー × コリン・ウッダード トークショー “台頭するポピュリズム、危機に瀕する民主主義” レポート (4)

【パネルトーク (1)】

西村政党政治の疲弊というのは、何が原因なのでしょうか?」

ペリノー「第2次大戦の後で代表制民主主義がつくり直された。さまざまな政党や組合、団体がつくられてきました。中間団体と呼ばれる、草の根と国家との仲介を行うものです。20年くらい前から、すべての民主主義では、このような団体は危機に瀕しています。フランス国民の92パーセントがいかなる政党に信頼を置かないと言う。92パーセントですよ。数多くの民主主義国家では、市民とシステムとの間に空隙がある。そのスペースにポピュリストが進出してきています。

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