Q:『晴子情歌』は、高村作品初の、女性を主人公とした物語です。はじめて女性をじっくり描くときに感じた面白さ、難しさなどについてお話ししていただけますか?
A:女性を描くことに関しては、自分が女性ですから、そんなに抵抗はありませんでした。むしろ、どうして今まで書かなかったのかと言いますと、ミステリーや警察小説の枠組みの中では、刑事に付属している家族や女性のことはどうしてもつけ足しになってしまいます。つけ足しという形では女性は描けないから、あえて中途半端なことはやめたほうがいいと思っていました。逆に言うと、女性をまともに書こうとすると、余計なものを全部そぎ落としてもこれだけの分量になった、ということです。晴子はけっして変わった女性ではなく普通の女性です。それでもこれだけの分量になるのですから、歴史に名を残すような女性だったら、一体どれだけ枚数がいるんでしょうね。