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中野昭慶特技監督 トークショー レポート・『地震列島』(2)

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 『地震列島』(1980)の地下鉄のシークエンスに関しては、営団地下鉄から抗議を受けたという。

 

中野「地下鉄のシーンでは、水の深さは電車の半分、3メートルくらい。けっこうあるよね。あれだけのセットは、他社ではできないんじゃないかな。

 ミニチュアも1/25じゃなくて1/15〜16くらいで大きい。

 大森健次郎(監督)のいいところは粘り。他の人だとあそこまでパニックシーンは撮れなかった。偏執的な突っ込みが、この映画を面白くしている要因かな。スタッフの誰もが“OK”と思っても、監督が“もう1回いこう”って。でもどこが違うか言わない。

 勝野洋くんはすごく素直な人だから、何回もやり直しをしていましたね。

 永島敏行は台詞の間がある。その微妙な言葉の間がよくて、リアクションがうまい。ゴジラとか、特撮にいいのはリアクションのうまい俳優だね。小林桂樹もリアクションがいいよね。子どもに“東宝にいるのに、ゴジラに出ないの”って言われてたらしい。千田是也もリアクションうまいね。

 多岐川裕美はロボットみたいだった。全くまばたきしない。地震のシーンでひざを怪我してたけど、文句も言わずにちゃんとやってた。

 松尾嘉代は、病み上がりなのに水に浸かるシーンをやってた。身体のどこかを手術して、退院後にあのシーン。監督もちょっと悪いなって言ってたんだけど、本人が“私やります”って。1、2時間水に入っていて、その水も泥とか入ってる汚い水だしね」

 

 首相役の佐分利信はすごい貫禄だけれども、「戦後36年、営々として築いてきた繁栄が一瞬にして燃え尽きたか」などと立ち尽くすのみ。

 

中野佐分利信さんは頑張ってるけど、もっとアホに演出してもよかったね。もっと軽く情けなく。災害ものの為政者っていつも無能だよね。大森も後で、“そうかな”って言ってた」

 

 主人公に無理解な大滝秀治や娘にたかる松村達雄は、それぞれ無残な最期を遂げる。ヒステリックな村瀬幸子は棚の下敷きになっていたが、死ななかったらしい。あまり敵役のイメージのない役者たちだけに、ちょっと笑ってしまう。

 主人公の勝野洋は死亡し、その犠牲によって助かった妻の松尾嘉代はラストで朝日を浴びて「あなた」と叫ぶ。

 

中野「生き残った松尾嘉代が“あなた”って言う。酒飲みの席で、監督も“あなたはちょっとな”って。いろいろ迷いもあったね」

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 中野監督は、『ゴジラヘドラ』(1971)などゴジラシリーズも撮っている。制作条件が悪かったようだが、シリーズを仕切り直す『ゴジラ』(1984)ではある程度潤沢につくれたという。

 

中野「(自分の時期の)ゴジラ映画では予算が削られて、戦いは毎回荒野。日本に荒野ってあるのかな(笑)。

 84ゴジラでは少し予算が増えた。今度は周りの建物が大きくて、頭痛かった。ゴジラの図体より大きいタンカーもあって、どう見てもゴジラだけじゃ倒せない。1954年のとき(『ゴジラ』〈1954〉)は、銀座の和光がいちばん大きかったからね。いまはゴジラを巨大生物とは言えないよね。もっと早く生まれたかった(一同笑)。84ゴジラは爆発抜きで撮った。プロデューサーからゴジラを原点に戻そうって言われて、いろいろ制約があった。未消化でしたね。

 いまやるとしたら、ゴジラ原発放射能を吸ってくれてみんな助かったという話にしようか。ゴジラに福島を救わせる(一同笑)。

 切り口が難しいね。過激なテーマ設定にすると、政財界が文句言うしね。アメリカ版ゴジラ(『GODZILLA』〈1998〉)で、(ゴジラが)すごいスピードで走るってのもひとつの切り口だよね。ぼくなんか、けっこう面白いと思ったけどね。

 黒澤明さんもゴジラに興味持ってて、編集のときに後ろからのぞきに来てたからね。黒澤さんはワンマンだって言うけど、話せば判る人なんだよ。“じゃあ代案は?”って言う。(『日本沈没』〈1973〉の監督の)森谷司郎さんも大森さんも、黒澤さんの弟子だよね」

 

 中野特技監督は実にパワフルな話しっぷりで、トークを観覧するのは3度目なのだが、毎度多彩な話題が繰り出されて全く飽きない(笑)。もう監督業をされることはないのかもしれないけれど…。

 

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