私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

黒沢清 × 高橋洋 トークショー レポート・『蛇の道』(1)

 幼い娘を殺されたアルベール(ダミアン・ボナール)は、日本人医師(柴咲コウ)の協力を得て容疑者をつかまえ痛めつける。だが謎めいた医師は別の目的を持っていたのだった。

 黒沢清監督『蛇の道』(2024)は、同監督が過去の『蛇の道』(1998)を自らリメイクした。フランスから自作をつくり直さないかとの依頼を受け、全編フランスで撮影されている。2024年6月に新宿で、黒沢監督とオリジナル脚本の高橋洋とのトークが行われた(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

【オリジナル版の企画・脚本】

黒沢「厭な人たちが厭なことをやって最後は厭な目に遭うという映画なんですけれども、最後はほんの少しばかり、貫く主人公のさわやかさのようなものが少しはあったかなと思っているんですけどいかがだったでしょうか」

 

 オリジナル版では哀川翔が主演した。

 

黒沢「これは哀川翔さん主演の作品のリメイクです。この厭な物語を考えたのはぼくではなくて、オリジナルを考えたのはこちらにいる、友人の高橋洋さんです。復讐劇と言ってもこんなにスカッとしない厭な物語、どういういきさつで最初に書かれたんですか」

高橋「『復讐 運命の訪問者』(1997)というのがあったんですけど、その続編みたいなことをやれないかっていうふわっとしたオーダーがあったんですね。それで黒沢さんと話して、プロットを書いてきてもらえないかと言われて。ぱっと浮かんできたのがふたりの男が車に乗って、いまから復讐に行くと。しかも一方がガチガチに緊張してて、運転してる男は平然と「今度にしとく?」。あのやり取りがすっと出てきて、プロットを終わりまで書いたんですね。黒沢さんが読んで「途中であとは後日って書いてあるのかと思ったら、最後までできてるじゃん」って。それで1回ホンにしてくれということでわりとするすると」

黒沢「オリジナル版は、時間はかけようがなかったんであっという間にできた。でも復讐する話ってオーダーがあったにせよ、復讐を手伝う主人公っていう。「きみの復讐を手伝うよ」というのが秀逸です」

高橋「いま思い出した。『蛇の道』にかかる少し前に、篠崎誠監督に子どもが生まれてめちゃくちゃかわいくて、篠崎さんは「自分の子どもを殺す奴がいたら、警察とかと一切関係なく自分で追いつめてぶっ殺すって言ってたんですよ。それぐらいかわいいということですけど(笑)。ぼくは、警察をかいくぐって犯人を見つけるのは大変だと思うけどって。冤罪もあるけど、もし警察がつかまえれば確度のかなり高い犯人だけど、自分でインディペンデントでさがして見つけた犯人はほんとにそいつなのか疑わしいよね。冤罪の可能性を棄て切れないのに復讐できるかな、とか」

黒沢「篠崎の子どもが生まれたときにそんな話を」

高橋「もしそんなことがあって親が復讐するとしても、冤罪かもしれないという大問題にぶつかったらどうするか。なんか頭の中でぐるぐる考えていたんですよ。それで冤罪の疑いを全く抱かない、どうでもいいと思ってる人がいて(笑)それが哀川翔なんだと」

黒沢「オリジナル版もフランスで撮ったバージョンも、ターゲットが本当にその人でいいのか判らなくて、そいつに本当にそうなのか訊いてすると次から次と怪しい人が出てくる。復讐のジャンルではありますが、一方で監禁拷問物ですね。本当にターゲットか判らないので、拷問と言っても大したことはしませんが、監禁して問いただす。監禁拷問物に最終的になっていったいきさつはあるんですか」

高橋「二人組がターゲットを拷問して吐かせるときに、映画を見ているお客さんたちも冤罪の疑いをどっかに抱きながら見るわけですね。こいつら本当にやったんだろうかと。だけど下元史朗さんをはじめとするターゲットは、手を下してはいなくてもどうやら許し難い犯罪に加担した一味ですね。だからこいつらには何やってもいい。どんだけいじめても大丈夫。その限りを尽くして、観客も殺人に加担している。意地の悪い構造をとってみたかったってことですけど、つくったときに理路整然としたことは考えていませんよ」(つづく

蛇の道

蛇の道

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