
【印象的な場面 (2)】
『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)の第22話「爆発する恋」は、当初は変身しない予定だった。
若松「八丁湖公園で撮った「爆発する恋」のときなんか」
井上「おれは戦闘がなくて変身もない、ロボットも出てこない恋愛だけの話を書きたかった。史上初じゃない? 前から根回しして、鈴木さん(鈴木武幸プロデューサー)を説得したり。監督は東條(東條昭平)さんかな。東條さんにも何回も言って、一応ホンは通ったんだよ。ところが××がNG出したんだろうね。鈴木さんから電話かかってきた。準備稿のときでまだ撮ってなかった。呼び出されて直した覚えがあるよ。あの話はいかにも取ってつけたように戦う(笑)」
若松「1年間ずっとそんな感じですね」
雨宮「おれは黙って「え、ヒーローは出てませんでした?」とかすっとぼけて(一同笑)」
若松「『ジェットマン』はお初が多いですね」
第36話「歩く食欲!アリ人間」と第37話「誕生!帝王トランザ」は敵のトランザ(広瀬裕)が登場して、ターニングポイントとなる。長野県の山田牧場で撮影された。
若松「山田牧場で1週間ぐらいのロケで、井上さんもいっしょにいたよね」
井上「行った行った。そこでおれ初めて白倉(プロデューサー補の白倉伸一郎氏)に会ったんだよ。長野に来たのがあいつにとって初めての『ジェットマン』の仕事」
白倉プロデューサーと井上氏はその後、『仮面ライダーアギト』(2001)や『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(2022)などを手がける。
雨宮「(ロケは)愉しかったね」
井上「そこで『ゼイラム』(1991)を見せられてね(笑)」
若松「『ゼイラム』は衝撃でしたよ。特撮であそこまで細やかだと。食事した後に雨宮さんが「初めて人に見せるんだよ」と」
雨宮「『ゼイラム』のスタッフもまだ見てなかった」
若松「『ジェットマン』チームが初めて見た」
井上「あの女優さんよかったよな」
雨宮「『ジェットマン』の1・2話やってたのが助かったね。スタッフの仕事のさせ方というか。ルーティンで早く帰りたい人もいるから」
井上「そりゃ世の中どこにでもいるよ。おれだっていま早く帰りたいもん。いや冗談(一同笑)」
第47話「帝王トランザの栄光」では敵のトランザの末路が描かれる。
若松「「帝王トランザの栄光」のシーンが」
井上「(劇中では)精神病院と言ってないけどホンには書いたかもしれない」
雨宮「ホンにはよだれは書いてない。ホンから見えたんだろうね」
井上「広瀬はあのシーンがいちばんやりたくて」
雨宮「井上のホンにはそういうところがあるね。よくしてやろうっていう。行間がいいっていうかね」
井上「懐かしいね。こうして雨宮と『ジェットマン』の話をする日が来るとは思わなかったね。しかも公衆の面前で(笑)」
【『ジェットマン』の演出陣 (1)】
『ジェットマン』は冒頭の1・2話も最終話も雨宮氏が演出した。その他に新井清、東條昭平、坂本太郎、蓑輪雅夫の各監督が参加している。
雨宮「『ゼイラム』があったけど、『ジェットマン』も1年やった気がするね。1話と最終話やる人ってなかなかいない。1・2話やるような売れ線の監督ってさ、商品を見せるコマーシャルカットをいっぱい撮れるじゃない? 最終話は他の人が修行の意味で。そのころには1・2話の監督は次の(作品の)1・2話を撮ってる。
おれが万が一ひとりで(全話を)撮ってたら、こんなにお客さんが来る作品にならなかったね。もっと偏ったものになってた。蓑輪さんとか東條さんとかああいう監督のカラーがあって。東條さんは変なところに呼ばれたって気持ちだったかな。『ジェットマン』は王道じゃないもんな」
井上「話が王道じゃないし、当時の東映の監督もいまと全然違うからね。ものをつくる姿勢がね。いい意味でも悪い意味でも職人だった」
雨宮「そう、職人。東條監督なんかすごかったもんな」
若松「東條監督はジャイアンツが負けたときとタバコが吸えないときはダメ出しがきつかった」
雨宮「東條監督の現場、見に行ったんですよ。開口一番「はい、カット37」っていきなり言って。「きみ、さっきここで落としたでしょ」。自分のコンテでは物を落として拾ったってことなんだけど、誰にも説明しないから。監督の頭の中にあって。若松も「何やってるか判らないんですよ」って言ってたよね。おれも何やってるのか判らなかった。次は「カット16。ふたりこっち行って」。できたのを見るとちゃんとつながってるんだよ」
若松「東條監督の場合は、それじゃわかんないってこっちが文句言うと黙る」
雨宮「アコ(内田さゆり)の言うことは聞いてたな」
若松「アコは「昭平ちゃん」って言ってました(一同笑)」
雨宮「猛獣使いみたいな。だから最終話のアコちゃんのマネージャーは東條監督で(俳優として出演)。あの役は誰がいい?って訊いたら「東條監督がいいです」」(つづく)


