私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

雨宮慶太 × 井上敏樹 × 若松俊秀 × 岸田里佳 × 成瀬富久 × 三輝みきこ トークショー レポート・『鳥人戦隊ジェットマン』(2)

【シリーズの冒頭】

 『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)の第1・2話は雨宮氏が撮った。

 

雨宮「1話の後で初号を見た後で、井上が文句言ったの覚えてる?」

井上「何て言った?」

雨宮「「1個だけ気に食わねえ」って。香(岸田里佳)がきゅうり食うときに台本では「うまい」って書いてあるけど「おいしい」って言ってる。普段はお嬢さま言葉を使ってるキャラが「うまい」って言うぐらいうまいきゅうりだと。おれは「おいしい」で撮ったけど、あれから考えて何で「おいしい」でよしとしたんだろうって考えたら、多分1話はまだキャラをプレゼンしてるときだから、お嬢さまというキャラがぶれるなって思ったおれがいる」

井上「後づけだろ(笑)。お前、おれに言われて一瞬は納得したんだよ。後でなんか違和感があって、その正体をさぐったらそういうことだったんだろ。それでいいんだよ。それは問題ない」

雨宮「作品に対して真面目に向き合ってたな、みんなが」

井上「そりゃそうだろ(一同笑)」

若松「現場じゃピリピリしてましたよ」

井上「当たり前だよ。ただ香は雷太(成瀬富久)の畑で食うんだよな。そこのシーンだったらもうお嬢さまだって(視聴者は)判ってるけどな。まあお前が正しい(一同笑)」

若松「井上さんは1話から7話までどっと(担当した)」

井上「当時、おれ東映動画(現:東映アニメーション)とか東映本社とかでは書かないんで有名だったんだよね。書かないですぐどっか遊びに行っちゃう。鈴木さん(鈴木武幸プロデューサー)はおれが7話まで書くと思ってなかったみたい。びっくりしてたね。仕事の姿勢の問題でさ、仕事より人生を愉しむほうを優先してた。いまはだいぶ疲れてきて、仕事を優先してますよ」

雨宮「きょうもここにちゃんと来てるもんね(一同笑)」

 

 序盤でも『ジェットマン』の異色さは際立っている。

 

雨宮「井上は(過去に)やったことないのがやりたいと最初から言ってたね。1話で5人が揃わないとか、5話で合体して失敗するとか。バンダイ(スポンサー)の人はきょとんとしてたけど(一同笑)」

 第5話「俺に惚れろ」でロボットの合体が上手くいかないのも斬新である。

 

井上「合体の失敗は(東條昭平)監督が何でここで失敗するのかって言うわけよ。電話で鈴木さんに言われたの。監督がそう言ってると。鈴木さんは「井上くん、監督がやっぱりわかんないって言ってるから直してよ」。おれはふざけんな、絶対失敗しなきゃダメだって」

雨宮「その回、おれ撮りたかったんだよ。井上がやりたかった意図とちょっと違うんだけど、(戦隊シリーズは)いつもヒーロー側のおもちゃしか出ないんだよ。敵のおもちゃが出ない。ロボのおもちゃだけ出されて、子どもにどうやって遊べっていうんだってのがずっとあって。唯一、遊べるのが合体失敗ごっこ。だから井上が合体失敗って言ったときにおれは乗って、ただまさか自分がその話を撮れなくなると思わなかった(笑)」

 

 雨宮監督は映画『ゼイラム』(1991)を撮るために一旦離脱している。

 

雨宮「1・2話やって、その次が第19話。お休みして『ゼイラム』撮ってた」

井上「でも『ゼイラム』に旅立って、帰ってきたら一人前になってたんだよな。あれ、監督らしくなってきた。大人になったな(笑)」

若松「1・2話のときは、雨宮さんがわれわれに演出上、言われた記憶はないです」

雨宮「多分、撮り方が変わったんだよ。1・2話では絵コンテを描いてたんだよ。ラディゲ(舘正貴)が映ったり。結構、絵コンテ通りいかねえんだよな」

井上「そりゃそうだろう」

雨宮「『ゼイラム』もなかなかコンテ通りいかない。現場で決めたり芝居も変えたりするのが面白くなってきて、ゆるくなったんだね」

ゼイラム

ゼイラム

  • 森山祐子
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【印象的な場面 (1)】

 第17話「復活の女帝」では、停電したエレベーターで若松氏の凱が「ガキのころママに習わなかったか。男は狼ってな!」と香に迫る。

 

若松「エレベーターで真っ暗になって香に迫るシーンがありました」

井上「セクハラだな。強引にキスしたり」

若松「引っ叩かれたり」

井上「ひどい目に遭ったな」

若松「あなたの脚本じゃないですか」

井上「でもひどい場面はおいしかったろ?」

若松「ありがとうございます(一同笑)。井上さんの脚本で、エレベーターが真っ暗になって「いっそのこと、おれのことを嫌ってくれ」って台詞がある。エレベーターの中でほんとはありえないんだけど、私が「マッチを擦って口もとでふっと吹き消したら香はどういう表情をすると思います?」って話を監督にしたら、照明の斎藤久さんが「それ面白いね。やりたい」って言って。吹き消して、目がギラギラするところを見せたいと」

井上「お前の欲望の象徴だな(笑)」

若松「香の表情がどうなるかと。そのシーンをやっても、あの時代はフィルムでモニターチェックができなくて、ほんとに真っ暗かどうか判らない。後で見てみたら意外と明るかったんですよ。もう少し暗かったほうが」

井上「それは難しいな。

 途中から、鈴木さんは恋愛の要素は抑えてくれって言い始めた。いろいろ反撥の声があって、読売新聞に投書が3回載ったかな」

若松「3回どころじゃないですよ」

雨宮「子どもに見せられないって」

若松「賛否両論でも嬉しかったですよ」

雨宮「当時は、こんなにお客さんが来るって感じはしなかったよ」

井上「でもこんな作品ないからね。トラウマになるしね。いい作品ってのはトラウマにならないと(拍手)」

雨宮「台本通り撮ってるだけだから(一同笑)」(つづく