私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

浦沢義雄 トークショー レポート・『名探偵コナン』『妖怪天国』『忍たま乱太郎』(4)

【アニメーションについて (2)】

 最近は『名探偵コナン』(1996〜)での浦沢義雄脚本がネットなどで「トンチキ」だと話題をまいている。『コナン』のストーリーエディターを務める飯岡順一とは若いころからのつき合い(浦沢先生の初参加は2019年の「東京婆ールズコレクション」である)。

 

浦沢「(原作は)読んだことないもん(一同笑)。基本的にマンガ大っ嫌いなんだ。子どものころから全然好きになれない。いまだにマンガの読み方もわかんない。何で『コナン』をやってるかっていうと、飯岡さんっていう昔『ルパン三世』(1980)をやってた人がいていま80歳くらいなんだけど、飯岡さんを尊敬してて。トリックに関しては日本でいちばんすごいと思うんだ。飯岡さんはトリックは52個ぐらいしかないって言う。全部発明したのがコナン・ドイルでアガサ・クリスティはほとんど盗作だと。アガサ・クリスティは(劇中の)人間関係をつくるのが上手いんだけどね。飯岡さんは、だから新しいのを考えるのはやめたほうがいいって(笑)。飯岡さんが「こういうトリックでやりましょう」とか言って、それでやってく。

 最初は原作と全然違うことやりたいって言ってちょっと評判良かったんだ。だんだん『コナン』のファンから怒られるようになってきて(一同笑)。

 (放送が)書いてから1年後ぐらいなんだ、溜めといて。オンエアもよくわかんない。青山(原作の青山剛昌)さんがすごいのは、何も言わないんだ。こっちが何やってても。あんだけお金あるとさ(笑)。なかなかああいう人いないんじゃない? (浦沢脚本を)喜んではないだろう(一同笑)。

 なるべく子ども向けの作品だと思わないようにしてつくってんだけど。ただ子ども向けだと手抜きする人が多くて、おれもらくなんだ。(大人向け)ドラマだと真剣に打ち合わせしたりして、勝手に考えろっていう(笑)。子ども番組の人とかアニメーターとか何も言わないから。アニメーターはコンテを切るときに勝手に直すから、こっちがなんか言っても仕様がない。どう考えたって向こうが偉いから(一同笑)」

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【その他の発言】

浦沢「うちは靴屋だったけどつぶれた。作家になってたときはもうやめてたかな。それをやるのが厭で作家になったかな。(作品に靴屋が出てこないのは)靴屋が嫌いだった(一同笑)」

 

 『ペットントン』(1983)などスカートを洗いたがるストーカーや洗濯機が登場。『勝手に!カミタマン』(1985)の第6話などでもスカートめくりが扱われる。

 

浦沢「スカートを洗いたいっていうのは、コント55号のコントで考えたのがいちばん最初なんだ。洗濯屋が「あなたのスカートを洗いたい」って。そんなに面白くなかったけど、おれは気に入って、スカートを洗いたい洗濯機だと面白いかなって。おれが子どものころはまだスカートめくりってあったんだよ。いまはやっちゃいけないんじゃない? 当時はそんなに怒られたかな。

 賽銭泥棒も平気なんだ。みんなやってたような気がする。うちのほうは、ほんとに貧しい奴がいた。手を突っ込んだり、ガムをつけたりとか。友だちで賽銭箱ごと持ってきた奴がいて、うちの庭で壊すんだ(一同笑)。大きいとこじゃなくて小さいとこの賽銭箱だけど、まさか持って来るとは思わない。遊ぶところは神社が多かったからさ」

 

 手塚眞監督のオリジナルビデオ『妖怪天国』(1985)にて浦沢先生が担当したのが「おでん神社」。賽銭箱におでんが浮かんでいて眞監督の父・手塚治虫をはじめ楳図かずお、水木しげる、馬場のぼるといった巨匠マンガ家が俳優として出演した。

 

浦沢「『妖怪天国』(のマンガ家たちは)は手塚眞くんのキャスティング。お父さんは手塚くんに甘かったからさ。お賽銭箱におでんが浮いてて、すくって取るっていうおでんすくい」

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 鈴木清順監督の影響は強く、リスペクトしていたという。

 

浦沢「おれたちの時代は清順だけだったね。黒澤明より清順だったと思う。清順さんがまた黒澤明の悪口言うんだ(一同笑)。すごく愉しそうに。清順さんは変なこと言うんだよ、たまに。「感動する奴はいちばん嫌い」とか。心が濁ってる奴がするもんだと。心が澄んでる人は感動なんかしない(一同笑)。小さいときは感動なんかしなくて、どっかで傷ついてから感動する」

 

 『ズームイン!! 朝!』での徳光和夫「天気予報の歌」、『うたう!大龍宮城』(1992)の挿入歌など作詞も多数。

 

浦沢「最初は作詞に自信があったんだけど、全然売れないからもうダメだ(笑)。徳光さんの歌もレコードになるって言ってたんだけど、ソノシートで日テレの玄関にお持ち帰りって(一同笑)。こっちは3番まで一生懸命考えたのに」

 

 最近の浦沢先生は『コナン』の他にNHKの『忍たま乱太郎』シリーズも執筆するが、コンプライアンスが厳しくなっているという。

 

浦沢「もうあきらめたけど。つい最近までよくわかんなかった、コンプライアンスって。昔から言われたこと(指示)には逆らわないように、全部やってたんだ。作家づらしないで、何でも言うことを聞きますって(笑)。それでも「えっ、そんなことまで言うの?」って思った。NHKでコンプライアンスはすごいから、おれのホンはめちゃくちゃだってコンプライアンス会議に出されたんだ。呼ばれて講習会を受けさせられた(一同笑)。昔は気にしなかった、書いちゃえばそれまでだから」

 

 映画『ルート29』(2024)に俳優として出演した。

 

浦沢「いろんな事情があって出なきゃいけなくなった。老人の役だよ。スナックに来ている老人。(ロケ地は)鳥取。自分の作品じゃない。見なくていい(笑)。

 いまは(やりたいことを)考えてもそんなに愉しくない。若いころは愉しいじゃない? 何も知らないから何でもできそうな気がする。いまは、これはできないなってすぐ思っちゃう。

 生きがいはローン。家のローンを払い終わったら死んじゃう作家は多いんですよ。おれの先生だった人もそうで、ローンはずっとあったほうがいい(一同笑)」

ルート29

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