私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

高樹澪 × 北浦嗣巳 × 油谷誠至 × 高橋巌 × 古林浩一 × 清水厚 × 勝賀瀬重憲 トークショー “今だから語れる実相寺昭雄秘話” レポート・『アリエッタ』『「堕落」 ある人妻の追跡報告』(5)

【エロス系の作品】

 実相寺昭雄監督には『アリエッタ』(1989)などアダルト系の作品も多数ある。

 

古林「『無常』(1970)や『曼荼羅』(1971)などエロスが実相寺のテーマになっているところもありました。『帝都物語』(1988)が終わってからKUKIというAVメーカーの中川(中川徳章)社長から、ブルーフィルムをたくさん撮られて土佐のクロサワと言われてた方が初めてAVを撮ると。実相寺監督が監修をやることになって(『風立ちぬ』〈1988〉)。

 ぼくは途中からコダイの役員になってしまったんですが、実相寺が(さまざまな仕事で)すぐにちゃぶ台返しをするので、コダイが莫大な借金を負っていて。事務局長で特撮監督の大木(大木淳吉)が借金を返そうって奔走しました。美術の池谷(池谷仙克)さんは社長だったけど自分の仕事をしてわれ関せず。そういう裏事情が実相寺にはついて回ってまして。実相寺がアダルトビデオの企画を持ってきてくれて、ぼくらがアダルトを監督をするきっかけになって食い扶持にもなった。そういうアダルトで借金を充当するというのは、大木さんは厭がってたんですけど受けざるを得なくなった。

油谷「8ミリの世界では土佐ものは有名だったみたいで(笑)。その方は確か原さんの田舎の後輩だったか、つながりがあるんですけど。『帝都』の後でぼくもつけって言われて、どっかの民宿に泊まり込んでやってたんだけど。その方もすごい方で、高樹さんもいるのにこんな話して申しわけないんだけど、行為そのものより音にすごくこだわっててびっくりしたんだけど」

古林「ぼくはついてない。「お前は子どもだから遠慮しとけ」って監督に言われた(笑)。

 それでKUKIと実相寺昭雄とが(つながった)。中川さんは天井桟敷の出身で、監督と仲良くなって。本物のエロスをやりたいと監督はおっしゃって『アリエッタ』を。最初から3部作をつくるぞってぶち上げて、『アリエッタ』で初めてAVに挑戦するんですけど、絶対AVじゃありません。映画でした。行為はあるけどドラマが語られる」

 この時期の数年間に、実相寺作品に多数出演したのが加賀恵子。

 

古林「『アリエッタ』でどの女優さんを選ぶかというときに、加賀さんがオーディションに現れてまして、実相寺はものすごく気に入る。加賀さんをとにかく撮っていきたいと。加賀さんはこの後の『ウルトラQ  ザ・ムービー 星の伝説』(1990)にも出演されています。アダルトの女優さんで演技はできないからということで、指導はぼくなんかがやれって言われました。家庭的な事情があったので、その面倒は高橋と勝賀瀬と北浦さんが見る。そういう情況でした」

 

 加賀主演『「堕落」 ある人妻の追跡報告』(1992)には高樹氏も出演した。実相寺が脚本・監督を務める。

 

北浦「予算は2000万出してくれて大作ということで。ただ内容的に高樹さん堀内(堀内正美)さんやってくれるかなというホンだった(笑)」

高樹「面白いと思いますよ。人間くさすぎるというか。実相寺監督は両極端の部分を持っていらっしゃいますね。クラシック音楽とエロスと」

北浦「堀内さんも快諾してくれて」

高樹「加賀さんに興味があったんですよ。実相寺監督が加賀さんを愛しすぎていて、あの監督が愛してしまう女性ってどんな人なんだろう。見たら摩訶不思議な、いままで出会ったことのない女性でした」

北浦「ぼくらがいる世界とは全然違うところで生きている」

高樹「同じ空間にいるのに同じ空間にいないんですよ。別次元から来てるはず。お疲れさまでしたって言ったら、電車でも車でもなくて違う空間に帰られる」

北浦「特殊な方で地が芝居になってる。はまればすごいリアリティ」

高樹「撮影はOKでも表に出ていない映像がありますね。普通は撮っちゃいけないものを撮ってる」

古林「加賀さんに自分が持っている世界を託すみたいな。エロスの部分が爆発したっていうか育っていった。でも加賀さんに対する過大な思いが、加賀さんにとってものすごく負担になっちゃったんですね。それであるとき、現場に来なくなってしまった。

 オペラの教授を退官した後にエロス系が復活してきて、呼び出されて「なんか仕事つくってくれ」って言われてて。それで「鏡地獄」で、そういうのの演出は直接自分でやらないでぼくにやらせる。成宮(成宮寛貴)くんの演技指導は、ぼくが監督に指示されながらやっている。監督はもう動こうとしてなかったね。さらに(エロス系を)やりたかったと聞いてはいます」つづく