行き詰まっていた鬼才映画監督(山岡竜弘)は新人俳優を公募して、新作をつくろうと目論む。俳優志望の夫を亡くした女性(黒河内りく)など個性豊かな面々が応募するが、映画の企画には大物の俗物プロデューサー(渡辺哲)の横槍が入ってしまうのだった。
『愛のむきだし』(2009)や『冷たい熱帯魚』(2011)などの園子温監督『エッシャー通りの赤いポスト』(2021)は、ワークショップの新人俳優たちを大胆に起用した意欲作。映画館に向かう途中で、出演者の方々が「エログロなしの園子温監督の新作です」と宣伝をされていた。
上映終了後に園監督とOKAMOTO'Sのオカモトレイジ氏とのトークショーが行われた。司会は映画監督役の山岡竜弘氏で「ちょっとはずかしいんですが鬼才の映画監督・小林正を演じました」とあいさつ(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。
園「(山岡氏は)一応は主役なのに司会までやっていただいて。長い時間待たされたので、ちょっと飲ませていただきました」
オカモト「ぼくもよくわかんないまま…」
園「来年レコードつくるんですけど、ぼくのファーストアルバムでレイジくんにジョージ・マーティン役をやってもらっています。
毎日ぐらいここに立ってますけど。きょうもありがとうございます」
オカモト「(出会いは)岡村靖幸さんに紹介していただいたんですね」
園「思い出した。いっしょにカラオケ行って、今度飲もうというときに呼んだんじゃないかな。いまは一児の父親だけど当時はかわいくて、うちに秘密兵器みたいなおもちゃをいっぱい持ってて「これ面白いんだよ!」と変なバッジとかめんことかを見せつけてきて、さすがにこれは3歳児ぐらいしか面白がらない」
オカモト「そんなことありましたか(笑)」
園「秘蔵のものを見せるから、ありえないぐらいピュアだなあと。いまは邪悪かもしれないけど、あのころは結婚もしてなかったから。20歳を過ぎてこんな人いるんだと。7~8年ぐらい前かな。棚はすべてレコードで地震が起きたら死ぬんじゃないか。あれほどレコード集めるバカがいるんだと。美しかった。
きのうはDJイベント。面白かったよ。…話題が尽きた(一同笑)」
おふたりはこの前日に渋谷でDJイベントを行ったという。
オカモト「昔「DJって何がいいの? 人の曲かけて」って言われてましたよね」
園「還暦だから、そのぐらいの(年齢の)奴ってDJをバカにしてますよ。演奏もしない、作詞作曲もしない。株主みたいに上澄みで儲けようとする輩」
オカモト「ちょっと前に渋谷パルコの屋上で昼にイベントやることになって、そのときのテーマが “人生で初めてDJイベントする人しか出ないイベント” 。それで園さんを誘ってみようと。始まるまでに園さんめっちゃ緊張してて、やめとけばよかったって(笑)。でも始まったら爆音で自分の好きな曲が流れるってすごく愉しそうにしてくれて」
園「悪くはないけど、かっこいいはずがないとは思ってた。おれってこんな曲が判ってるんだぜみたいな、きもーいと(笑)」
オカモト「そんなことなかったっすよ。曲のかけ方も表現の一歩なので。園さんは同じ曲を10回かけるんですよ」
園「昔のラジオのディスクジョッキーみたいに紹介もして「作詞作曲は〜」みたいな」
オカモト「そんなスタイルでやる人いないですよ」
園「いちばんださいスタイルでやりたかった(笑)。レイジくんとは来年いっしょに何かをしたいなと。ぼくがレコードをつくるときは、ドラム叩いてほしいかな。三上寛にそっくりにしたい。新宿フォークゲリラふうに」
『エッシャー通り』にはその監督の実体験や実感が強く込められているという。
オカモト「わけ判らないうちに涙出ちゃう。まじで泣きましたね。出てる方とか監督とかに直接感想を言うのって独特な気持ちになります(笑)。
生で見たときに伝わってくるようなエネルギーが映像になっててすごいなって思いました」
園「心筋梗塞で倒れて2分ぐらい心臓が止まって心肺停止で、その間は宇宙に旅立って霊界に行ってて(笑)。帰ってきたときに思ったのは面白いことしたいなと」(つづく)