武田信玄(永島敏行)の父・信虎(寺田農)は、信玄に追放されて京にいた。信玄危篤の報を受けて甲斐へ戻るが、信玄の息子・勝頼(荒井敦史)や家臣らと対立する。
信玄の父・信虎の晩年を描いた映画『信虎』(2021)はメイクや髷、美術、所作など徹底してリアリティーにこだわった異色の渋い時代劇。リアル志向でありながら超現実的な場面も織り込んでいるのがユニークである。
10月に甲府で先行公開され、11月から全国公開。初日に日本橋で寺田農、永島敏行、荒井敦史、左伴彩佳(AKB48)、監督の金子修介、共同監督の宮下玄覇の各氏の舞台挨拶が行われた(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。
寺田「本日はようこそ。どうぞ500年前の世界をお愉しみいただければと思います」
永島「嬉しいですね。いままでは席がひとつずつくらい空いている映画館でしたけど、こんなにお客さんに入っていただいて」
金子「戦国時代の空気を味わってください。よろしくお願いします」
寺田「公開は今年ですが、撮ったのは一昨年。77歳、喜寿でお祝いされてこのお話をいただいて。長生きはしてみるものだなと。
舞台挨拶ってのはね、これからごらんになるみなさんに内容のことをお話はできないし。何を喋ろうかといろいろ考えてね。
(映画の)途中で猿が出てくる。私はかわいがってて、その猿の名前はこころっていうの。私は寺田。寺田こころ、どっかで聞いたような名前だな(一同笑)。この猿は3か月くらい前からトレーニングして、トレーナーの女性が3人くらい来て「よーしよし」「よーくできた」って拍手してあげるんですね。それでおれが芝居やったら「よーくできた」って手を叩いてって言ったら、トレーナーがやってくれたの。監督にOKと言われるよりはるかに嬉しかったね。猿が出てきたら、そのことを思ってください(笑)」
永島氏は信玄と弟・武田逍遙軒の二役。かつて大河ドラマ『風林火山』(2007)にて、信玄と争う村上義清を演じたこともある。
永島「信玄の地元や村上義清の地元を訪ねると、この風土・土地があったからこの人がいたんだと。ぼく農業もやってるんで、この武将が出てくるにはこの土地だ。こういう土地だから一家を築けるって、そういうのが役を演じる上で大事かな。
信玄役ではちょっとしか出ないんですけど、信玄は新庄(新庄剛志)さんみたいなビッグボスですね。チームをまとめなくちゃいけない。腹を据えて大きなものを背負っているんですが、逍遙軒は弟で責任がない。気楽な感じで演じております」
勝頼役の荒井氏は、金子監督から『影武者』(1980)の勝頼(萩原健一)を超えたと評価された。
荒井「舞台挨拶に出るのが久々なもので、こんなに汗かくんだなと(笑)。
そう言ってもらえたのはありがたく受け取りますが、全然足もとにも及ばないので、これから精進していきたいなと思います。そう言っていただけたと見出しにしてもらって、荒井の名も広めてください(笑)」
金子「刀の扱いとか所作がいいなと思うし、最強の勝頼だと思いましたね」
荒井「ハードルは上げないでもらって…」
荒井氏は撮影時に、もっと華々しく散りたいと言ったという。
荒井「撮影は2年くらい前でいまいち覚えていないんですが、テンション上がってたんでしょうね。甲冑とかも着させていただいたので刀も持って、単純に男の性(さが)で散りたいと。でも監督に言われて落ち着くことができました(笑)」
信虎の娘・お弌役の左伴彩佳氏は映画初出演。
左伴「金子監督の作品に呼ばれたことが嬉しくて、壇上の俳優さんと共演できると思うと、あっ自分て芸能人なんだって(笑)。AKB48を8年くらいやってるんですけど、そこで実感させられました。
武田家の二十四将の中のひとりの武士が、私の母方の親戚だったと判って。土屋(土屋昌続)さんというんですけど、出てくると思うんで見てみてください。何かの縁だなと思って、この映画に出られることが嬉しかったです」(つづく)
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