2021年10月に逝去した飯島敏宏監督はバルタン星人の生みの親としても知られる。テレビ『ウルトラマン』(1966)でバルタン星人を初登場させた飯島は、歳月を経て映画『ウルトラマンコスモス』(2001)やテレビ『ウルトラマンマックス』(2005)でもバルタンを描いている。
その飯島の2016年のインタビュー記事を以下に引用したい。同年8月に町田市にてグローイングアップ映画祭が行われて『ウルトラマン』『ウルトラマンマックス』が上映され、飯島のトークショーがあり、そのパンフレットに掲載されたものである。
――バルタン星人が初登場したのはいつですか?
僕がウルトラマンシリーズで初めて監督・脚本を担当した『ウルトラマン』(1966年)の第2話「侵略者を撃て」です。今から50年も前になるんですね。
――どのようにあのスタイルが出来上がったのですか?
実は、『ウルトラQ』に出てきたセミ人間を作り直したんです。セミとアメリカザリガニを混ぜたみたいな感じで…ダサイ形にならずに済んだのはデザイナー・成田亨さんのおかげです。成田さんのデザインは素晴らしい!
――バルタン星人の技と言えば巨大なハサミから出る光線ですね。
最初はハサミの中に武器を隠し持っていて、いろいろな武器が出てくる予定でした。あのころは今のようにCGがなかったから、光線だけになっちゃった。今なら簡単なのにねぇ。だから『ウルトラマンマックス』では、CGが使えるのが嬉しかったね。僕はCGは素人だから、動きをちょっと変えてと簡単に言っちゃったりして。でもちゃんとイメージ通りに仕上がってくるからすごい!
――ウルトラマン最大のライバルとして様々なバルタン星人が登場していますが、飯島監督にとってのバルタン星人とは?
僕はバルタン星人を、未来の地球人の反面教師として誕生させたんです。現代より科学や経済が進んだ人類の未来をバルタン星人に投影しました。バルタン星人の中には悪役になっているのもあるけれど、それは僕の知らないバルタン星人です。『ウルトラマンマックス』(第33・34話「ようこそ、地球へ!」)のバルタン星人は、バルタン星人の集大成だと僕は思っています。ぜひ、大人にも見てほしい。ウルトラマンはもう作らないけれど、バルタン星人だけは作り続けたいですね。
――最後にウルトラマンへの思いをお聞かせください。
「ウルトラマンは光の国からやってきた平和の使者であって、戦士であってはならない」というのがずっと変わらぬ僕の持論です。最近はセリフが難しいのがちょっと気になるときがありますね。僕は大衆作家ですから、基本的に子どもたちにわかりやすく、やさしくします。僕が描きたいのは…戦うことがメインではなく、子どもたちにはぜったいに希望をもたせたい。文明の行き着くところは大変な世界かもしれないけれど、決して捨てたもんじゃない!という未来を見せたいんです。
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