私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

岡本富士太 × 小倉一郎 × 仲雅美 トークショー レポート・『Gメン'75』『ピンクレディーの活動大写真』『誘拐報道』(2)

f:id:namerukarada:20210614013701j:plain

【『Gメン'75』(2)】

岡本「あるとき(『Gメン'75』〈1975〜1977〉に)田中邦衛さんが来たんですよ。「きょう、何時ごろ終わる?」って、もう帰ること考えてる(一同笑)。丹波丹波哲郎)さんが台詞覚えてないなんて知らないわけです。「恥ずかしいんだけど、恋してるんだよ」「役者は一生恋だよ」とか言う、あの顔で(一同笑)。

 田中さんのあれ(口調)は、普段もサービスでやらなきゃと思ってるところもあるんでしょうね。でも基本的にああです。あの方、実は仲人なんですけど(一同笑)。

 丹波さんはまだ50になったくらいで、夏木陽介さんは30代かな。藤木悠さんは40代。昔の人は大人だったんだろうな。戦争を生き抜いて来ると、ああいう顔になるというか。おれは26か27くらい」

小倉蟹江敬三が『Gメン』に出て、その撮影中にぼくは病気になったの。自宅療養してたら、蟹江が駅前で売ってたってカニを持って来てくれて、手紙も。あの人たちは俳優として許せないと(一同笑)。こういうことやりたいんですけどって言っても、丹波さんや藤木さんに余計なことしなくていいって却下されるし、台詞も覚えてないって怒りの手紙で」

岡本丹波さんは筋も知らないし。ふたりに「そうだなお前」って言うシーンでも、どっちなのか判らない。どっちだ?って顔するんですよ。ホンを読んでないってすごい。

 山城新伍さんがゲストに来たら、丹波さんは「お前、何でここにいるんだよ」。山城さんは「連れてこられたんだよ。お前、ホン読んでないだろう?」。丹波さんは「読んでたら訊かねえよ」(一同笑)」 

【映画の想い出】

 映画『ピンクレディーの活動大写真』(1978)はオムニバス形式のファンタジー的な作品。

 

岡本「『ピンクレディーの活動大写真』は西部劇で、小学校低学年向けくらいの映画。鶴田浩二さんの『大空港』(1978〜1980)ってテレビのころに撮りました。田中邦衛さんに誘われて出たんですね。東宝作品だけど三船プロ制作です。

 夜中の2時から撮影が始まるんです。ピンクレディーさんが忙しいときで、営業行ったりした後で撮る。撮影中で倒れちゃって、びっくりして駆け寄るとウィンク。寝てないから、倒れたふりすると寝られる。現場は止まっちゃう。他愛ない映画ですけど、ピンクレディーはあの時代をつくって駆け抜けた人たちですね」 

 岡本・小倉両氏が共演された『誘拐報道』(1982)は伝説的なセミ・ドキュメンタリードラマ。

 

岡本「『誘拐報道』は、ほんとにあった話ですね。ショーケン萩原健一)は誘拐犯役で、撮ってるときからものすごく気合いが入ってて、主演男優賞取るだろうと思ってたんだけど…。 

 また丹波さんが出てる(一同笑)。いると締まるよね」

「富士太さんは(今回取り上げるには)ちょっと暗いって言われたんだけど、一郎がイチ押しの作品なんで」

小倉「原作は読売新聞社会部ですね」

岡本「そう、黒田(黒田清)軍団。ぼくは子どもを誘拐されるお父さん。職業は出てこないけど医者なんですね。だから金持ってるはずだと。

 みんな気合い入ってて、ショーケン小柳ルミ子さんと秋吉久美子とぼくはノーメイクで、できる限り痩せようと。3日徹夜してるって設定です。それが、秋吉さんが無視して綺麗にメークしてごはんも食べてきて、ショーケンは怒っちゃって(笑)。ショーケンの誘拐犯に電話するシーンで(画面には映っていないが)現場に来て電話の相手をしてたんだね。女優さんだから仕様がないんだけど、約束破っちゃダメだね。小柳さんはノーメイクでしたね」

小倉ショーケンが怒るのも当たり前だな」

 

 極限状況でご飯をかき込むシーンがある。

 

岡本「普通は食べられない。台本では食わないって言うんだけど、がーっと食うことに。(伊藤俊也)監督もそのほうが面白いと」

「画面も引きから寄りましたね」

岡本「もったいないからということで寄り出した」

小倉「味わうんじゃなくて、ただ胃の中に入れていく。こういう芝居も演出も見たことなかった。名シーンですね」

岡本「小倉くんが誉めてくれるのは、このワンカットだけ(笑)」

小倉「食うのがうまい俳優は、岡本富士太とジョン・ギャバン(一同笑)。あと小林桂樹かな」 

【その他の発言】

小倉加山雄三さんも台本読んでない。どんな筋?っておれに訊くんだから」

岡本「無我(竹脇無我)さんもそうだよね。帰りたくてしょうがない。大河ドラマの『峠の群像』(1982)のとき、時代劇なのにイヤホンつけて競馬を聞いてました(笑)。台詞はある程度入ってるんだけど「何でおれ、こういうこと言ってるか知ってる?」。四十七士が討ち入ったから決断するんですよって言ったら「何でそんなことやったんだ?」。何でって討ち入りですよ!」

 

 岡本氏は大病されていたという。

 

「富士太さんは急激に容貌が変わったようで、不思議な方だなと。病気をされてなさって間が空いたら、いい感じに老けたというか」

岡本「(笑)」

 

 岡本・小倉両氏は、映画『明日へ 戦争は罪悪である』(2017)にて久々に共演された。

 

「久しぶりの出会いが『明日へ』ですね。一郎にオファーが来て、小豆島に行って。(劇中に)植木等さんのお父さんの住職が出てくるんだけど。(演じるのは)上條恒彦さん」

岡本「(藤嘉行)監督が紳士で、とってもいい人でした。役者は化けることができていいですね。(戦時中など)いつの時代にも生きることができて、やっててよかったと思う瞬間です」

クゥタビレモーケ

クゥタビレモーケ

Amazon