私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

小林夕岐子 トークショー レポート・『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣』『幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形』(2)

f:id:namerukarada:20160521085220j:plain

f:id:namerukarada:20160521085233j:plain

【怪獣映画の想い出(2)】

 小林夕岐子氏がヒロイン役に抜擢された『怪獣総進撃』(1968)は、1954年以来つづいた東宝怪獣映画のひと区切りとして企画された。

 

小林「(ひと区切りだったと)最近伺いました。セットでも時間待ちでも、あまりみなさん話さず、それぞれで考えられていて。(助言は)何もなかったですね。

 (『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣』〈1970〉の)ロケは八丈島で、泊まりでした。けっこう長くて、久保(久保明)さん、高橋(高橋厚子)さん、土屋嘉男さん、佐原(佐原健二)さんとホテルでなく民宿に。2月ですから寒くて、雪が降ってました。雪が降り出しても「火山灰でしょ」って(一同笑)。最後のシーンでもはらはら降ってますね。みなさんは服着てますけど、私はお腹も腕も出ていてそれは寒い(一同笑)。

 (八丈島は)17、8時間くらいかけて船で行きました。どんより寒いって日が多かったですね。晴れてる日はあんまりなくて、毎日「きょうも雨かしら」って。みなさん靴下ですけど、私は素足にうすいの1枚。それも寒かったですね。

 怪獣が出てくるシーンで、みんなまちまちの方向を見て驚いてたから、助監督さんが「ここ、ここ」って指示して。

 私は高橋さんと同じ部屋だったと思います。食事もみんなでいっしょに大きい部屋でしました。食後は土屋さんがギターを弾いて、愉しかったですね。

 高橋さんは同期でした。養成所ではたしかご挨拶ぐらいです」

 

 島娘役の小林氏はドーランを塗られている。

 

小林「(ドーランについて)朝、メイクさんがいらして、ドーランを水で塗って。すごくつめたかったです。ドーランがまだらになってるときもありましたね。寒い空気の中だと綺麗にならないんです。部分部分、濃かったり(笑)。メイクさんが来て、メイクして、お食事して、すぐ(現場へ)早い時間から行ってました。

 結婚式のシーンは、東京のセットですね。ロケから帰った後だったと思います。

 いちばん覚えてるのは、リコ(斉藤宜丈)を見つけて喋るシーン。あと、みんなで崖の上に立つシーンです、寒くて」  

 【『幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形』】

 先述の通り、『幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形』(1970)のヒロイン役は小林氏の代表作。『ウルトラセブン』(1967)のアンドロイド役に匹敵する強烈なインパクトで、夜中に見ていると金色の眼の小林氏にはぞくりとする。

 

小林「『日本一のヤクザ男』(1970)が終わった後、台本をいただいて、それが『血を吸う人形』。突如って感じでしたね。私はこういうの大好きで、ホラーとかアンドロイドとか現実的でないほうが好き。普通の家族のホームドラマみたいなのには呼ばれないですね。

 カラスが死んでるシーンがあって、怖かったですね。小田急の柿生だったかしら。夕方の撮影で、昼間じゃなかった気がします。

 金のコンタクトで、あれは分厚くて大きくて、入れると痛かったです。コンタクトしてたから入れられたけど、当時の普通の人は入れられないですよね。カメラの前にたたっと行くシーンがありましたけど、怖かったですね。(コンタクトのせいで)何も見えなくて。ラストもつけてた気がします。

 クローゼットを開けると私が立っていて、それで(劇場では)みなさんキャーって怖がってくださって、嬉しかったですね」 

 【テレビドラマについて】

小林「(テレビでは)速さに驚きました。5冊、1週間分の台本をいただいて、すごく速く撮ってて。違うシーンのアップをまとめて速く撮ったり。

 テレビドラマでは、国際放映と新東京映画へ行きました。『五番町夕霧楼』(1974)は国際放映です。すごくハードで、忙しいのが愉しくなっちゃう。1週間が終わるとスタッフルームで打ち上げするとか、家族みたいで。昼メロはすごく愉しかったですね。菅英久さんっていうプロデューサーの方で、私の父もお世話になりました。菅組という感じで。映画だとカメラマンさんや照明さんとはお話しないんですが、昼メロはこぢんまりして。カードゲームをしたり(笑)」

 

【その他の発言】

 小林氏はあれだけの美貌の持ち主なのに、いい意味で濃さがないというか、作品ごとに印象がまるで異なるのがすごい(客席から同様の質問もあった)。

 

小林「お化粧は自分でやっていました。お化粧は(作品ごとに)変えてないんですよ。でも作品によって “気” が違いますね。『総進撃』では(宇宙人に)操られてるときは眉を上げました。私はあんまり好きじゃなくて、いまでもしたくなかったなって(笑)。いろんなこと思いますね、いまになって。あれはこうしたほうがいいとか(笑)。 

 『総進撃』のころは(東宝撮影所は)まだにぎやかでしたけど(その後)淋しくなって、大きなセットも渡辺プロさんに貸し出されたり。もっとにぎやかなときに入りたかったです(笑)。昔の写真を見ると時代劇の方がセットの中から出てきたり、私たちのときはそういう感じではなかったですね。

 『リング』(1998)は、お友だちに見てって言われたんですけど(怖くて)見てないんです。あの首が回る『エクソシスト』(1973)も怖い。びっくり系は苦手ですね。霊的なのは好きなんです。どこかでこういうこともあるんじゃないかなって」  

怪獣総進撃