あけましておめでとうございます。誰も来ないような過疎ったブログにも、新しい年は訪れる…。
2015年元旦には東京新聞、朝日新聞の2紙に脚本家の山田太一先生が登場した。前者では作家の赤坂真理氏との対談で “戦後70年の幸福論” と題されている。後者では山田先生が今年度の朝日賞を受賞されるので、受賞者の横顔というような小さなインタビュー記事。まず東京新聞から、印象的な部分を拾ってみたい。
(『男たちの旅路』シリーズ〈1976〜1982〉の特攻隊崩れの鶴田浩二について)「ああいうキャラクターは本当に戦争を体験した人が演じてないと、やっぱり力がないですよね。戦争を知らない俳優さんたちが特攻隊を演(や)ってもどうもダメだなって思ってしまう(笑)。それは俳優さんのせいじゃないと思うけど。そういうもんってありますね、ある時期には」
「だから六〇年安保も終わってみると何だったんだ、っていうかな、とてもすごい騒ぎだったんですよ。「国会前に行こう!」って言われて、行かないやつはダメな奴みたいな空気がありましたよ。そしてかなりの人や組織が「安保反対!」って集まったんですね。でも実際には安保条約がどういうもので、どう改正されたのかってことはほとんどの人は知らなかった(笑)」
「戦後の大きな出来事っていくつもどっか行っちゃいましたね」
朴訥なイメージの山田太一作品だが、見え隠れするのがこんな醒めた視座である。
「日本は天災とか、不公平に誰かが死んでしまうとか絶えず起こってるような気がします。『岸辺のアルバム』は最後は全部なくなっちゃうけど、家族だけは死ななかった。お父さんが妙に明るく、「出直せということだ」っていう。全部流されたことの明るさを書くのは不謹慎だけど、きっとそういう気持ちで立ち直ろうとした人もいたと思う」
「いま、何より「経済だ」って言うじゃないですか(…)それに抵抗することができない。結局のところ、給料減ったり、貧困が襲ってくると怖いから。それは否定はできないけど、その物語以外にも、他の物語があると思う。例えば、「福島の体験があったから、原発は全部やめよう。それで経済的につらい時代が来るかもしれないが、それに耐えてみんなでヒーローになろう」みたいな物語だって、案外多くの日本人が共感するんじゃないか」
赤坂真理氏と言えば映画にもなった『ヴァイブレータ』(講談社文庫)のイメージだったが、対談を読んでさっそく『東京プリズン』(河出文庫)を買いに走った(笑)。
つづいて朝日新聞では、「朝日賞のみなさん」という触れ込みで他の受賞者3人と登場。
「ある時から日本人は苦労を毛嫌いするようになりました。けれど苦労を朗々と歌う演歌によっても、慰めを得ることができる。かなしむことで救われることもあるでしょう。人間はマイナスからも、感情を随分育てることができるのです」
特に最近の山田先生がよく言われる、プラスのカードでなくマイナスが大事、というお話。正直言って朝日は問題つづきで印象が悪いけれども、受賞おめでとうございます。