◎『ナイト・エンジェル』(1986 スロヴァキア)
視力を失って闇のなかにいる青年は、介護してくれる女性をまるで天使のように想っていたのだが…。幻想的でちょっとせつない、異色の人形アニメ。
◎『動くな、死ね、甦れ!』(1989 ソ連)
貧しい炭坑で何とか生きのびようとする少年の壮絶なドラマ。ロシア版『小さな恋のメロディ』とも称されるこの傑作は『小さな~』に比べて酷薄で哀しい。
◎『バットマン・リターンズ』(1992 アメリカ)
フェティッシュさが強烈なシリーズ第2作。メジャーな映画とは思えないほど、黒々とした怨念が印象的。
“トゥルーロマンス” を自認するカップル(クリスチャン・スレーター、パトリシア・アークエット)が、あちこちで殺人と悲劇を巻き起こしてしまう。皮肉に満ちた恋愛ドラマ。
◎『活きる』(1994 中国)
ひと組の家族が大躍進政策や文革の荒波にさらされながらも生きつづける。見終えた直後よりも、時間が経ってからじわりとくる作品。
時間と記憶をテーマとするSF作品。原作となったフランス映画を見た人は、そちらのほうがずっと面白いと言うが…。
◎『ユージュアル・サスペクツ』(1995 アメリカ)
ミステリアスな連続殺人。生き残った男が語る、驚愕の真相とは…。毀誉褒貶の激しい映画だが、力作であることは間違いないので選出。
◎『ポネット』(1996 フランス)
母親の死を受け入れられない4歳の女の子。ラストの展開は賛否が分かれるところかもしれない(個人的には支持派)。
◎『L.A.コンフィデンシャル』(1997 アメリカ)
猟奇殺人を追う刑事たち。暗躍と葛藤をスリリングに描いて138分を全く飽きさせない傑作。ラッセル・クロウが暴れるシーンはすごい。
◎『スウィート・ヒアアフター』(1997 カナダ)
スクールバスの事故をきっかけに、村の陰惨な人間模様が明らかに。諦念の滲むラストが不思議とさわやか。
◎『リトル・ヴォイス』(1998 イギリス)
無口でひきこもりのヒロイン(ジェーン・ホロックス)は、実は天才的なシンガーだった。実力派役者たちの演技合戦を堪能できる。
バッタの弾圧に苦しむアリたちが、サーカスの虫を雇ってバッタに挑戦する。『七人の侍』の虫バージョンである傑作CGアニメ。
◎『ギャラクシー・クエスト』(1999 アメリカ)
売れない俳優たちが、異星人に戦士と勘違いされて宇宙戦争に呼ばれてしまう。虚構の現実への逆襲を描いた驚きのオタク映画。
◎『ミスティック・リバー』(2004 アメリカ)
幼いころのいまわしい記憶を共有する、三人の男たち(ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケビン・ベーコン)。そして、悲劇が静かに幕を開ける。大力作だが、とにかくダーク。
◎『グエムル 漢江の怪物』(2006 韓国)
ソウルの河から怪獣出現。平凡な一家族と怪獣との死闘という、いままでありそうでなかった構図が斬新。
日本映画を選んでいると、何か行きどまりのような閉塞感を覚えるけれども、外国映画には肥沃な大地が広がっているような錯覚が生じてしまう。単に無知で見ていない映画が結構あるということもあるが、それだけでもなく、まだ未知の驚くべき世界はきっとあるという無根拠なあこがれを誘う空気が、外国映画からは立ちのぼってくる…とでも言おうか。 次回はワースト編です。