私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

批評・感想

砂嵐へようこそ!・『ポルターガイスト』『魔法少女ちゅうかないぱねま!』(2)

『ポルターガイスト』(1982)におけるテレビは災厄をもたらす疫病神であり、ラストでは棄てられる。だがその一方でテレビの世界と交信し合う次女(ヘザー・オルーク)の恍惚とした表情などを見るに、作り手がテレビを憎んでいるわけではなく不可思議な世界…

砂嵐へようこそ!・『ポルターガイスト』『魔法少女ちゅうかないぱねま!』(1)

若い人はもうご存じないかもしれないけれども、地上波のテレビがアナログ放送だった時代には、無数の白と黒の点がしゃーという音とともに現れるノイズ画面の流れることが頻繁にあった。いわゆる “砂嵐” である。無機質な画面と単調な音とは何となく無気味な…

三谷幸喜の “作家性” について・『国民の映画』

昨2013年には原作・脚本・監督を務めた映画『清須会議』が大ヒット、今年は作・演出を手がける舞台(再演含む)が目白押し、2016年には大河ドラマの脚本を担当することが発表されるなど三谷幸喜の人気ぶりは近年も相変わらずである。これほどの知名度を持つ…

女性万歳・磯村一路

1998年、ボートにかける女子高生たちを描いた、磯村一路監督の青春映画『がんばっていきまっしょい』が静かに登場した。愛媛のボート部を描いた傑作映画は、映画賞を総なめ。主演の田中麗奈を一躍スターダムにのしあげた。筆者にとってはオールタイムベスト…

円谷英二と真珠湾・『ハワイ・マレー沖海戦』『ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐』

69回目の終戦の日に『ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐』(1960)を久々に見直してみた。この作品は、東宝の “815シリーズ” という太平洋戦争を主題にした連作のひとつで、特撮は円谷英二特技監督が手がけており、改めてその素晴らしさに感嘆した。

木皿泉 初心者のための主要作品レビュー テレビ編 (2)

3.『セクシーボイスアンドロボ』(2007) ロボットアニメが大好きなオタク青年(松山ケンイチ)と、七色の声を操る女子中学生(大後寿々花)。コンビを組んだふたりは、骨董屋店主(浅丘ルリ子)の指令で、不思議な事件に挑戦する。

木皿泉 初心者のための主要作品レビュー テレビ編 (1)

一話完結のテレビ『おやじの背中』(2014)は、巨匠シナリオライターたちがリレー方式で登板するという試みである。今後登場するのは、山田太一、池端俊策、三谷幸喜、井上由美子、木皿泉などの面々であるが、その多彩なライター陣の中で一、二を争うくらい…

東君平の連作詩・『へびとりのうた』『心のボタン』

詩人・童話作家・イラストレーターの故・東君平が遺した詩。

モノクロームの青春・東君平『二十一歳 白と黒のうた』『はちみつレモン 君平青春譜』

イラスト・グラフィックデザイン・詩・絵本・童話など多彩な作品を遺して、1986年に46歳で急逝した東君平。

向田邦子終戦特別企画(演出:久世光彦)全作品レビュー (2)

3.『蛍の宿』(1997)脚本:山元清多 蛍の宿 [DVD] 岸恵子 Amazon 海辺の町・風の浦で遊郭を営む母(岸惠子)とその娘(清水美砂、田畑智子 )。あるとき、航空隊の士官(椎名桔平、山本太郎ら)が店に現れた。特攻隊として死を目前にする男たちと女たちの束…

向田邦子終戦特別企画(演出:久世光彦)全作品レビュー (1)

故・向田邦子の遺した小説・エッセイをもとに、1985年から2001年まで継続した “向田邦子新春シリーズ” 。そちらと並行して、同じTBSのスペシャルドラマ枠で1995年の夏に “向田邦子終戦特別企画” がスタート。新春シリーズと同じく向田作品からヒントを得て創…

ハロー宇宙人・『実相寺昭雄の不思議館/受胎告知』(2)

実相寺昭雄監督「受胎告知」はさほど知られていないが、『ウルトラセブン』(1967)や『シルバー仮面』(1971)の系譜に連なる宇宙人シリーズ。

ハロー宇宙人・『ウルトラセブン』『シルバー仮面』(1)

“ドラマ 吉祥寺店” のおもひで

先日、吉祥寺へ行った際にふと思い出したのが、レンタル店「ドラマ 吉祥寺店」の閉店だった。昨2013年10月いっぱいで閉店してしまったそうで「ドラマカフェ」という喫茶店になっており、やはり同じレンタルビデオチェーンが経営しているらしい(閉店の前後に…

悪い奴ほど手が白い・土曜ワイド劇場『白い手 美しい手 呪いの手』

名画座の “シネマヴェーラ渋谷” にて行われている岸田森特集の中で、かなりレアなのがテレビ『白い手 美しい手 呪いの手』(1979)である。

この娘は人殺し・火曜サスペンス劇場『可愛い悪魔』

この4月から5月にかけて “シネマヴェーラ渋谷” にて岸田森特集が行われており、映画とテレビドラマの計18本が上映されている。故・岸田森は、岡本喜八、実相寺昭雄、藤田敏八、山本迪夫など名監督の諸映画に加えて、テレビ『帰ってきたウルトラマン』(1971…

夕陽と男・『天使のはらわた 赤い教室』

俳優の蟹江敬三が逝去した。昨年に『あまちゃん』(2013)の祖父役で健在を示していたので、急死という感がある。

少女屹立・今江祥智 宇野亜喜良『あのこ』

先月、愛知県の刈谷市美術館にて開催中の “宇野亜喜良展 本にみる少女譚” を見る機会があった。イラストレーター・宇野亜喜良の初期作品から昨年の仕事まで、点数は多くないがその精力的な創作が展示されている。

上の空・『まど みちお全詩集』

詩人のまど・みちおが逝去した。「ぞうさん」や「やぎさんゆうびん」、「ふしぎなポケット」、「一年生になったら」といった童謡はほとんどの日本人が知っているだろうし、教科書で「あさがくると」「イナゴ」などに触れた人も多いだろう。4年前に放送された…

向田邦子新春シリーズ(演出:久世光彦)全作品レビュー (5)

【『響子』~『風立ちぬ』(2)】

向田邦子新春シリーズ(演出:久世光彦)全作品レビュー (4)

【『華燭』~『風を聴く日』(2)】 13.『風を聴く日』(1995)脚本:金子成人

向田邦子新春シリーズ(演出:久世光彦)全作品レビュー (3)

【『わが母の教えたまいし』~『女正月』 (2)】 8.『隣の神様』(1990)脚本:金子成人 隣の神様 [DVD] 田中裕子 Amazon 謎の人さらい・赤マントの噂が東京を賑わしていた。自宅前をいつも通る青年(中村橋之助)に恋する病弱な妹(国生さゆり)のために、出…

向田邦子新春シリーズ(演出:久世光彦)全作品レビュー (2)

【『女の人差し指』~『男どき女どき』】 『女の人差し指』にて田中裕子が初参戦。以後、全作品の主演を務めた。小林薫も加わり、ナレーションも含めれば皆勤の加藤治子と合わせて田中 × 加藤 × 小林の黄金トリオが誕生する(『麗子の足』には、小林は不参加…

向田邦子新春シリーズ(演出:久世光彦)全作品レビュー (1)

脚本家として『阿修羅のごとく』(1979)、『あ・うん』(1980)といった綺羅星のような名作を発表し、数々の優れたエッセイ・小説でも知られた向田邦子が事故で急逝したのは、1981年のことである。

ひこうき雲のそのあとに・『母娘監禁 牝』(2)

母(吉川遊土)が主人公(前川麻子)を迎えに来るが、母は娘の前で男たちに輪姦されてしまう。母親が声を上げ始めると、主人公は冷蔵庫の中へ逃げ込んで涙を流す。ようやく母とともに解放された主人公は雨の中を走り出す。

ひこうき雲のそのあとに・『母娘監禁 牝』(1)

昨2013年に大ヒットしたアニメーション映画『風立ちぬ』に主題歌として使われたことで、荒井由実「ひこうき雲」がまた注目を集めた。この主題歌起用は宮崎駿監督ではなく、鈴木敏夫プロデューサーの発案によるものだった(「H」2013年7月号)。鈴木氏は主題…

ドラえもんと久世光彦・「浪曲ドラえもん」

テレビ『寺内貫太郎一家』(1974)などの演出を手がけ、エッセイ・小説などの文筆活動でも知られた故・久世光彦。久世がテレビや舞台などの演出業と執筆とを両輪とするようになったのは1990年前後のようで、物書きをしているとやや飽き気味だったテレビの仕…

岡田有希子とかしぶち哲郎

昨年12月、ムーンライダーズのボーカル・ドラマーとして知られる、かしぶち哲郎氏が世を去った。

繰りかえすということ・『杉山平一詩集』『くんぺい魔法ばなし』

脚本家の山田太一先生は詩をシナリオやエッセイ、講演で時おり引用される。山田先生が引き合いに出される詩人のうち、中原中也や立原道造などは知っていてもこちらが無知で教えられた詩人もいる。

霧も雨も・谷川俊太郎『いつだって今だもん』

詩人・谷川俊太郎には、シナリオ作家としての顔がある。詩作をはじめ絵本、エッセイといった文筆の仕事は有名でも、映画や舞台にシナリオを提供してきたのはあまり知られていないかもしれない。そういった仕事の片鱗に触れることができるのが『いつだって今…