私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

切通理作 インタビュー “恥じらい、切なさ、情けなさ…今だから言える話”(2011)(2)

――エロが純粋なオナニーツールというより、一つの娯楽として受容されていたんですね。

 

切通 今でこそ、割と遅い時間でも外を子供連れて歩いてる大人っていますけど、僕が子供の頃は「夜9時過ぎたら大人の時間」という感覚がハッキリあって、そこに子供が立ち入ることはできなかった。今みたいに、アニメを深夜にやってるなんて考えられなかったわけです。大人の世界には女性のヌードも出てくるけど、とはいえ裸だけがただ写されてるっていうことでもない。裸やセックスばっかりっていうのは当時の表現規制からいっても難しかったし、一つの大人文化としてエロの存在があったんじゃないですかね。

――規制をうまくかわしていくためにも文化として成熟していく必要があったということでしょうか。

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切通理作 インタビュー “恥じらい、切なさ、情けなさ…今だから言える話”(2011)(1)

 『怪獣使いと少年』(宝島社文庫)や『ウルトラマン ニュージェネの証』(ホビージャパン)、『山田洋次の〈世界〉』(ちくま新書)、『失恋論』(角川学芸出版)などの批評・インタビューや監督映画『青春夜話 Amazing Place』(2017)などで知られる切通理作。その切通氏が性について語ったインタビューが以前に “コイトゥス再考” というサイトに載っていたので以下に引用したい。

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山田太一『終りに見た街』が帰ってきた

 都心に通う生活者が暮らすようなベッドタウンに住む一家族。ある日、彼らは戦時下に家ごとタイムスリップした。主人公が幼いころに親しかった友人とその息子も何故かいっしょで、便利な生活に慣れきった彼らは戦時中に叩き込まれる。せっかく未来を知っているわけだから、ただ生き抜くだけでなく1945年3月10日の東京大空襲を市民に知らせようとするが、思いがけない運命が待ち受けていた。

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三谷幸喜と深津絵里・『ステキな金縛り』『ベッジ・パードン』(2)

 海外公演などの経験はあっても「旅がそんなに好きではない」三谷幸喜にとって単独渡航は挑戦であっただろう。それにしても「気分転換」をしたい折りは過去にもあっただろうに、ロンドン行きが何故この2010年というタイミングだったのか。本人の言う通り取材とか、50歳を迎える節目にチャレンジしようと思ったとか可能性は考えられるが、もうひとつあり得べきことがある。

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三谷幸喜と深津絵里・『ザ・マジックアワー』『ステキな金縛り』(1)

 新作映画『スオミの話をしよう』(2024)の脚本・監督を務める三谷幸喜は「普段は、あの役者にあの役をやらせたら面白いぞ、みたいなところからストーリーを考える」(『三谷幸喜のありふれた生活3 大河な日日』〈朝日新聞出版〉)とジョークまじりで語ったことがあったが、事実『スオミの』は主演の長澤まさみありきで生まれたという。そのように俳優を軸に創作することの多い三谷が、深津絵里を追っていた時期があった。

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