私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

高寺成紀 インタビュー “2000年のヒーローに”(2000)・『仮面ライダークウガ』(4)

——ヘリコプターのシーンとか、合成の仕上がりはともかく、やりたいことはよくわかる。しかも、しつこかったじゃないですか。普通は蹴落としたら終わるんだけど、蜘蛛の怪人だから、くるくると戻ってくる。

 

高寺 あのシーンの合成については、技術協力の方たちが残念がっていました。ハイヴィジョンの特性としては奥までピントが合ってないとおかしいんです。だけど、これまでのフィルム撮影の癖で、つい背景をぼかしてしまったんですね。第1話で、まだスタッフの間でのやりとりがうまく機能していなかったんです。

 

——アクションなんですが、敵怪人はともかく、クウガについては、ワイヤーとかトランポリンを使わないで、極力リアルに抑えていますよね。

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高寺成紀 インタビュー “2000年のヒーローに”(2000)・『仮面ライダークウガ』(3)

——一方で、子ども向け番組では避けられがちな、殺人や流血描写もきちんと出てきます。

 

高寺 確かに意識してやっています。人は本来、仲良く争わずにいたほうがいいのに、そうできないことがある。実際に拳を振るわなくとも、それは暴力になっていたりします。人を傷つけようとする心を人は生まれつき持っていて、それに対して人はどう接していったらよいのか、を描こうと思っています。

 入社して14年間キャラクター・ヒーロー番組の周辺にいて、自分でしっくりこなかった部分もあったんですよ。戦って強くなったらそれでいいんだろうか、と。それは喧嘩して強くなったということなんですが、それで人間的に成長したと言っていいのか、と。敵が強くなると、こっちもパワーアップしますよね。大げさに言えば軍拡競争なんですよ。これで取り戻した平和というのは、悪がいなくなったということではあるんですが、それでいいんだろうか、と。ほんとうなら、それによって人として背負っていくものはあるはずで、そういう意味では成長なんですが、描き方として「バンザーイ!」や「やったー!!」じゃないはずだって。BGMにファンファーレはかからないはずなんです。

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高寺成紀 インタビュー “2000年のヒーローに”(2000)・『仮面ライダークウガ』(2)

——今回は、一条薫という刑事をもう一方の主人公に据えることで、物語の半分が警察ドラマになっているわけですが、これはなぜですか。おかげでぐっとリアリティが増しているわけですが。

 

高寺 ひとつは、『仮面ライダー』の本郷猛と滝和也の見事なコンビネーションというのがあったわけですが、あのなんともいえないかっこよさがやりたかったんです。新しい仮面ライダーで何をやりたいかと考えたとき、あれがなぜか僕の中にあったんですね。友情ものをやりたいと。それがあって一条が出てきたんです。

 おかげでリアリティも出てきたわけなんですが、例えば、「戦隊シリーズ」の場合は、すばらしい嘘として、巨万の富を抱えた組織があって、〇〇博士が「こんなときのために」と言って一人でなんでも用意してくれる。あれはあれで“けれんみ”があって気持もいいんですが、リアルな人間社会としてはやはり嘘になってしまう。そこで、一条だけでなく、桜子(考古学研究)、榎田(科学警察研究所)、椿(監察医)といった各分野のエキスパートが五代をバックアップする体制を作ることで、いわゆる“〇〇博士”を分業させて描いているんです。

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高寺成紀 インタビュー “2000年のヒーローに”(2000)・『仮面ライダークウガ』(1)

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 2000年からノンストップで継続する仮面ライダーシリーズ(それ以前は断続的だった)。その第1作となったのが『仮面ライダークウガ』(2000)。警察と連携する仮面ライダー像や凝った設定、斬新なデザインや造型などいまなお語り継がれる。

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