私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

長谷川和彦 トークショー レポート・『太陽を盗んだ男』(3)

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【『太陽を盗んだ男』について(2)】

長谷川「原爆をつくってる最中の主人公の事故的な被爆、これは自分のせいだよな、自分でやってるんだから。筋は通ってるんだけど、終わり方が難しかったな。その前に文太さんを派手に殺してるから、沢田(沢田研二)どうやって終わるかというのがあって。死んで終わるのもつまんねえなというのがあって。台本では歩く沢田に音楽が急速に高まって、ドラムの音が原爆の炸裂音のように聞こえるとあるんだが、ダビングでやってもダメなんだな。音楽で匂わすようにしても、でかいドラム、音楽としか聞こえない。炸裂させて終わりかよと思われるのも厭だというのがあって、あれはインナーサウンドなんだという思いなんだけど、テロップ出すわけにはいかんしな。見た人に伝わったかな。OKにしたのは、抜ける髪をふっと吹く、沢田の芝居が悪くなかったんだよ。そして彼は原爆とともに消えましたというわけじゃない、というふうに思ってくれよということなんだ。

 尭之(井上尭之)さん、亡くなったんだよな。いい音楽つけてくれたよな。当時はパソコンもないから、台本の1稿、2稿書いてるころから、電話で弾いて教えてくれるんだよ。こういう旋律でどうだ?みたいにさ。最初は断られたんだ。“おれいま空っぽで”って言われて。尭之さんのかつての音楽をどれ使ってもいいという許可くれって言ったら、そこまで言われたらってことで頑張ってみるよってことで、思いつくと夜中でもすぐ電話がかかってくるんだ。主旋律も菅原文太のテーマも弾いて、いいんじゃないのと。『青春の殺人者』(1976)も音楽でおれは助けられたと思うよ。

 沢田はまだ立話の段階で、何でもない若者がひとりで原爆つくるんだよ、お前やるかって言ったら、原爆っていいっすね、ダイナマイトじゃなくて」

山崎「仙台のホテルで沢田を口説いたよね。佐藤輝といっしょに」

長谷川「そのとき、山いたか。沢田らしい返事だったよ。ダイナマイトじゃ断るけど、原爆ってのがでかくていいじゃないすかって。3か月空けてくれ、生の歌番組なら週1回くらいいいけどって言ったら、マネージャーがやってきて、2年半スケジュール無理です、埋まってますって。それで1年2か月待って、インしたんだな。沢田は偉かった。大抵の役者ならびびりそうなのに、びびならいからな。おれなんかより男らしい。最近も男らしくいばってる(一同笑)。あれはあいつの地だからな。あのころも新幹線のホームでファンに頭突きしたりしてたからな。

 ストーンズを呼べっていうのは沢田に決めてからだったかな。実際困ったんだよ、第三のアイディアがなくて。助監督たちが街に出て、もしも原爆持ってて政府が言うこと聞くとしたら、何を要求しますかって訊いて、その声も使ったりしてる。結果、西田(西田敏行)が出るんでサラ金の役をつくったんだが、原爆をつくるための金が必要で金をとるかっていうことにしたんだよね。

 2がつくれる監督なら、こんなに長い間休んでないよな(笑)。最初の日劇での試写の日はね、3000人くらいの観客が総立ちで拍手で、山本プロデューサーと沢田と3人で飲んだんだが“2行こう!”ってプロデューサーが言うぐらいだったんだが、幕開けたらこけたな。かなりショックだったな。久しぶりに70年代映画ベストワンに選ばれたときは嬉しかったな。東宝の宣伝部のせいにする気はないが、封切った直後に電車の中で女子高生の会話を聞いてると“ねえねえ見た見た?今度の太陽がなんとかって映画” 。それじゃダメなんだな。『人間の条件』(1959)とか『野生の証明』(1978)とか、きっちりタイトル言われないと。東宝が原爆という言葉を一切使わないと、春先から宣言したんだな。秋の大作だから、新聞の全面広告出たけど沢田と文太が裸でひっくり返ってて、すごい奴らのすごい映画だみたいなコピーで何のことか判らない。宣伝部の若手が造反みたいなことして、原爆という言葉を使わずにこの映画をどう宣伝するんだと。最後の2~3週間かな、日本にも原爆をつくった男がいたってコピーにして「原爆」という文字がいちばんでかいんだよ。それじゃ「笑う原爆」にしろよって思うじゃないか。読者のベストワンには選ばれたんだけど、そういう監督にはなかなか仕事来ないんだな(笑)」

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【その他の発言】

長谷川「広島 × 沖縄ということで、考えてはいるんだ。沖縄は現在もいろんな問題を孕んでいるけど、戦果アギヤーという犯罪があったんだな。米軍基地で盗んで、困ってる人に配るという。直木賞取った小説がそれをベースに書いてるんだけど、受賞の半年くらい前にある人間に勧められて読んで、映画にならんかと検討はしたんだが、ロングストーリーなんだな。おれは時代劇をつくるほどうまくないし、時代劇の登場人物に感情移入できたのもあまりないな。『七人の侍』(1954)も面白く見たが、“勝ったのは百姓たちだ”っていう最後のひとことが気に入らなかったな。あの上から目線。おめえは士族の末裔だろう、おれは百姓だみたいなさ。黒澤明のことと時代劇を撮らないというのは違うけど、時代劇はリアルに近いものはつくれるだろうが意欲は湧かなくてな。

 歳とったんだな。若い俳優を、豊(水谷豊)や沢田をこいつおれだよなというように思ったりできたのが、なかなかないのかもしれない。主人公をいっそじじいにしてみるかと思っても、おれそんなにじじいじゃないし。歳はじじいだけど(笑)。柄本(柄本明)より老けてないだろうみたいに力んだりして、まともな人生送ってないから、老人の苦渋みたいなのがないのかな。

 もう1本映画撮ってから死にたいと思ってますんで、よろしくお願いします(拍手)」 

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