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荒井晴彦 × 吉田伊知郎(モルモット吉田)トークショー レポート・『笠原和夫傑作選』『昭和の劇 映画脚本家・笠原和夫』(1)

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 『仁義なき戦い』シリーズで知られる脚本家・笠原和夫の選集『笠原和夫傑作選』(国書刊行会)。

 その発売を記念して、今年1月に新宿で脚本家で「映画芸術」編集人の荒井晴彦と映画評論家の吉田伊知郎とのトークショーがあった。荒井氏はかつて、笠原和夫へのロングインタビュー『昭和の劇 映画脚本家・笠原和夫』(太田出版)が大変な評判を呼んだ(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

 

荒井晴彦笠原和夫

荒井「あんまり笠原さんということでは見てなかった。やくざ映画見てないんですよ。好きじゃない(一同笑)。学生がやくざ映画見てたっていうのは、都市伝説じゃないのかな。オールナイトで“異議なし!”って言って肩いからせて出てくるとか、遭遇したことないですね。(『博奕打ち 総長賭博』〈1968〉を見たのは)後ですよ。三島(三島由紀夫)さんのが「映画芸術」に載って、遅れて見た。『日本侠客伝』(1964)とかも、高倉健があんまり好きじゃなくて見てない(笑)。高倉健が死んで日本中が泣いてるとか、ああいうのがものすごく厭なんですよ。おれ泣いてねえよ。大勢の人が好きなものは嫌い。

 深作(深作欣二)さんの『現代やくざ 人斬り与太』(1972)とか『人斬り与太 狂犬三兄弟』(1972)を見たのは、東大安田講堂の年。その年の秋に京大が落ちて負けたなと。それで映画館に行くようになって、忙しい時期ですね」

吉田「荒井さん、デモとか行ったりしながら映画館にも行くってできるのかなと」

荒井「叱られますね。

 『仁義なき戦い』(1973)はシナリオだなってのは、見てて判りましたね。任侠映画の様式を壊してる。

 仕事で京都の旅館に缶詰になって離婚したとか、内臓がほとんどないとか噂は聞いた。顔を合わせるとかはないですよ。高田宏治さんとは京都の旅館で遭遇したことはあった。

 日本の戦争映画は、結局負けるじゃないですか。アメリカの戦争映画で育ってるから…。笠原さんの戦争映画をちゃんと見たのは、インタビューしたときですね」

吉田「昔の映画雑誌を、荒井さんが笠原さんの悪口書いてないかと思ってさがしたんですが、全然見つからなかった(笑)。距離があったんですね」

荒井「1991年の湯布院映画祭に笠原さんが来てて、ぽつんとひとりですわってて、荒井ですって言ったら“「シティロード」で書いてるね”って」

吉田「湯布院でお会いになったすぐ後に、笠原さんは北野武監督の『あの夏、いちばん静かな海』(1991)についてのことで「映画芸術」に出られています」

荒井「うーん、近現代史の勉強をしてるんだろうなと思ってたんで、映画界の外の専門家ではなく中の人に言ってほしかった。伊藤俊也の『プライド』(1998)のときもそうですね。商業映画の中で、ぎりぎりのところでやってきた人なので」 

 笠原和夫は『あの夏』を批判する文脈で「秘伝 シナリオ骨法十箇条」を開陳した(『映画はやくざなり』〈新潮社〉収録)。

 

吉田「骨法10か条は、最初どう思われました?」

荒井「どうなんだろうと(笑)。北野武批判としてはちゃんとしてるけど、相手にされないんじゃないかなと。北野映画が好きって時代に、オーソドキシーをぶつけても古いよっていうふうに、みんな思うんじゃないかな」

吉田「ぼくも武映画に心酔してたんで、かなり古いなって反撥を感じました。当時は武映画こそ日本映画を変えていってると思ってたんで。笠原さんの新作は『福沢諭吉』(1991)とか『動天』(1991)とかだったんでつまんないじゃないかと。いま読むと、北野批判は舌鋒鋭いところがあって、そこは後で本に収録したときは書き直してあるんですよね」

荒井「シナリオをずっと書いてきた人から見たら、テレビに出てた人が映画撮るなんて考えられない。

 骨法は10個もいらない。8個ぐらいかな(笑)。

 笠原さんにインタビューしたけど、笠原さんはぼくの仕事全然認めてないんじゃないかな。一度NHKのドラマを書いたことがあって、やりますみたいなハガキを出したら“へのへのもへじだ”っていう返事もらって。つまり、このシナリオはただの落書きに過ぎないと(笑)」

吉田「この後で山根貞男さんが武の映画を評価しつつ、骨法10か条も判ると。そしたら「月刊シナリオ」で田村孟さんが“折衷主義者”だと(笑)」

荒井「山根さんには、ぼくが映芸ずっとやってて『あの夏』の特集が唯一の収穫だと言われたけど(笑)」(つづく) 

 

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