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庵野秀明 × 樋口真嗣 × 樋口尚文 トークショー “十三回忌追善 実相寺昭雄 特撮ナイト” レポート(1)

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 2018年12月に、実相寺昭雄監督を追悼する “十三回忌追善 実相寺昭雄 特撮ナイト” が行われた。

 テレビ『ウルトラマン』(1966)を再編集した映画『実相寺昭雄監督作品 ウルトラマン』(1979)や『帝都物語』(1988)、貴重なCMなどが上映され、その前に庵野秀明樋口真嗣両監督のトークショーがあった。司会は『実相寺昭雄 才気の伽藍』(アルファーベータブックス)の著者である樋口尚文氏が務める(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。  

庵野秀明監督の回想】

庵野「ぼくが実相寺さんに最初にお会いしたのは、TBSのラジオだったんですよ。桜井浩子さんがコーディネーターやってて「ジッソーさん、会いたくない?」「会いたいです」。10年ぐらい前かな。10年じゃない、13回忌なんでもうちょっと前」

尚文「10年前に会ってたら…(一同笑)」

庵野「いろいろ聞きました。なんであんなに移動(撮影)が多いんですかって言ったら、移動が多いと局が切れなくなるんだと。ああなるほど! そのときは飯島(飯島敏宏)監督とごいっしょでした。

 その後で『ウルトラQ dark fantasy』(2004)だったと思うんですけど、東宝ビルトに見学に行って現場を見せてもらって。『シルバー假面』(2006)もビルトだったと思うけど、お会いしたのは3回。会ってもそんなに現場じゃ訊けないんで。あのころはいらいらされてましたけど、そんなに動かなくて、指示もなく。若いときに見たかったなと。中堀(中堀正夫)さんに聞く話とかのほうが面白い。

 『ウルトラマン』ではスカイドン(第34話「空の贈り物」)をいちばん覚えてますね」

真嗣「いまみるとふざけてますよね。皮肉なのか、ユーモアなのか」  

尚文ガマクジラ(第14話「真珠貝防衛指令」)の現場で中堀さんと初めて邂逅したらしいんですけど、当時実相寺さんは噂の人だったんですが、ガマクジラスーツアクターの人に「女の人の真珠への欲望が出てない!」と怒ってて、中堀さんは何なんだこの人と思ってある種感動したと(一同笑)」

真嗣「『ウルトラマンができるまで』(筑摩書房)でもガマクジラにがっかりしたと。もっとおそろしいものにしたかったって書いてあるんだけど、でもふざけて撮ってる感じもあるじゃないですか。面白がらせようとしているっていうか。『キングコング対ゴジラ』(1962)とか(コメディ調の怪獣映画)は既にあったけど、笑かしに走るレベルが違いますよね」 

庵野「大人の寓話だと思うんだけどね。あまり子ども向けって印象はない。『ウルトラマン』の中でも異質だったのはたしかですね。ぼくも円谷プロで実相寺さんが撮ってなかったら、会うことはなかったと思う。ATGとか見ないですからね。実相寺さんを知ってたから、ATGも見ましたけど。大学のとき、京都とかで上映会がよくあって。あの面白い回撮ってたのが実相寺って人なんだって意識したのは、大学生のときです。円谷くくり、実相寺くくりの上映会がやってました。『怪奇大作戦』(1968)の「京都買います」をちゃんと見たのがそのとき。『怪奇』のオンエアは怖くて見てない。「人食い蛾」が怖くて、人形から出るとか。再放送は夕方4時半くらいで、明るいから見られた。「京都買います」は小学校高学年ではよく判らない」

尚文「ぼくは「散歩する首」は予告編だけで怖くて熱出して」

庵野「あれ、ひどい落ちでしたね。こんな落ちかよ(笑)」 

尚文「「呪いの壺」の燃えるところは」

庵野「モノクロで見たんで、ほんとにお寺燃やしてると思って見てました」

真嗣「数カットしかないんだけど。ただ火が出てるんじゃなくて、瓦の間から煙が上がっていく感じ。

 テレスドンの回(第22話「地上破壊工作」)はカット数が多い。すごく回してますよね。シーボーズも首都高の飾りとか霞ヶ関ビルに登るとか。1回でこんなにセットアップするんだっていう。でもスカイドンの回はそんなにない。スカイドンシーボーズ(第35話「怪獣墓場」)の夕陽の場面と、うまくまとめて撮ってますね。こんなロビーでするような話を壇上でしてどうする(笑)」 

庵野「きょうのプログラムだったら『ウルトラマン』の長編(『実相寺昭雄監督作品 ウルトラマン』)のオープニングがいちばん好きです。もうお金がないっていうのを面白くするのはこういうことか。絵ですから。絵なのにかっこよくしてる。エヴァのテレビ(『新世紀エヴァンゲリオン』〈1995〉)のオープニングが『謎の円盤UFO』(1970)と言われてますけど、違いますから。ぼくはほんとにあれが好きで、音楽(ささきいさお)も好き。桜井浩子さんがうらやましいのは、曲のいいところにタイトルが入ってくる。間奏の部分とか。『ウルトラマン』(のテレビ版の映像)から抜いてるんですけど、他の監督さんからは抜けないんで、ご自分の回から抜いてて、それがみんな短いんですよ。だってウルトラマンが活躍するところ撮ってない人なんで(笑)。自分の回で編集するとこれしかないのか。ありものでつくってる、あの感覚が好きです。大好きで、気が滅入ったときあれ見て元気出すんです。オープニングだけで、本編に入ったら切る(一同笑)」(つづく) 

 

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