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森次晃嗣 インタビュー「しゃにむに突き進むダンは、当時の僕自身の投影だったんです」(1998)・『ウルトラセブン』

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 『ウルトラセブン』(1967)の完結から30年を迎えた1998年、『セブン』に注目が集まり、オリジナルビデオが発売され、主演でモロボシダン=ウルトラセブン役の森次晃嗣のエッセイ『ダン』(扶桑社)が刊行されるなどのムーブメントがあった。

 「Goods Press」1998年10月号ではセブンのグッズの特集が組まれて森次氏もインタビューに応じているので、以下に引用したい。定型的な回答をしつつも心情が伺えるものになっている。

 

GP「数多いウルトラ・シリーズの中で、ウルトラセブンだけが傑出した評価を得ているのはなぜでしょう」

森次「ウルトラQウルトラマンの成功があったからこそ、ウルトラセブンが生まれたわけです。いわばセブンは、前2作の集大成だったんです。それだけに制作スタッフの意気込みは相当なもので、脚本家は時代の先を見越した台本を書き、監督は前作でできなかった意欲的な試みに挑戦していましたね。出てくるメカだってカッコいいでしょ。ウルトラホークやポインターはもちろん、ヘルメットなどの小道具ひとつひとつまで、ほんとうに絵になっていたのですから。あの頃は、何もかもが整っていましたね。まあセブンは、円谷プロ完全燃焼ドラマだったんじゃないでしょうか」

GP「いま見ると制作スタッフには、錚々たる方々が名を連ねていますね」

森次「そう、当時は最高のスタッフがそろっていましたね。セブンは円谷英二監督が直接手をかけられた最後の作品だし、長男の一(はじめ)さんも父親の意思を受け継ぐ、現場の好きな情熱あふれる監督でした。実相寺昭雄監督は独特の絵作り原文ママをされる方で、すごく微妙なアングルから撮るため、撮影中は気が抜けなくて大変でしたが、出来上がった作品はやはりどれも素晴らしいものばかりでした。脚本家の金城哲夫さんの手腕もすごかったですね。彼の書く脚本は、先の先まで考えていたのですから。制作スタッフは、みんなみんな映画が好きでたまらない、「戦士」ばかりでしたね。それから俳優陣も若手が多かったせいか、みんなはつらつとしていましたよ。僕は初めてセブンで主役に抜擢されたのですが、このチャンスに賭けて体当たりで演技しました。本当のところ、しゃにむに突き進むダンは、当時の僕自身の投影だったんです」

GP「全49話の中で、強く印象に残る作品は何でしょうか」

森次「一番楽しかった作品は「地底GO! GO! GO!」。ダンと薩摩次郎の二役が演じられましたからね。苦労したのは「零下140度の対決」かな。クーラーのない真夏のスタジオで、発泡スチロールに埋もれて極寒の演技をするのが、すごく苦しかったのを覚えています。作品的に好きなのは「ノンマルトの使者」と「第四惑星の悪夢」ですね。どちらの作品も、いま見てもテーマが素晴らしいでしょ。あとは「史上最大の侵略(前編/後編)」ですね。最終回ということで、残っていた火薬を全部使った爆発シーンがものすごかったし、それまで満田かずほ監督が伏線を引いていた原文ママ、ダンとアンヌのほのかな恋の結末ですから」 

GP「新作ビデオで再びモロボシダンを演じられたわけですが、その経緯は?」

森次「4年前に日本テレビでセブンのリメイク番組(引用者註:『ウルトラセブン 太陽エネルギー作戦』〈1994〉)を作ったんですが、モロボシダンが出てこなかったので、かなり投書が来たらしいんです。モロボシダンの登場しないセブンなどありえない!ってね。それでもう1本作ったセブン(引用者註:『ウルトラセブン 地球星人の大地』〈1994〉)には、昔のままの黄色いジャンパーとGパン姿で登場したんです。そしたら突然この新作ビデオの話でしょ。腹の出たモロボシダンじゃファンの期待を裏切ると思って、みっちり1カ月間体を鍛え直しましたよ(笑)。実はモロボシダンは僕にとって一番嫌な役なんです。というのも、しっかりしたイメージがあるでしょ、ダンには。役の上で遊べないんですよ、全然。とはいっても、続編をあと6本制作することが決まったので、いままでになかったモロボシダンの姿を皆さんにお見せできると思いますよ」

GP「それで、ダンとセブンは、今後どうなっていくのでしょう」

森次「さあ、まだ脚本を見ていないので何ともいえませんが、自分としては森次晃嗣の「素」に戻って、初期のモロボシダンを演じてみたいですね。新人だったあの頃の精神を思い出して、ストレートな演技をするつもりでいます。あとはセブンの映画を撮るのが、いまの夢なんですよ。もちろん劇場公開用のね。タイトルは「グッバイ!セブン」に決めているんです。テーマは大きく、ロケは広大なオーストラリアかどこかでやりたいですね。M78星雲に帰らなかったセブンが、人類のために戦って傷つき、最後は地球に抱かれて死んでいく、といった構想です。これが僕にとって、セブンの締めくくりになるでしょうね。そのためには10億円くらい予算が必要なんですよ。自分自身でプロデューサーもやってみたいので、金策に走り回ってみたんですが、なかなか現実は厳しいですね。でも、いつかきっと実現したい夢なんです」(1998年7月31日 「ジェリー・シャポー」にて) 

 インタビュー内ではセブンを映画で完結させる構想や自分の素に戻りたいという心情が語られていて、森次氏はもうモロボシダンから解放されたかったのかもしれない。ただ映画は実現せず、森次氏は映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(2006)やテレビ『ウルトラマンメビウス』(2006)のころから、傍流的なオリジナルビデオだけでなく正編でもモロボシダンを演じるようになっていった。20年経ったいま、役者の生き方の難しさを示す一例かとも思われる。