私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

飯島敏宏 × 桜井浩子 × 稲垣涌三 × 鈴木清 × 中野稔 × 小中和哉 トークショー レポート・『怪奇大作戦』(1)

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 壁を突き抜ける怪盗、消える仏像、受話器をとると燃えあがる人間、夜ごと現れる落ち武者の亡霊。謎めいた不可思議犯罪に専門チーム・SRIが挑戦する。

 テレビ『怪奇大作戦』(1968)は、『ウルトラマン』(1966)や『ウルトラセブン』(1967)を当時ヒットさせた円谷プロダクションによるSFサスペンスの傑作シリーズ。太平洋戦争や乱開発などの問題を織り込んだシナリオや凝りに凝った映像には、いまなお魅せられる。

 8月に放送50周年を記念したリバイバル上映とトークショーが開催され、監督の飯島敏宏、出演者の桜井浩子、撮影の稲垣涌三・鈴木清、視覚効果の中野稔の各氏が登壇。聞き手は小中和哉・高橋巌監督が務める(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

 

桜井「きょうはお出ましいただきましてありがとうございました」

飯島「きょうは、お暑い中というには物足りないような…。ようこそいらっしゃいました」

 

 桜井氏が「ほら、マイク持って」と稲垣氏に注意。

 

稲垣「ぼくが撮影部に入ったときから大女優でしたから、指示されてしまいます(笑)。みなさん、よくいらっしゃいました」

鈴木「今晩は、お忙しいというわけでもないのでしょうが(一同笑)われわれが円谷プロで頑張った作品をごらんいただきありがとうございました」

中野「スタッフのみんなは作品によって変わるんですが、ぼくは “監修:円谷英二” と出る作品では、交代がいないものですべてやっています。きょうの作品では『ウルトラマン』と違って見せ場がなかったですけど、質の高い合成ができたと思っています。2本ずつで入る(制作する)んですが、1本はあまりなくても、もう1本は質の高い合成ができました」

 

【「壁ぬけ男」】

 飯島監督の第1話「壁ぬけ男」は、制作順では2話目。

 

飯島円谷英二さんの息子さんが円谷一さんで、TBSでは私の一期先輩。その縁で円谷プロに行ったんですね。英二監督は息子さんにはものすごく厳しかった。ですから『怪奇大作戦』の1話(「人食い蛾」)は撮り直しということで、私が呼ばれたんですね。

 第3話「白い顔」で稲垣カメラマンがデビュー。稲垣浩監督の息子さんで、助手から円谷プロで修行して」

稲垣円谷プロではカメラが何台もあって、回す機会は多かったです。回すこと自体は何の恐怖心もなかった。TBSから飯島さんと実相寺(実相寺昭雄)さんが来て、引っかき回していったんですね(一同笑)。タブーでできないこともやってたんで、愉しかった」

飯島円谷英二さんはトリック撮影とおっしゃってた。弟子ではなかったから作品の話はしないんですけども、英二監督が撮影所で不満があると円谷プロでお酒飲む。監督室でいろいろこぼされてて、栄養になりました。CGもない時代で、カメラはトリック撮影だと」

小中「「壁ぬけ男」のずぶずぶ壁に入るとかのアイディアはどなたが?」

飯島「(「壁ぬけ男」で地面に沈むシーン)水に発泡スチロールの粒を浮かべて、コンクリートに見せてる。丸の内のビル街で撮って、沈むところだけスタジオ。糊を壁に見せて人を入れて、昔のサーカスみたいにくるくる回って、足だけ別人とか。最後の消えていくのは光学撮影で中野さんです。中野さんは厳しくて、現場に来てこういう素材じゃなきゃダメだと」

稲垣「池谷(池谷仙克)さんのセットの段階で打ち合わせして。役者さんが最終的に水の中に入って、田口計さんは5時間くらい入ってましたね」

飯島「徹夜だったね。OKが出て、田口さんが撮影所のお風呂に入ってたら、カメラNG(笑)。そういうときの助監督は(呼びに行く役回りで)かわいそうですよ」 

【「霧の童話」(1)】

 同じく飯島監督の第12話「霧の童話」は冒頭の亡霊騒動で横溝正史みたいな話かと思いきや、ラストはほろ苦い。

 

鈴木「(ロケ地は)伊那市の高遠ですね。霧はスモークで薄いフィルターもかけて。霧を流すと、フレームが的確につかめないんですね。苦労しました。

 つぶしのところもありますし、回想シーンはつぶし。シリーズ通してナイター撮影が多かったですね。

 (水害の特撮は)あのころはお手の物で苦労したことはないですね。(怪獣物と違うジャンルで)浮き立ってはいけないし、色を補正したり」

飯島「例えば夜のシーンでキングアラジンがお寺へ来て、フィルムの感度が悪いのに、予算がないからゼネレーターが30キロ。照明は100キロかかるのに、それが30キロしか。実相寺くんは別ですよ。ライトがあっても映らなくするから(笑)。

 鈴木さんがおっしゃったけど、鉄砲水みたいな水の特撮はお家芸で堂々たるものです」

小中「ラストは未来のイメージですね。道路ができて、少年が大人になって工員の服を着ているという」

飯島「列島改造の時代で。そこらじゅう『傷だらけの山河』(1964)で破壊破壊破壊。あらゆる作品にそういうメッセージがあります」

小中「未来の設定でも、当時の現実を反映していたということですね。ラストシーンがなくても成立しますけど、あると味わいが変わってくる」(つづく 

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