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是枝裕和監督 トークショー レポート・『万引き家族』(1)

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 日雇い労働者(リリー・フランキー)とその妻(安藤サクラ)、リフレ嬢(松岡茉優)、幼い男の子(城桧吏)、祖母(樹木希林)らは、日常的な万引きで生計を立てていた。実の親から虐待を受けていた女の子(佐々木みゆ)も加わって明るく暮らす6人だが、やがて祖母が死を迎え、関係に変化が訪れる。

 

 『誰も知らない』(2004)や『海街diary』(2015)などの是枝裕和監督の新作『万引き家族』(2018)は、カンヌ映画祭パルムドール賞を受賞し、大ヒット。8月に日比谷で是枝監督が観客からの質問に答える形式のトークショーがあった(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。 

 公開して2か月経って劇場でティーチインができるって、幸せな感じだね。

 もとの企画書は、ぼくが“万引き家族”って入れちゃったんだな。自分の映画のタイトルに家族って入れたことなくて、入れるのやめようと思ってたのに、書いたんだよね。それを本タイトルにするつもりはなくて、最初につけたのは“声に出して呼んで” 。私小説っぽくて間口が狭い、何だか判らないっていう。ぼくはそういうタイトルが好きなんで、『海よりもまだ深く』(2016)とか。途中で『スイミー』(好学社)を膨らましたので、“広い海の底まで”とつけて。現場では“声に出して呼んで”だったですね。先にインターナショナルタイトルを決めなければならなくなってしまって、エージェントから出てきたのが“ショップリフターズ” 、万引きをする人たちみたいな。そこにダブルミーニングがあって、万引きされた人というニュアンスも含まれると言われて、シンプルでいいタイトルだなと思ったんですよ。そこでプロデューサーから、家族の笑顔に“万引き家族”と載せたポスターを見せられて、意外とありかもと思ったんです。ミスマッチな感じが。タイトルで日本を何とかだとか言ってる人たちも、見れば言わなくなるだろうと。他の案件でもそうなので、気にして右往左往はしないようにしていますけど。

 歳とともに、日常会話は“あれ”と“それ”ばかりになってきて(一同笑)、目に見えてるものは名前で呼ばない。“お醤油とって”じゃなくて、“それとって” 。日常会話に映画も寄せてこうって(台詞で)あれそれこれで済ますというやり方をしてます。そのほうがリアルになっていて、ぼくが思いついたんじゃなくて、向田邦子さんのホームドラマはあれそればっかりですよ。ぼくはそれを見て育ってるので、そういうやり方が出てきてるんだと思います。

 大まかなプロットはできてましたけど、歯が抜けるとかはなかったです。撮影の初日、冬場にコロッケをリリーさんが食べるシーン撮ってたら、歯が抜けたって言われちゃった。翌日差し歯をつくったんですけど、せっかく抜けたから、抜けるシーンを書こうかなと。歯がないおばあちゃんが亡くなるとき、孫の乳歯が抜ける。屋根に投げておばあちゃんは床下に埋めるという対比です。雪もたまたま降ったから。ただせっかくだから風景だけでもと、海へみんなで行ってみようと。作品の世界観はぼくの中にぼんやりあっても、キャストと共有できてなかったと思います。海の撮影の朝、希林さんが“きょう撮るのは何にも残らないから、気にしないほうがいいよ”って説明をされてて、ぼくの目の前で(一同笑)。大胆だなと思いましたけど、誰かの想い出にする程度かなと思ってましたけど、結果的に強いシーンになったので、かなりのボリュームに。(映画の中でのシーンの)位置については悩みませんでした。この後でおばあちゃん亡くなるという、あの場所と。

 本編タイトルのアートワークをポスタービジュアルに使うこともありますね。『空気人形』(2009)なんかはそうです。タイトルはミロコマチコさんが描いてくれたくれたもので、万引きをした籠のシーンには載りにくい。そこでドキュメンタリー番組のようにぶっきらぼうにタイトルを入れてみようと。もともとあそこに入る予定ではなくて、のぶよとおさむがりんちゃんを返そうと団地に行って返せないというところに、この文字を入れようと思ってました。編集しながら変えました。 

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 (カットシーンについて)おばあちゃん(樹木)が亡くなった後に、亜紀(松岡)ちゃんが布団で寝ちゃってて、居間でりん(佐々木)ちゃんがビー玉を転がして、亜紀ちゃんがそれを投げ返す。りんちゃんが呼んで、いっしょにビー玉で遊んでると、信代(安藤)さんが戻ってきて3人で遊ぶっていうシーン。どこぐらい回したかな。1時間近く回して、でもよすぎちゃった。よすぎて落とすっていう。編集し始めて、おばあちゃんが亡くなった後、しょうたが自分の中に芽生えてしまった罪悪感や親に対する違和感に向き合って親を越えていくという、そういう話に絞ったほうがいいなと編集中に見えてきたんだよね。サイドストーリー、あの家族がもっと家族になるエピソードは削いでしまおうと思いました。全体の流れを考えると。どっかに入れられないかと考えたんですが、今回はあきらめて。予告で使っていただいて、成仏しました。(つづく) 

 

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万引き家族【映画小説化作品】

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