私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

ジェームス三木 × 井土紀州 トークショー レポート・『さらば夏の光よ』(3)

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【恋愛について】

三木「いまさかんに言われるセクハラ問題(一同笑)。セクハラはいけないって一括して世界中で言ってますが、ぼくはちょっとなと思っていて。

 口説くとき、それセクハラですよって言われたら終わりでしょ。この映画(『さらば夏の光よ』〈1976〉)も犯罪犯罪って感じで、不良少年の純愛も不自然な感じだし、それが一括で悪いっていう世の中になってる気がする。

 結婚制度はまだ1000年くらいですからね。いまみたいにセクハラって言うと若い人が結婚しなくなる。若い男の子が女性みたいになってきたのは、ひとつはセクハラ問題で、もうひとつは立ち小便ができなくなったから(一同笑)。昔はそこらじゅうでして、いまは女性と同じように便器にすわっていて男らしさが欠けてきてる。あと24時間煌々と明るい。昔は盆踊りでもカップルになると真っ暗なところに消えてく。だんだん人類は絶滅するんじゃないか。若い人たちがんばってという意味を込めて、この『さらば夏の光よ』を(一同笑)。

 昔の映画で『哀愁』(1940)、男が戦争に行って戦死したので彼女がパンパンガール、売春婦になったら男が生きて帰ってきて、女性が自殺する。そういうのもありましたね。恋愛や結婚にはあらゆる人が関心あるでしょうから、いろんな映画があっていい」

【ものを考えること】

三木「ものを考えるとき、自分の頭で考えるのを課してるんですね。本を読んでも鵜呑みにしないで。通説・常識におかしいことはある。それをつきとめていく。東京ドーム100個分の広さっていうでしょ。その広さって判りますか。でも判ったような気がする。それで間違いが起きる。B4でコピーしてって言われて地下4階まで降りるとか(一同笑)。

 歴史上の人物で、正確に書かれているかは難しい。資料に限度があって、勝ったほうのトップの見方で歴史はつくられる。弱者のものは残らない。明智光秀は悪になってしまうし、自分の頭で考えるというのが…。

 日本がアメリカと戦争したとき、朝鮮の人は日本人だった。北朝鮮も韓国も日本の領土で、神社が建てられた。私は満州で生まれたんですけど、戦争に負けて天皇陛下が人間ですって言われたとき、ひっくり返るほどびっくりしました。世の中には信用できないことが多い。

 人間の本能は闘争本能と生殖本能。闘争本能によって文明が進んで核兵器もできてるけど、恋愛して子孫を残す生殖本能は変わってない。人類のセックスの仕方は変わらないでしょ。

 文明より文化・芸術のほうが、値打ちがあると思う。ナポレオンという英雄がいてヨーロッパ全土を征服してフランスの皇帝になったけど、あの人にはぼくたちは何のお世話にもなってない。同じころに生まれたモーツァルト、その音楽がいま流れない日はないですよ。文化を大事にすべきであって、文明には気をつけたほうがいいといま思っています。

 昔、原始人は縄張り争いをした。集団で生活すると安全で繁殖にもいいから、村ができて都市になった。進化するのはいいけど、結局は暴力団と同じじゃないか。暴力団はこのへん守ってやるよとみかじめ料を取る。政治もこの国の安全を守ると言って税金を取る。政治は暴力団じゃないか(一同笑)。世界中に暴力団がある。世界がひとつの国家になって、国籍がなくなればいい。芸術は国籍を超えますからね。国家や国籍はつまらんのじゃないかという作品が、生きてる間にできるといいと思います」

【その他の発言】

三木「(現場で)監督が言うのと違うことを言うと、監督の顔がつぶれますからね。

 勝新太郎は(シナリオを)全部変えちゃう。またうまいんですよ。(『独眼竜政宗』〈1987〉での)勝新太郎渡辺謙が会うシーンで、勝新太郎はいきなり違う台詞を言う。そういう人もいるんですね。勝新は将棋仲間で喧嘩することはなかったです。喧嘩しても敵いませんからね(一同笑)。仲間連れて宴会やるのが大好きで、ハワイでボーイさんに「ここは〇〇」 「ここは××」って注文したら全員ココアが来ちゃったとか(一同笑)。

 会話って映画や舞台の台詞みたいにトントンといかない。劣等感も自尊心もあるし。「この赤ちゃんかわいいわね」って言うと大概嘘だと(一同笑)。普段の会話は面白いですね。脚本をお書きになる方は気をつけて。簡単には通じない、誤解もあったりしてそれが面白いですね」

井土「最後に、脚本を目指す人間にひとこと何か」

三木「成功しないように!(一同笑)」

 

 会場には金子修介監督や脚本家の伴一彦氏の姿もあった。