私の中の見えない炎

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今野勉 × 是枝裕和 トークショー “永六輔とテレビジョン”レポート・『遠くへ行きたい』(2)

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【現場の想い出 (2)】

今野「『七人の刑事』(1961)はスタジオだけど、犯人が走ったりすると町中はフィルムで撮って。全編フィルムでつくったことがあって、「二人だけの銀座」という。銀座を少年と刑事が歩き回る。三脚を立てない、全部手持ちでやるので許可をとらなくていい。撮影してると人だかりができますけど、そのときの情況や天気を見て、全カットその場で決めてました。リハーサルもしない、ぶっつけ本番。そうやって撮ることでのリアリティ。少年が走り出すとき、転びそうになるとかは稽古じゃできないですよ。わざとらしくなる。そういう経験が活きたんじゃないかな。

 ドラマもドキュメンタリーも、ディレクターとして何をいいと決めるかはそんなに区別がない。こういうふうに言ってくださいと練習させて撮っても感動しない。思いがけないことが起こったり、初めて見るときの感じ」 

テレビの青春

テレビの青春

 

【現実と虚構 (1)】

今野「第1回の啄木(石川啄木)の手紙を読むところで、ぼくの“はい、カット”って声が入ってるはずなんだけど、ビデオにするとき切っちゃったのかな。現像で見たら、ライト消してもカメラ回してたんですね、佐藤利明さんっていうカメラマンが。永さんは終わるとすぐ顔が切り替わる。ただあの手紙読んだときは、じっとしてる。完全に手紙の世界に入っちゃってる。それでぼくは、はいカットって言ってライトが消えてシルエットになったところも使いました。永さんが自分でナレーションも書くけど、じっとしてる自分の顔が映ってても何も言わず、それを生かしてくれました。これはドキュメンタリーの歴史で革命的です。スタッフの声が入って、ライトが消えるところも入ってる。試写会で大問題になって、NGかっとだと。ぼくはその場にいなかったけど、電通藤岡和賀夫さん、国鉄ディスカバリージャパンを企画して、『遠くへ行きたい』も始めた人があれでいいんだと主張してくれて、放送されました」

是枝「商品化するときにカットしたテレビマンユニオンが悪いと(一同笑)」

今野「調べてみないとなんだけど、大変な事件だったということが判ってないですね(一同笑)」

是枝「オランダの回(第16回)でもマイクがからんだのがそのまま使われてます。意図して残していこうというところが」

今野「撮られた映像が面白ければ使うというのはぼくにとって当たり前の感覚で、あのNGカットを使ったんですね。永さんも、スタッフがいっしょにいるということを隠さなくなったですね。第16回で永さんが柱をぐるぐる周りながら“じいや!”と言う。当時の視聴者は判るんですが、スタッフでいちばん年寄りだった録音のくぼたさんがいて、呼ばれると画面に出てくるギャグがある。ひとり旅のように映ってるけど、たくさんスタッフがいるというほうが事実だからということですね」

是枝「第16回でポスターを見せながら、十字架がポスターにあるけど実際(の風景)にはないという。あれを国鉄スポンサーの番組でやる(一同笑)」

今野「ディスカバージャパンのポスターは虚構じゃないかって批判した写真家の中平卓馬がいて、ぼくはカメラで写すっていうのは、真っ正直に撮れば事実が映るということではないと思ったんです。カットって言った後の永さんの顔が事実なのかどうかというのは、誰にも判定できない。これが事実でこれが虚構というふうにはいかない。スタッフを画面に出して明かすというのは、虚構か事実なのか判らない。われわれは判断がつかないところで仕事をしてると意識したほうがいいんじゃないかな。二元論というのは違うんじゃないかとずっと考えていて」

是枝「旅情がどのように演出されることも含めて番組にするというのが今野さんの哲学ではないかと思うんですが。永さんは恥じらいを持った方で、旅番組で国鉄のスポンサーで自分が出るということに照れが感じられて、そこが倫理だったように思います」

今野「二十六聖人なんかは処刑された人です。それをまともに言うことで自分が高みに登ることはしちゃいけないと。どっかで二十六聖人の話をしてる自分がはずかしいって気持ちがある。

 永さんはラジオが好きでテレビが嫌いだったと言われてますけど、『遠くへ行きたい』26本に出て、その後で亡くなるまで80本出てる。自分で愉しめるのがあれば出たいと思ってたんですね。聞いたのは、生放送で打ち合わせと全然違うからカメラに向かって帰りますって言って帰っちゃったと(笑)。そういうのやってのけるから、みんな敬遠したこともあると思うんだけど、テレビが嫌いではなく、見せるってことに情熱を注いだ人ですね」(つづく) 

映画を撮りながら考えたこと

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