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黒沢清 × 篠崎誠 トークショー レポート・『世界最恐の映画監督 黒沢清の全貌』(4)

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【脚本執筆について (2)】

黒沢「(脚本の執筆のときに)カット割りを考えて書いているということはないです。カット割りは別な頭を使っていて、ロケハンや俳優と話してるときにできてくるもので。

 絵が上手い方は撮ろうとする画(の絵コンテ)を描けますけど、絵は難しくて。これから撮ろうとするカットはどんなカットなのかって、描いても人に見せたくないものですけど」

篠崎「見てしまって」

黒沢「見たの…(一同笑)」

篠崎「お描きになってるのを見てしまって」

黒沢「それ、まずいでしょ(一同笑)。ややこしい場面をあした撮らなきゃいけないときに、見取り図を描く。面倒くさいけど、カメラはここで、ぼくの狙いは…と。あまりに複雑なので。

 『散歩する侵略者』(2017)での病院の中のワンカットは、あれはこうするって見取り図を描いて配りました。カメラはこう来て、ふたり(長澤まさみ松田龍平)はこう来て、笹野高史はこう来てと(笑)。口で説明するのが大変じゃないですか」

 

【読書について】

黒沢「小説は読んでなくて、スタニスワフ・レムは読んでましたけど、すべてを読んでるわけではなくて。トールキンの『指輪物語』は何度も読みました」

篠崎モンテ・クリスト伯、『巌窟王』をやれるならやりたいとおっしゃってましたね」

黒沢「あのころはバブル期で家賃が高騰して、吉祥寺に住めなくなって八王子に引っ越したんです。都内に出て行く用事もあって電車が長い。薄っぺらいと往復で読んじゃうので、長い分厚いものを所沢時代に読みましたね。モンテ・クリスト伯を映画化したいとも言いましたけど、デュマ研究者ではないし」

篠崎「『LOFT』(2006)の直前に、ミイラに関する本を読まれてましたね」

黒沢「それは小説でなくて、エジプトのミイラ発掘のルポルタージュ。そういうのは読むんですけど。理系の本は大好きで、ブルーバックスとか。カンブリア紀の生物、三葉虫にこんなに種類があるのかとか」 

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【その他の発言】

 『散歩する侵略者』の例の病院のシーンに、意味ありげにブロンズ像が映される。あれはどういう意味なのかと熱い質問があった。

 

黒沢「すみずみまで見ていただいてありがとうございます。夢を壊すようで申しわけないんですが…全く覚えてないですね(一同笑)。こちらで用意したものは記憶にありますし、どれだけ目立つか馴染んでいるか気になるんですが、もともとあるものはこのまま撮っちゃえ。無意識に記憶から消そうとしてるんですかね。

 (撮影は)大がかりでした。深い狙いがあったわけではないですけど、なんとなくロケハンしながらワンカットで行きたいというのがあって。エキストラはどれだけいるか、どれだけ並べるか、かなり段取りを考えて。プランを実現できるか、苦労しましたけど愉しいもので、成立したかを気にしてブロンズ像はさらっと…(一同笑)。細かいエキストラの動きは助監督がやって、ぼくが決めたのは主人公と医師と笹野さん、メインの人の動き。

 防護服とかはやりすぎでしょうと、えっと思ったんですけど、助監督が仕込んでくれたんでいいかと」

 

黒沢「『リアル 完全なる首長竜の日』(2013)では、シャッフルとは違いますが、時制が混乱する仕掛けがあります。そういう映画はあっていいけどイレギュラー。タランティーノも一直線の作品のほうが好きだなと。ときどきやりたくはなりますが、かなりイレギュラーですね。

 映画の表現の核心部分に触れるんですけど、映画って場所が変わっていかないと面白くない。どんなすごいことが起こっても、起こっていることにもよるんですけど、2〜3分で場所に飽きてくる。そういう特徴があります。舞台中継を映像で見ると、舞台そのものは面白いけど退屈してくる。場所が変わらないから。映画は、シーン1が2〜3分持続したらシーン2は違う場所。警察署からバーンと飛んで家、次は街を歩くと映画としては見やすい。刑事がいて犯人がいると、2つがクロスしなくてもこの先どうなるって映画的に構築しやすい。語りの構造を分散させるには、場所を飛ばすやり方が基本かなと思っています」

 

 最後に準備中の新作について触れられた。「来年に入って早々に間違いなく撮影するであろうと。希望的観測ですけど。近々に撮影するものを準備しています」とのことだった。トークの後にはサイン会もあり、それにしても自分もかなりのファンだと思っていたのだが、今回の参列者の情熱には見ていて圧倒された。 

世界最恐の映画監督 黒沢清の全貌

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