私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

山田太一 インタビュー“よき相互依存っていうのかな。人間、一人じゃなんにもできないんですよ”(1985)(6)

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山田お金が絡まないと我慢しないですよ、なかなか。やりたくないことしないですよ。お金をくれるっていうからしょうがないからやろうと思うわけでしょ。そういうことで嫌なこともやったり、大嫌いだと思っているような人とも付き合わなければならない。だけど付き合ってみると案外思いがけない側面が見えてきたり、自分の中の感受性っていうのも潔癖でなくなるっていうのかな、そんなに人を一言のもとに裁くようなことがなくなってくるっていうのかな。そういうことでだんだん大人になっていくわけですから、お金を稼ぐってことで僕は随分成長すると思うから、それも自分の時間だと思っていいんじゃないかと思うんですね。

(中略)

 学生の頃っていうのは、あんなのはいもっていうふうな感じでぱっと裁いちゃう。ところが、いもに世話になっちゃったりするっていうこともある。会社の中に入ったりするといもの方は仕事ができたりすることもある。そうするとね自分の位置とかがわかってくるでしょ、だんだん。そうなると、なるほどな自分はでかい面して相当な人間だと思ってたけど、何もできないただのひよこだったってことに気がついてくる。それで教わるとか教わろうとか、ああ素敵な人がいるんだなあとか、もちろん嫌な人もいるだろうけれどね、そういうことでいろんなものを吸収できますよね。だから会社に入って仕事につくということはとっても大切なことだし素敵なことだと僕は思う。

(中略)

 (自作の)登場人物ってみんな好きだからね。それぞれのいろんな要素ってあるでしょ。だからそれぞれ全部僕の属性でもあるわけだから。(『ふぞろいの林檎たち』シリーズの)中島唱子さんの役でね、自分があんまり顔がよくないとか姿もよくないこと知ってて柳沢慎吾に、これはパート1の方だけれども、五千円お小遣いあげるから五千円分だけいい顔してって。そういう悲しさっていうのかな、またそれをちゃんと言っちゃうっていうふうなしたたかさとかね、そういうようなものを持ってる人、好きだけどね。自分がちゃんと見えるっていうのかな。それからある場所にいるとここよりほかの場所がいいっていう気がしてしまうっていうのかな。そういうのはだいたい欠点としてとられることが多いけれども、でもそれがなかったら人間って変わっていかないもんね。だからそういう意味では石原真理子さんがやった生き方みたいなものも嫌いではないし。それから、非常にセックスとかそういうものを理詰めで考えていこうとする態度は、手塚理美さんの役の考え方みたいなものをまぁ僕はひとついい女の子だなっていう感じで書いたつもりなんだけど。理屈っぽくて、とかあんなふうにセックスにこだわらないはずだ、とかいう意見もありましたけれども、セックスにこだわらないのはなんか僕は鈍感だっていう気がするんだな逆に。だって、触わられたりしてもドキッとしたりしないでね、触わられようがセックスしようが何しようが全然へっちゃらよって言うのは、僕は何だか信じられない。僕はそういう女の人は嫌いだな。やっぱりそういうのを大事に思うっていうのかなあ。そうそう誰とでもやるわけにはいかないっていうふうに思う方が自然だって気がするんだ。なんかそんなのは気にしないっていうのは、むしろ古いっていうかなんかつまらない気がする。それから高橋ひとみさんがやった外語を出て頭のいい子で、だけど男に溺れちゃうっていいうのね。そういうのも嫌いじゃない(笑)。

(中略)

 でも、いい女を書こうと思って書いているんじゃないんだな。嫌なところも書こうと思ってるしね。

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(中略)

 マスコミの考え方っていうものに本当にいろんなカタチで影響を受けてますからね。そこから自由になるってこと、本当はどうなのかって見ることはやっぱり一つの自立だと思うね。ただ何もかもそんなに鋭い観察をすることはできないから、自分が感じている種類のことだけでもね、マスコミに引きずられないで考えてみるっていうのかな。自分について、自分たちの世界について報道されていることが少し違うんじゃないかとかって感じるぐらいのことはみなさんが当事者なんだからね。堂々と言えるし、そんなものに毒されないで生きていくことが一種の自立だと思うけどね。

(中略)

(思い出の本一冊を問われて)僕はね、本というのは人に勧めるってものじゃないと思うけど自分とあまり関係ない人に勧められるのは僕もそれに引きずられるかなあ。だけど、あんまりそばの人がこの本おもしろいって言うとかえって読みたくなくなっちゃうことがあるのね。例えば親が勧めるとかね、学校の先生とかね。ただもっと遠い人ね、全然関係ない人に勧められたらかえって読むかもわからないから、僕なんかが言うことは意味がなくもないのかな。これだけ生きていて一冊と言われるとそりゃあ大変だよね。女の人に絡めて言えばね、ボーヴォワールの『娘時代』という自伝があります。これはとても僕は好きだったな。いい自伝ですね。サルトルと出会ってね、一種の青春期ですよね。非常に頭のいい女の子が一生懸命いろんな素敵な人に出会っていくっていうかな。それは、ずっとあるんですよ。『娘時代』だけじゃなくていろいろ。みなさん共立女子大学生)が読んでおもしろいと思うのは『娘時代』だと思いますけどね。

 

以上、「あかね」第31号(共立女子短期大学国文研究室)より引用。

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