私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

山田太一 インタビュー“よき相互依存っていうのかな。人間、一人じゃなんにもできないんですよ”(1985)(4)

山田一つ一つのシーンはチャーミングでね、面白いと思って見てるんだけど、よく考えると別に何のストーリーもなかったなっていうのが、僕の理想なんですよ。あとは現実の味わいをね、例えば恋人と二人で歩いてたりするときに楽しいっていう気がするとか、ああいう恰好でキスしたら素敵だなと思うのと同じような、そういう楽しさがあるのがいいって思うんだ。人と話してるときの優しさであるとか、意地悪さであるとか、ああこういう方が魅力的だなって思うとか、見ている人が、そういうことを細かく見ることができるようになる、それがドラマの素敵さだと思うんだ。

(中略)

 同年配の人同士でね、同年配なら相手の心理がわかるのかっていうとね、わかんないことが多いですよ。僕はギャンブルはやらないけれども、ものすごくギャンブルに夢中になる人がいるでしょう? そういう人の気持ちなんか、あんまりよくわかんないね。それから、煙草も吸いませんから、吸う人の気持ちも、あんまりよくわかんない。そういうふうに、同世代の人だって、わかんないこと一杯ありますよ。で、それと同じに、若い人の気持ちも、わからない。他人ていうものは、大体わからないものだよ(笑)。

(中略)

 ただね、僕と非常に気持ちが似てる人っていうのは、いると思うのね。それは年齢関係なく。例えば、ドッキリカメラみたいなもので、何かされたときに、どういう反応をするかっていうのが僕と非常によく似てる人っていると思うんだな、若い人でも。で僕は、しょっちゅうこういう状況になったら、この人はどういう反応をするかなってことを考えているんですよ。どういう反応をするか想像するんだけれども、僕はその人にはなれない。だから基本的には僕の反応ですよ。僕ならどうするかなって。そうすると、僕がした反応とか、僕が言いそうなセリフとか出てくる。それと、非常に波長が合う人がいるんだろうな。その人は「あー私のこと書いたみたいだ」とか「あれ、よくわかるな」とかっていうふうに思ってくれるわけなんだ。僕は、実は一生懸命研究して、それで書いているわけではないんですよ。研究して書けるっていうようなもんではないと思う。ドラマっていうのはね。だから、実際の女の子たちと違うと思いますよ。実際の女の子たちはあんなにペラペラきちっと論理だってものをしゃべらないっていうことを言ってる人もいたけど、本当にそうですね。ただ、気持ちはこういう気持ちなんだっていうことをドラマの登場人物がしゃべってくれるっていうのかな、その快感っていうのもありますでしょう。実際には男の子とデートしたとき、そんなにきついことは言えなくて、曖昧だったりするところが、ドラマではもっと強く言ったりしてて、「あー、いい気持ち」って感じる、それはあるよね。僕も若いとき、感情の表現なんか下手だったし、思ったことが、はっきりうまく言えなかったりね。そういうのは、若い人の普通のあり方じゃないかと思うけど。で、自分の若いときのこととか、いろんなもの総動員して、こういうときならどうするかなって考えるわけ。だから、若い人の話を書いているようですけど、実は別に若い人の話を書いているわけではないんだな。

(中略)

 会社(松竹)へ入ったら新人っていうのは六人か七人ぐらいだったかな、入ったんですけれど、新人研修というのがあって、社長がね、話をなさったわけね。そのときに松竹で監督になろうと思うのならばシナリオが書けなきゃだめだっておっしゃったのね。それですぐ書いてこいって言われたの。僕は、会社の社長なんてのは、ものすごく偉い人だと思ってたんでね。その人がそういうことを言うんじゃ書かなきゃと思って。シナリオなんてどういうんだかわけがわからないから、とにかくとりあえず二、三冊会社にあったシナリオを持ってきて読んで、ああこういうふうに書くのかと思って一つ書いて持っていったんですよ。そうしたら一緒に入った人で書いたのは僕だけだったんですね(一同笑)。

 みんな図々しいんだよなと思って。僕は、そういう意味では世渡りに怯えてた部分があるのかな。幼かったのかな。それで書いていったんですね。そうしたら、あいつはまぁシナリオ書ける奴らしいってことになったのね。で、入社した次の年に新人監督が一人出ることになったときにですね、お前脚本手伝えってことになりましてね。それで脚本書いたんですよ。で、それからときどきこう脚本書かないかって言われて書いてね。そうすると三万ぐらいくれたのかな、そんなにはくれなかったかな? でもとにかく昔ですからね。月給六千円、初任給六千円でしたからね。それはさすがにその頃でも食べていけなかったですよ。それでアパート代払ってあとは会社にいたようなもんだな。残業してね。寝泊まりもみんな会社もちで、食べるのもね食券もらって食べに行ったりね。そうして暮らしてたでしょう。そうすると助監督は月給払ってるんだから、脚本書いたって正規の脚本料なんか払う義理はないって言われるわけね。でも少しでしたけれども払ってくれてね。そういうことでだんだん脚本書いて、テレビの脚本も少し書かせてもらったりして」(つづく

 

以上、「あかね」第31号(共立女子短期大学国文研究室)より引用。

月日の残像(新潮文庫)

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