私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

山田太一 インタビュー“よき相互依存っていうのかな。人間、一人じゃなんにもできないんですよ”(1985)(2)

山田「(『ふぞろいの林檎たち』〈1983〉では)じゃそれには誰がいいだろうかって。そういう試みは今までなかったですよね。既成のある一曲を使うってことは、僕も今までに何度もやってきてるけど。それで、サザンサザンオールスターズがいいんじゃないかっていう話に、だんだんなってきたのね。で、みんなでサザンの曲を何度も何度も聴いたんですよ。ドラマの中に流すには歌が入っているってことは欠点なんですよね。つまりセリフをしゃべってるときに歌が流れたら、何が何だかわからなくなってしまいますでしょう。だけどサザンは、よく意味がわかんないように歌うでしょう(笑)。とってもいい歌詞なんだけどね。歌詞だけ読むと、とても素敵なんだけど、意味がちょっとわからないように歌ってるから、邪魔にならないだろうって。他の人のは、みんな意味がわかっちゃうのね、ユーミンでも、誰でも。意味がわかっちゃうと、ドラマの中にその意味がすごくついちゃうでしょう。

(中略)

 で、プロデューサーの方がね、それをどういうふうに入れるかってことでものすごく苦労して、パートⅡのときはそうでもなかったですけど、パートⅠのときにはね、やせちゃいましたよ、そのことに夢中でね(笑)。

(中略)

 それをね、僕にやれったって僕にはできないですよね。つまり、そういう人がいるから素敵なわけね。じゃ、その人が全部のものを作れるかっていうと、やっぱりストーリーだのセリフだのっていうのは、僕が書かなければあの作品はできあがっていかない。僕が書いたからといって、演出家が非常にダサくてね、全然そのタッチがわからない、僕の書いたものを理解してくれない人だったら、またダメだった。また俳優さんもね、ああいう人達がいなかったら、できませんよね。僕らの仕事っていうのは、そういう仕事なんだな。それを面白がるか面白がらないかの問題でね。例えば、「もしもし」って言葉を書く場合、普通に「もしもし」って言うのとね、桃井かおりさんが「もしもし」って言うのとね、樹木希林さんが「もしもし」って言うのとでは、それはもう、全然違いますでしょう。だけど僕はその違いを書けませんよ、シナリオには。どう言えったってわかんないよね、その微妙なニュアンスっていうのは。

(中略)

 結局は誰か(俳優)に頼まなければならないわけでしょう。だから誰に頼むか考えないで書くっていうのはおかしいんですよね。僕の場合には、あるストーリーを考えつく、で、誰にやってもらおうかな、この人どうかなっていうのをいくつか考えるわけね。そしてプロデューサーと話をするわけですよ。「僕はこういうストーリーを書きたい。でこれには何人かの俳優さんがほしいんだけれど、こういう性格の人こういう性格の人こういう性格の人。で、この人はこの人に頼みたい、この人はこの人に、ここらへんはどう考えてもいないからオーディションやりたい」とかっていうふうにね。するとプロデューサーがね、「いやあ、これはあの俳優さんじゃなくて、こういう人がいるからどうだろう」ってなことを言うときもあるわけです。そうするとその人に会うわけですよ。で、どっちがいいかまた別れてから議論するわけね。それで決まっていくわけです。段々に。中には脚本を見せてくれなければ受けられないっていう俳優さんが、いるわけです。だけど僕の場合には脚本がないわけね。原作の小説がある場合にはそれでいいんだけど、僕は脚色はしませんので、そうすると困っちゃうわけですよ。それで、しょうがないのでその俳優さんに会うわけね。それで、実は僕はこういうものを書こうかと思う。で、こういう役を、あなたしかいないんじゃないかと思って書いてるんですが、やってくれませんかって言うわけね。ま、向こうもね、会うってなればね、聞いてからいやだっていうのはなかなか言いにくいわけ(笑)。会ってから断るっていうのもまれにあるけどね。でもそれはもっといい役が他でできちゃってね、天秤にかけて、体よく口実作ってね、行っちゃうなんていうことは二、三ありましたけどね。

(中略)

 (『ふぞろい』では)僕は太った、それからあんまり顔の綺麗じゃない子がいいって言って、ずいぶん会ったんだけど、どうもみんな綺麗なんだな。それで、顔の不自由な人っていうタイトルつけてオーディションやったわけですよ。それでもねどうしてこの子顔が不自由なんだと思うくらい、かわいい子が多いんだな。中島唱子さんだってかわいいけどね。ただ、太ってたでしょ。で、この子いいなって思ったわけ。あれは割合すぐ決ったな。

(中略)

 慎吾柳沢慎吾くんはちょっと出てたけどね、普通のオーディションとして彼も応募してきたわけですよ。それで、あと一人の子とかなり議論になったんだけど、慎吾っていう子は少し変わっているんじゃないかって(笑)。そういう意見がずいぶん出てね。僕の話は割合リアルっぽい話だから、あんな子が出ると壊しちゃうんじゃないかって。でも、僕は迷わなかったね。この子は絶対いい、ちょっとリアルな芝居の中に入れてもできると思ったね。ただ、あの子はオーディションのときははりきってるから変な動きをするじゃない。だから、いやあ違うんじゃないかっていう意見がずいぶんあったんですけど、僕は全然心配しなかったね。これは大丈夫だって。——そうやって作っていくわけですね。その面白さを面白がらないと、ダメよね」(つづく

 

以上、「あかね」第31号(共立女子短期大学国文研究室)より引用。。

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