私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

足立正生 × 平井有太 トークショー レポート・『ビオクラシー 福島に、すでにある』(3)

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【福島について (2)】

足立「何も生まれないように、絆で結びましょうとか言ってる。自分たちの生きざまを恨みでなく共有しましょうと言ったとき、日本人は逃げるから。それが生産されてくるのを待つしかない。子どもみたいな日本人だから、行政システムを強固にしても壊していけるんじゃないかな。最前線を福島の人は背負わされてる。新しいものは必ず生まれてくる」

平井「このままじゃ自分は止められないと。ずっと線量を測ってると、安全とは言えない。そのことはメディアには出ないし、風評被害になるので福島の人も言わないでくれと。行政は測らなくなって、測っても安全な数値しか出せない」

足立「実体との誤差がひどいよね」

平井「測ってれば止めろと。その中でつづけるのは苦労するけど。ニュースにならないので。

 200万人にひとりという甲状腺がんが、200人を越えてる。行政は関係ないと。チェルノブイリを見てても、7、8年後に病気が出てくる。いまは狭間に置かれてて、何もなければいいけど、何かあったときに数値が基準になればいい。みなさん青息吐息でつづけていて、もうちょっと支援がほしいなと」

足立「(福島の)ドキュメントで2本、しっかりしてると思ったのは『遺言』(2014)という。酪農をやってて行きづまって“原発さえなければ”と厩舎の壁に書いてひもを結んで自殺した人がいて、その苦悩、周りの人がどう受けとめるかを描いてる。素晴らしかったです。

 もうひとつ、『大地を受け継ぐ』(2016)。作物が売れないので、農家のお父さんがキャベツ畑の脇で首吊って死んでた。息子が引き受けて、せつせつと話してる。じんと胸にこたえるものがありました」 

 

 震災後に足立監督は「ずいぶん撮って回ったけど」映像がダメになってしまったという。カメラマンは監督に怒られると思って失踪。

 

足立「海外出張中も(映画を)つくってて、イスラエル空爆でバーンとやられて(フィルムが)ビルごとなくなった。それに比べたら…(一同笑)。“寛容”がテーマだけど、イスラエルを許してるわけじゃない(笑)」 

【その他の発言】

足立「有太さんの保育園時代の同級生に会ったら、周りと溶け合わず、意地悪されても平気だったと。両親が民主的で放任されてて、むき出しの生き方が可能で、解放より自由、その実体があるかと少年時代から学んできた人なんじゃないかというのがおれの解釈。この本は消去法を拒否してるのかなって。

 (『ビオグラシー』〈サンクチュアリ出版〉では)世界平和主義をやるぜって言ってて、笹川財団みたいで。それをもうちょっと平井くん流に引き寄せて…」

平井「書いてありました?」

足立「あとがきにあるよ」

 

 トークが行われたのは参院選の2日前。

 

足立「なんか世論調査によると、3分の2は自民党? そのために安倍(安倍晋三)はなりふり構わずやってて、あんなでたらめなやつがやれば日本は壊れるに決まってるから、大勝利すればいい(笑)。アメリカではトランプが勝利して、アメリカも日本も壊れて、アメリカも日本も壊れて、新しいものが生まれる。おれたちもやりたいようにできる。(東京オリンピックの)選手村は福島第一の前につくればいい。被曝の影響で世界記録も出るよ(一同笑)。マニュプレートというか、電通がやってることと安倍さんが言ってることは同じですね」

 

足立「私は北九州の八幡高校の出身で、後輩に舛添(舛添要一)がいて、いまはけちさ加減が…。同窓会が選挙マシーンになってて、その中で舛添を落とす会というのをつくって(笑)。でも自民と公民が乗っちゃったから、そこで騒いでも何の効力もないと」

 

足立「ゲリラというのは、中に必ずスパイが入ってる。仕方のないことで。ぼくもゲリラやってますけど口舌の徒で、飛行機盗んだりとかしなかったですよ」

平井「そこに若松(若松孝二)さんがお餅持ってきたとか」

足立「 “おれは心洗われる”って言ってくる。聞こえがいい。純真な青年だなって思って。でも裏があって、おれの女房に離婚届にサインもらってくれって言われてて、さすがに言えないから何度も来てた(笑)。出奔して無理って言えば、離婚は成立する。それでうまく落ち着いたらしい。ゲリラやってても、狭い世界にいたんですよ。

 アラブにいるとオイルダラーの援助が一国の予算くらい集まる。現物支給もあって。

 アフリカの解放にはパレスチナ革命が貢献しましたよ」

 

足立「(新作映画『断食芸人』〈2016〉に合わせて)全国でトークしてて。私の映画はずいぶんこけてて、おれの映画だからかなと思ったら、映画総体がよくない。苦戦中の苦戦で。外国ではもてちゃう。でも(海外の)映画祭に出しても資金回収にならない。配給(会社)と契約があって、上がる収益はわずか。

 (ドキュメンタリーとは異なり)私の映画はブラックユーモアですので、暇な人は見てください」