私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

妄想族日誌(2016年5月)

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楽しいことがなくても、退屈で、寂しくてしょうがなくても、一日を生きなくちゃいけないと思った」(野沢尚『青い鳥』〈幻冬舎文庫〉)

 

 5月某日

 GWの最中に、作曲家・冨田勲が逝去。

 NHKBSプレミアムにて追悼番組『宇宙を奏でた作曲家~冨田勲 84年の軌跡~』を見ていたら、2012年の大作「イーハトーブ交響曲」が流れる。その導入部がどうも知っているメロディーで、一瞬考えて映画『風の又三郎 ガラスのマント』(1989)の主題曲を思い出した。同じ作曲者で、同じ宮澤賢治というモチーフだからだけれど、ちょっと感銘。この『風の又三郎』映画版はあまりおもしろくないのだが、風を象徴するかのような主題曲は素晴らしい。原由子「あじさいのうた」のイントロを想起するようないかにも80年代っぽいサウンドだったのが、「イーハトーブ交響曲」ではその処理を抑えて代わりに初音ミクを起用し、夢幻的な味を醸していた。

 テレビ『マイティジャック』(1968)や手塚治虫関連作品も印象深い。手塚原作『ビッグX』の主題歌は、作詞が谷川俊太郎で作曲が冨田という、偉大なふたりのコラボレーション。「立ち上がれ ビッグX〜」の軽やかで小気味いいメロディーがいまも頭で鳴り響く。

イーハトーヴ交響曲

イーハトーヴ交響曲

 

 

 5月某日

 ちょっと前に相次いで発売された欅坂46サイレントマジョリティー」と乃木坂46ハルジオンが咲く頃」。評論家の宇野常寛氏やネットのファンなどみな軒並み前者(の歌詞)を絶賛しており、確かに前者は力作だと思うけれども、筆者が聞き惚れたのは後者。

 男性の視点で理想化された優しい女性像を描く歌詞に加えて、流麗なメロディーも繊細な編曲も素晴らしい。卒業式で唄うなら「365日の紙飛行機」が選ばれるかもしれないが、個人的には断然「ハルジオン」を唄ってほしい。 

 Mステで初めて聴いたときもちょっといいと思ったけれども、聴き込むほどによくなり、このところは通勤電車で連日愛聴。

 

ハルジオンが

 雨に打たれて

 それでもまだ青空見上げるように

 つらい時も変わらぬまま

 君は君の姿勢で

 運命 受け入れてた

 地に根を張る強さで…」(「ハルジオンが咲く頃」)

ハルジオンが咲く頃(Type-A)(DVD付)

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 5月某日

 テレビ『コントレール 罪と恋』(2016)を最近見ていて、演出と美術セットの気合いの入り方に見惚れる。石田ゆり子井浦新をはじめ、原田泰造野際陽子村田雄浩堀内敬子など演技陣もぜいたくな布陣で、特に円熟した野際の若さ・怖さには感嘆。メインのふたりが「赤いスイートピー」を唄ったり、公園でデートしたりする場面の映像美に、つくり手のさりげないこだわりを感じさせる。結局この作品は終盤失速してしまうのだが、トータルではそこそこ愉しめたと思う。

 脚本はベテラン・大石静。大石はエッセイやインタビューを読んでいると結構面白いのに、本業のシナリオとなるとどうも…ということが多い。発想はよくとも、人物造形がべたな紋切り型になってしまうというか、盛り上げる展開が不得手というか。

コントレール~罪と恋~ DVD-BOX

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 他に「金曜ロードSHOW!」にて、映画『ソロモンの偽証』(2015)の前後編を2週連続で見る。中学生たちの裁判を描くという地味な題材でメジャー映画を撮った快挙、練られた映像設計、演技陣の奮闘を見るに、細部の不満には目をつぶろう。ただ虚偽の証言を映像化したら、いけないとは思う(見ている側は、映画内の真実だと思い込んでしまうから)。 

 

 5月某日

 先述の宇野常寛氏が、数か月前にラジオで生涯のベスト映画3本として、『アラビアのロレンス』(1962)、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988)、『機動警察パトレイバー2 the movie』(1993)を挙げていた。

 それを思い出して、自分のベスト3を考えてみた。『仮面ライダーW』(2009)ふうに言えば、これで決まりだ!

 

 『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(1985)

マイライフ・アズ・ア・ドッグ Blu-ray

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 『ドラえもん のび太と鉄人兵団』(1986)

映画ドラえもん のび太と鉄人兵団 [DVD]

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 『がんばっていきまっしょい』(1998)  

がんばっていきまっしょい [DVD]

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 5月某日

 『絶望名人カフカの人生論』(新潮文庫)や『絶望読書』(飛鳥新社)の著者・頭木弘樹氏にお目にかかる機会があり、向田邦子山田太一の話で盛り上がる。頭木氏の話は、入院中に同室の患者たちがみなドストエフスキーを読み出して(ビジネス書と新聞しか読まなかったおじさんまで)人は常に物語を求めていると思ったこと、カフカ『変身』が日本では介護する人に読まれていて作品は作者の意図を越えて浸透すること、難しい本は朗読で聴くと頭に入りやすいというアドバイスなど実に面白かった。頭木氏はカフカゲーテの他に落語や古今の映画にも造詣が深く、話術もとても巧みだった。

絶望読書――苦悩の時期、私を救った本

絶望読書――苦悩の時期、私を救った本

 
絶望名人カフカの人生論 (新潮文庫)

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 5月某日

 人の心に嵐巻き起こして

 あなたいったい

 何を考えているんですか