私の中の見えない炎

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ジャン・ユンカーマン × 小栗康平 × 荒井晴彦 × 松井良彦 × 堀切さとみ × 野中章弘 トークショー レポート・『日本国憲法』(5)

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【飯島敏宏監督の発言】

 司会の小中和哉監督は、テレビ『ウルトラマンダイナ』(1998)や『獣電戦隊キョウリュウジャー』(2013)、映画『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』(2006)といった特撮ヒーロー作品を撮っている。

 

小中「ヒーローものは巨大な暴力をふるうヒーローをかっこよく描く。映画で反戦を描くのと矛盾します。ヒーローを肯定する社会が戦争を根絶できるのかという根源論もある」

松井「ぼくが暴力を扱うのは、愛情が嫉妬の果てに暴力になるという人間の気持ちの変遷をたどっているのであって、別にぼくが暴力を好きなんじゃなくて。ただサム・ペキンパー監督は暴力美をつくられた方で、暴力が美しく見えちゃう、暴力に心揺さぶられる、そういうことはあると思いますね。普段の生活では、暴力はダメでせいぜい口論だけ(笑)」

荒井「暴力を(自作で)扱ったことはない。暴力ふるう人は大嫌いで(一同笑)。学生のときはゲバルトをやって、正しい暴力があると思っていて、向こうがそうならこっちもみんなでやればと…」

 

 ここで会場に来られていた、飯島敏宏監督が発言した。飯島監督は『ウルトラQ』(1966)や『ウルトラマン』(1966)、『ウルトラマンマックス』(2005)の脚本・監督、『金曜日の妻たちへ』シリーズの演出・プロデュースを手がけた巨匠(バルタン星人の生みの親である)。

 

飯島「いま落ち込んでいて。50年前、ウルトラマンに何と言わせたか。“平和” ですよ、あの声で。決まり文句として言ってるのは、過度の経済活動は戦争を生むと。50年経って、それを見た人がいまの日本の中心にいて。

 『ウルトラQ』の「2020年の挑戦」は美しい緑の地球から(人間を)拉致するという(2020年から来た宇宙人を)反面教師のつもりで描いて。2020年ももう来ますからね」 

飯島円谷プロは不思議なところで、初心に帰るためにぼくにときどき必ず仕事を持ってくる。2005年に『ウルトラマンマックス』(「ようこそ、地球へ!」)を撮って、CGをやりたくてたくさん出して戦わせて。せめてバルタンの子どもに希望を託して、銅鐸を取りに行って、無数のウルトラマンとバルタンが戦ってるところで銅鐸を鳴らして、聴いてるうちに戦いを止める。これが最近作だけど、ちっとも反響がない。(いまの作品は)いろんなおもちゃを売らなくちゃいけなくて、もうぼくは頼まれても撮れない。

 情けない議論で申しわけない。中国が尖閣へ来たらどうするって言われると、ぼくは判らない。彼(金子修介氏)の言った意見に近くて、自衛隊は認めると。でも何でアメリカといっしょに戦う必要があるのか、その答えをきょう聞きに来ました。(第1作の)『ウルトラマン』では藤田進に(宇宙人と)話し合ったら?と言わせたけど。みんな仕事がなくなると怖いから声を上げられない。

 ぼくは昭和7年生まれで、戦争は外へ行ってやると思ってたけど、中学1年で東京大空襲に遭って戦争って中へ来ちゃうんだと。3回ともぼくは生き延びたけど怖かった。外地へ行ってやるんじゃなくて、来ちゃった。人間が来ないで機械が来ちゃう」 

【その他の発言】

松井「小泉(小泉純一郎)さんは燃料補給をやりましたけど、戦争はやってない。お金を出しただけ。いろいろと本を読んで思ったことですけど、第2次大戦ではあれだけのことをやってつぶされた。そこでずっと戦争をしないということで信頼を得てきた。集団的自衛権はいらんと思うけど。専守防衛ですね」

ジャン「報道のタブーは、日本よりアメリカはもっとひどい。アメリカでは、広島についてはこんなこと知らなかったという反応が多い。いまでもアメリカ人の多くは原爆は正しかったと信じ込んでいます。広島や沖縄の実態が判らないから。『沖縄 うりずんの雨』(2015)はその壁にぶつかっていて、アメリカでは劇場公開が無理で自主上映とインターネット。あまりには軍国主義で、疑問を持っても通用しなくて取り上げられない。良心的な人もたくさんいて、その人たちに届けたいですね。

 近代科学は原子力まで行って、カメラもつくってデジタル化もした。近代兵器で殺戮を犯す一方でカメラをつくったという両面がありますね」

荒井「小栗さんとは30年ぶり。『キューポラのある街』(1962)では帰国運動が出てきて、小栗さんの師匠の浦山(浦山桐郎)さんの映画ですが、あの人たちが脱北するという映画を撮っていただきたい(笑)」

野中「日本には既成事実追認主義、現実万能主義がある。われわれが立っているのは個の立場。個でどこまで踏ん張れるか。個として自立していきたいですね」

 

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