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私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

中島丈博 × 浅田次郎 × 杉田成道 × 内山聖子 × 十川誠志 × 林宏司 × 鈴木宣幸 トークショー レポート(3)

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【未映像化の中島脚本 (2)】

 中島丈博脚本『新・御宿かわせみ』(2013)の続編頓挫の経緯が、客席にいた黛りんたろう監督によって説明された。

  主人公の女性の夫が戦で消息不明になって、その夫が生きているという情報がもたらされる。主人公が東北へ行くと、夫が記憶喪失になっていた。そこで前編が終わりで、後編は夫が江戸に来るけれども記憶はないままで、東北で同居していた女も来て葛藤が生まれる。設定を原作者に説明したら、わかりました、やってくださいという返事だった。中島氏がシノプシスを書き、そのあたりから反応がなくなった。出版社に訊くと、お読みになっていますという。それから4週間くらいで第一稿を持っていったら、出版社を通してこれは困ると言われて、結果的にドラマはつぶれてしまった。黛氏らは言葉を尽くして説明したが、その場に中島先生はいなかった。黛氏は、シノプシスの段階ではよくても、できあがった読んでみるとちょっと、ということらしい。

 

中島「あの場合、脚本料はいただいたので、中止にした杉田さんの判断は正しかったと思います(一同笑)」

金谷「つまらない原作を書いている人に限って口出しするという説もあります(一同笑)」

浅田「ダメな作家のほうがNOを出すというのは判る気がします」

 

NHK講談社 (1)】

 辻村深月『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』(講談社文庫)のドラマ版は、クランクイン当日に中止が決まり、NHK講談社との係争に発展。

 

鈴木「私が呼ばれたのは、NHKとの裁判があったからですね。脚本をNHKからいただいて、辻村さんが、このまま映像化してほしくないと。講談社で会議をやって、原作者には同一性保持権があり、どうしてもやるならば拒否できると。

 映像化はせんみつで、1000回のうち3つくらい。脚本まで行ったことはあまりなくて、具体化する話があまりないのに真剣にするのはな。映像制作をやっている方に不信感があります。プロデューサーにヒロインの名前を変えてくれと言われて、アカネって名前は古いからカオルがいいと。それ、何が違うのかな(一同笑)」

中島「係争の場合、契約がなくNHKが見切り発車で進めていたということでしたが」

鈴木「映像化したいという話がNHKから来て、辻村さんもありがたい話だと。電話しまして、口約束だけど脚本の開発がOKで、映像化全体の許諾をしたわけではないです」

中島「一方でセットを建て込んだり、キャスティングを決めたりしていた」

鈴木「1月25日にNHKさんから、2月クランクインですと。その段階では脚本を話し合っていて、信頼関係がない」

中島「どういうところが厭だったんだろう。女性の方だから、感覚的な嫌悪感とか。

 揉める原作者は、女性に多い。女性蔑視かもしれないけど、若い女性の原作者は作品をわが子みたいに愛しすぎて、傷つけられたみたいな被害感を持って、トラブルに発展する(会場は引き気味)」

十川「男性女性はさておき、ここ10年くらい出版不況に少子化もあって、漫画は部数も落ちています。出版社は映像化に相当必死で、原作を売るために映像化するのだと。われわれの前で、映像化は原作の宣伝だと、そこまで言う人もいます。一字一句変えるなという発想になりやすい」

中島「原作がなければ企画が通らないという情況で言いたくないですが、原作者に上から目線でやられてるという気分はないですか」

「その契約はいかがなものかと思いますが、でも脚本が出来てから映像化するかどうか決めるという話だと、それを受ける脚本家は限られてきて、新人の慣れていない方しかできなくなってくる。脚本化するのは大変な作業で」

中島「全くその通り。原作者の言うことを聞くのはつまらない脚本家で、そうなると実力のない脚本家へ行く。するとろくな映画化、テレビ化ができない。原作者が脚本を許さないと言ったら現場は壊滅する。映像化は成立しません。いかがでしょうか」

鈴木「テーマが変わってしまうのが問題で、今回は母と娘の確執で、ふたりが会わないということが大事。でも映像としては、第1回でそういうシーンがほしいと。テーマの問題で、原作者に会いたいと。ただ辻村先生は出産直後で、どうしても難しい。またプロデューサーが初めて原作つきを手がける方で、何度か書簡のやりとりをして、女優4人の群像劇、アンサンブルをやりたいと。結局テーマが変わってしまっている。これは不幸なことで」

浅田「原作料をもらってもいないのに、完成しちゃったことがあります。NHKです。出来上がった報告もなくて、釧路でサイン会をしていたら、NHK釧路の人が来てカメラ回して、おめでとうございますと。写真を見たら打ち上げの写真で、軍服着てて、どの原作か判って、至急問い合わせた。契約書もなく、原作料をふっかけてやろうかと思ったけど、もしおれがそう言ったらどうするんだろう。体質があるんじゃないかな」(つづく)  

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (講談社文庫)