私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

大石静 × 尾崎将也 × 熊谷真実 × 中園ミホ × 羽原大介 トークショー レポート(2)

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【朝ドラについて (2)】

大石「(セット縛りのせいで)恋愛も自宅恋愛。キスシーンもセット。道(のセット)はいつもあるんで、少し飾りつけを変えて違う道に。私は20年前ですけど(『ふたりっ子』〈1996〉)、いまと同じですね。

 言葉狩りもあのころから激しくなってきた。“豆腐屋なんかに生まれて”っていうのはダメで“豆腐屋に生まれて”にしてくれと。豆腐屋さんの組合も協賛してくれてるし。でも人間を深く描くにはこの台詞が必要だと思って、戦って、妥協したり突破したり。自主規制は民放でも同じことが起きています」

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尾崎「脚本家より俳優さんのほうが大変かな。朝ドラはセットひとつ建てると、そこのシーンをまとめて撮る。(主人公が)病院勤めで食堂のシーンがときどきあるけど、1日で全部撮る。放送は1か月だけどそのシーンを1日で撮って、1日で16食を食べたりすると堀北真希さんが言ってました」

熊谷「私は若くて、食事シーンが好きで太ってました。小道具さんも会へ来ていて、“よく食べたね”って。会では毎回同じ話です(笑)」

 

【脚本家の立場】

尾崎「脚本家は毎日こもって書くけど、俳優さんは毎日共同作業していますよね。連帯感は強いですか」

熊谷「もう家族ですね。脚本で疑似恋愛から恋愛しちゃったり、脚本如何で私たちの人生まで変えられてしまう。家族になったり、大嫌いになったり、それをこちらの方たちが全部握っていると(笑)」

尾崎「その割りに、ないがしろにされてますよね。打ち上げで居場所がないと、大石さんが控え室で言われてました」

大石「スタッフの方たちは雨の日も風の日もいっしょで、苦しい撮影をともにした。私たちは自宅の書斎でやってて、苦しさもありますけど。打ち上げで“あんなことあったね”とか言われても判らない。顔合わせで会っても、私の顔は忘れてる。なんか素人が紛れ込んでるね、とか。大切にしてくれと思ってるわけではないけど。最初に脚本家です、覚えててくださいって言っておくと、挨拶ぐらいしてくれる」

羽原「覚えててくださいなんて、大石さんだから言える」

中園「私、人払いされました。おばさん、向こうに行っててって。そのときは帰りました(一同笑)」

 

【制約や無茶な要求】

 朝ドラ以外の場であった制約や要求が語られた。

 

中園「若い人たちは現場で恋が生まれる。ある連ドラの主人公男女がうまくいっちゃって、もっと幸せにしてって言われて。でも途中で別れちゃって、同じ画面は厭って言われる。吹き替えでうまくやりましたけど。

 ある女優さんが(特定の人と)いっしょに出たくないって言ってますと呼びつけられて、パジャマにコート羽織って行ったら、おばさん向こう行ってって言われて、死んでやろうと思いました(一同笑)」

尾崎「このふたりをいっしょにしないでくれって言われたときは、電話で処理しました。仲悪くなくてもスケジュールが合わないとか。2時間ドラマで主役と準主役が合うのは3時間だけで、3時間で撮れる分量にして、あとは電話で」

熊谷「私は舞台が多いんですけど、連ドラはアクシデントがあると変えていかなきゃいけなくて大変なんですね」

大石「京香(鈴木京香)さんと長谷川(長谷川博己)くんは『セカンドバージン』(2010)で寝たり起きたりしてるうちに仲良くなって。私のおかげですね(笑)。

 もしいっしょに出たくないって人がチームにいたら、ダメ、プロじゃないって私言うと思う。角が立つって言うかもしれないけど、断固戦うな」

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中園「私はしょっちゅう締め切りをぶっちぎっていますし、きょうも…。それで現場が進むなら折れますね。ちゃんと締め切り守ってる方に伺いたい」

羽原「○○(の制作した作品)では交通事故が起こせない。製薬会社だと毒殺はダメ。人が殺すときは、首を絞めるか突き落とすか。不慮の事故じゃないと」

中園「材木が倒れてくるとか(一同笑)」

大石「怒ってカレーをぶっかけるシーンがあったら、ペンキにしてくれと。でも食べているカレーをかけるのであって、ペンキなんてどこにあるんだと(笑)。

 スポンサーがお金出してくれるのはありがたいけど、いまはスポンサーのほうだけ向いてる。クリエイターはどうでもいいのかな。私たちが戦わなきゃいけないけど、突っ張って仕事がなくなっちゃうと。その狭間で揺れている。でもプロデューサーに“泣いてくれ”って言われて」

 

【書く速度】

中園「尾崎さんは直しがうまい。こういう脚本家がいると困る。ある女優さんにこんなバカな女できないって言われて、ひと晩で直すので、すごく速い人が来るって。尾崎さんが来た」

尾崎ワープロのオアシスで、フロッピーが使い回せました」

中園「(分担して)尾崎さんが書いてて、当時の私はすごくヘビースモーカーで、“吸っていいですか”って言ったら首振られてそれで外行ったり。“寒くないですか”って言ったり、そんなうちに30分(の原稿)ができてて、“あともお願いできますか”(一同笑)」

大石「“寒くないですか”なんて愉しそうね。私そんなことないわ」

尾崎「書くのは遅くなっています。新人はどこが悪いか判らないから書いちゃう。いまは直しをどんどん思いつく」

中園「いま遅くなってるって言われて嬉しい(一同笑)。(当時は)プロデューサーが部屋を出てくと、すぐ書いてもう止まらない」

尾崎「いまはツイッターもあるし」

中園「やった!(一同笑)」

羽原「必要な情報を最小限でって思うと、好き勝手書いてたときより遅くなっています」

大石「老化現象で遅くなった。あとは自分に厳しくなって、ここはダメだって直してると遅くなる。若いときはよく誉められて、でも最近はこれくらいできて当たり前、このくらいじゃダメって思うと遅くなりますね」(つづく)