私の中の見えない炎

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根岸吉太郎監督 × 松本花奈 トークショー レポート・『サイドカーに犬』(2)

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【キャストと撮影現場 (2)】

松本「竹内(竹内結子)さんにはすごく優しく接していただいて。朝から晩までいっしょにやっていて。終盤には手づくりの味噌汁をつくってきてくださったり、薫ちゃんみたいに私も竹内さんが好きになっていった印象です。

 (弟役の)谷山(谷山毅)くんとは、彼が中学生のときに会って、めっちゃ背が高くて誰だか判らなくなっていて、向こうがお兄ちゃんでした。撮影はアットホームでした」

 

 『サイドカーに犬』(2007)では、蠢く大人たちに薫はずっととまどっているが、それはもちろん演技で、松本氏は「台本ですべて(情況が)判っていました」という。

 メインの舞台となるアパートは実にリアルで、セットとは思えないほど。

 

根岸「アパートのセットは狭くて、居場所がない。普通はセットをばらして、部屋の外へ出て撮ることが多いけど、あのときはそうでなくてロケみたいに撮ってて。密着して撮ってました。

 少ない人数で撮りたくて。長いのが嫌いなのもあるけど、少ない人数にあこがれてて。でも始めると人が集まってくる。いつも15人くらいがいいって言ってるけど、みんな助手とか連れてきて。スタッフの顔合わせでは、こんなにいるんだって。この映画は少人数で撮るのに合ってるかな、と。

 エリック・ロメールの作品に気分的に近くて、ロメールが8人で撮ってるとか、ああいいなといつも思ってる」

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【若い人の映画について】

 松本氏は、映画『鈴木先生』(2013)や『バケモノの子』(2015)などに出演するかたわら、監督した『真夏の夢』(2014)により映画甲子園(高校生映画コンクール)の最優秀作品賞を取った。『脱脱脱脱17』(2015)ではゆうばり国際ファンタスティック映画祭の審査員特別賞を受賞。

 

松本「いちばん最初はカメラや機材に興味があって、中学生くらいでカメラをいじるようになって。でもそういうのが好きな友だちがいなくて。話も考えるようになって。高校生になって、そういう団体に入って。映画を3本撮って、ミュージックビデオも撮りました。『脱脱脱脱』は108分です」

 

 根岸監督は東北芸術工科大学の学長を務めている。

 

根岸「(学生に)作品を見せてもらうと、かなりクオリティがある。デジタルになると、フィルムと違って材料費もかからないし、ある程度映っちゃう。容易になってるけど、作品の本質は何か考えなきゃいけない。それを見守らなきゃいけない。デジタルだと他のメディアとクロスしていて、CGとも密接な関係がある。中学生くらいから映画づくりをするようになって、そういうところから、ぼくらが思ってるのと違う言語の映画が出てくるかなって期待してる」

松本「映画が好きで、元気がないときに映画を見て励まされることが多くて。見てもらった人に何か与えられるように。携帯とかでも撮れちゃう中で、自分なりの何かを出していければいいなって。人同士のコミュニケーションは、出る側で学んだことが生かせてるかなって思いますね」

根岸「自分が中学生くらいで映画を見ていて、スクリーンを見ている至福の時間があって。それをつくる人がいる、そのときの衝撃から始まっている。ぼくらが助監督のときはいろんな現場を見たけど、監督になってからは自分のだけ。でも俳優さんはすごく得だと思うんだけど、いろんな現場を見て経験できるのは大きいですね。

 こうやって話してると、そちらの席(観客席)で見ていたのを思い出します。ここで蓄えたものがいまの自分をつくってる。まさか、こちらに立つとは思わなかった。みなさんもフィルムセンターに通ってください」

 

 松本氏は、この春から大学に進学するという。

 

松本「私と長嶋(長嶋有)さんは家が近くて、たくさんお会いして、大学の推薦書も長嶋さんに書いていただきました(笑)。1年くらい前に長嶋さんのおうちに行かせていただく機会があって、いっしょに(『サイドカーに犬』を)見ました。愉しかったです(笑)」

根岸「大学ではどういう勉強を?」

松本「大学は映像系ではなくて、幅広く学べるところに。不利にならないか心配です」

根岸「賢明な人ですね。ちゃんとしすぎているかも。普段は教養を身につけてください。映像を撮る情熱は、また違うので。がんばってください」

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