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沢井桂子 × 中野昭慶 トークショー レポート・『怪獣大戦争』(3)

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【『怪獣大戦争』の想い出 (2)】

中野「特撮は外へ行けないから、ぼくはチーフ(チーフ助監督)になったら、最後にお疲れロケを入れて。用もないのにロケ。斜面の場面もセットで撮れるけど、御殿場へ行って。

 円盤のシーンは、合成の関係で(本編の)ロケの立ち会いに。逃げる群衆にも立ち会った。

 モブシーンはゴジラにつきもので、いまみたいにファンがいない。いまは喜んで出る人がいるけど、当時はいきなり(現場へ)行って、そのへんの人に頼んで。ある程度の人数は準備するけど、2〜300人もいない」

沢井「笑ってる人もいましたね」

中野「中年のおばさんが笑ってる。でも無理やりお願いしてるからね」

沢井「怪獣が出てきて、私はイメージであーとかうーとか。悩んでいたら、久保(久保明)さんは“大きいのが出てきたら、あーじゃなくて、オーバーっていうくらいオーバーにやったほうがいいですよ”って。私は(作品を見直して)もっとオーバーにやったほうがよかったかなって。このへんに出てきますって言われて、びっくりしたり泣いたり」

 

 中野氏は、本多猪四郎監督作の特撮助監督を多数務め、特技監督昇進後は『メカゴジラの逆襲』(1975)にて本多監督と組んだ。

 

中野「日常の延長に芝居がないといけないっていうのが本多演出の極意で演出姿勢。女優さんがお風呂入ってるところに怪獣が来るとか。

 本多さんの演出論の基本は、自然風景を背景にできる芸術は映画だけだ、と。『青い真珠』(1951)は、海女さんの生活をセミドキュメンタリーで描いてる。そして、それを照れずにやる。“これから不協和音を流すけど、止めないでください”とか。あんなの他の人なら笑うけど、本多演出の真骨頂。

 仕上がると完成試写があって、全員で見る。ぼくは完成するまで何回も見てて、完成するともういいよってところも。でもスタッフの意見を聞くから、見るようにしてました。

 『怪獣大戦争』(1965)のころから、怪獣映画入るぞ、これを東宝のドル箱にしよう。だから特撮を年6本にしてくれ、と。円谷さんは、こんなこと言ってきたぞ、もうひとり(特技監督を)立てるしかない。いちばんつき合いの長い有川さんにやってもらおう。すごいことになると思ったら、1年1本になって、何年に1本になっちゃった。

 昭和40年は、映画が斜陽になってきて、東宝も映画つくるのは止めようかって気運も出てきた。関西商人だからね。『怪獣大戦争』は、もうゴジラはいいと言ってた連中の口を封じさせた作品。そこで特撮を絡ませれば(客が)入るぞ、と。でも、そう甘くはなかった。その後また下がってきて、でも止める気ないのが友幸(田中友幸)さん。低予算ならいいよって言われて、チャンピオン祭りのシリーズが始まる。『メカゴジラの逆襲』で止めたけど、その後は84ゴジラ(『ゴジラ』〈1984〉)までああでもない、こうでもないと。

 『大戦争』はターニングポイントになった作品。やはりゴジラには役者さんも必要で、役者さんのファンも(映画館に)来てくれる。ゴジラがいるから役者はいらないって人もいたけど、そんなことない。沢井さんがゴジラを復活させたとも言える(一同笑)」

沢井「怪獣さん、それぞれがいいですね。いろんな動きして、気持ちがあるんですね。みなさん、怪獣さんが好きなんでしょ(一同笑)。『大戦争』の話すると、いろんな人につかまっちゃって。そういうのは年齢と関係ないですね。子どもみたいに(笑)。みなさんも夢を持ちつづけてくださいね」 

【『怪獣大戦争』以後の作品】

沢井「『怪獣大戦争』が終わってちょっとして、『お嫁においで』(1967)ですね。あのときは、加山(加山雄三)さんのファンの方から“ふってくれてありがとう”とか“何でふったんだ”とか手紙が来て。私も台本読んで、え!いまをときめく加山さんをふっちゃうの、もったいないとか(笑)。松山善三さんのホンで、金持ちと貧乏がテーマ。金じゃなく自分で幸せをつかむんだっていう。下町の女の子の強さが出ていて、“私はあなたを選べません” いまでも好きなシーンで、加山さんもいい演技をされていてジーンとしました。加山さんは(黒澤明監督の)『赤ひげ』(1965)に出られた後で、深みが出てますね。黒澤さんはずいぶん厳しくて、泣いたって人の話も聞きますけど。

 そのころから本編を撮ってなくて、テレビが多くなって、原田芳雄さんの『天下の青年』(1967)とか。原田さんが坊っちゃんで、私がマドンナ。時代劇もやったり。みなさんテレビへ行かれて、フリーになったり。淋しかったけど、時代の流れでしたね。

 ゴジラ映画はゴジラが主役で、私たちは言葉は悪いですけど添え物というか。『お嫁においで』では、加山さん、内藤洋子さん、黒沢年雄さんなど出てる人を本多さんが生かしてくださって。いまDVDで見てもテーマ的に古くないし、いい映画だったなって」 

お嫁においで [DVD]

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 ほかに『コント55号 宇宙大冒険』(1970)では小野小町役。

 

沢井コント55号萩本欽一坂上二郎)のお正月映画で、世界の美女を5人集めるっていう(設定)。私は小野小町で、それをコントさんが助けに来る。ちょっと考えられない内容。日数がなくて、大変でした。欽ちゃんは無口な方で、二郎さんがそれを補ってらした。いいコンビでしたね。カルーセル麻紀さんとか見たこともない方もいらして、あれ、男?女? 二郎さんとは後で三船プロの作品でご一緒しました。

 私も映画育ちだから、映画がダメになってるって言われると悲しいですけど、まだ映画のためにがんばる人がいると嬉しいですね。みなさんも応援してください(拍手)」

 

 『怪獣大戦争』では光学合成を手がけた飯塚定雄氏も来場されていた。飯塚氏は最近も、待機中の新作映画『仮面ライダー1号』(2016)の合成に参加されたそうで、「おれはとにかく仕事が好きなんだ」と笑っておられ、こちらは感激。 

 

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