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高山由紀子 × 山下賢章 トークショー レポート・『メカゴジラの逆襲』(3)

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【山下氏と『メカ逆』(2)】

 『メカゴジラの逆襲』(1975)の真船父娘の邸宅は、地球侵略を企むブラックホール第三惑星人のアジトになっている。その古色蒼然とした外観は怪しげで、いかにも悪事が進行していそうである。

 

山下「真船邸は、ぼくが監督に紹介したんですよ。飲み友達の下宿の近くにあれがあって、古びたいい雰囲気だな、監督見てくださいって案内したら、一発OKですよ。何の館かなと思って訊いたら、昔の陸軍病院の跡なんですって。七三一部隊とかが人体実験的なことをやってた」

高山「(ヒロインが改造されるという設定なので)ぴったりですね(笑)」

山下「監督は、“山下くん、ここにしよう”って。外観と玄関に彼女が出てくるところですね。いまは大きな病院になっています。歴史の汚辱は消せ、と…」

 

 『メカ逆』の特撮チームは、この時期の東宝特撮を一手に引き受けていた中野昭慶特技監督が率いる。

 

山下「ぼくは特撮がらみの作品についたことがなくて、でも中野監督の風貌と背の高さは印象に残っていて、勉強のチャンスと思いましたね。

 本多さんと中野さんは毎日夕方に会って、打ち合わせしてる。ぼくもそこに加わって、中野さんに笑われないために勉強しました。中野さんは絵コンテを細かく描いて、それを毎日コピーして、判らないことは中野さんに訊く。素人に専門家が教えるという。中野さんも本多さんを尊敬されてる。“何色ですか”って訊かれて“黄です”って中野さんが言っても、本多さんが赤と言ったら赤になる。中野さんも情熱家ですからね。素人の言い分も聞いてくれました。中野さんと対等に話せるようになったころ、横浜で(本編の)ロケハンがあるって言ったら、“行く行く”って(笑)。特技監督が来ることはあまりなかったらしい。そのくらい大らかな人ですね。

 ぼくの映画『トラブルマン 笑うと殺すゾ』(1979)のファーストカットは、河島英五の足のアップ。それを誉めてくれたのが中野さん。映画は大したことなかったけど(笑)」

高山「私は、『メカゴジラ』のときは中野さんとお話することはなかったんですけど、後で昭和ゴジラの会に呼ばれて、よくお会いしました」

 

 山下監督が後年に撮った『ゴジラvsスペースゴジラ』(1994)は、ゴジラシリーズには珍しく恋愛が重点的に描かれている点は『メカ逆』と共通しているが特に意識はしていなかったという。

 

山下「平成ゴジラの中で考えると、『スペースゴジラ』のような色合いのものもあって当然だと思いましたね。人間がいると恋情もある。桂(藍とも子)もサイボーグ化されても、一ノ瀬(佐々木勝彦)に迫られると、心持ちは変わっていってもおかしくないなと」

本多猪四郎監督の想い出】

高山「冒頭の桂が海辺にいて目が光るっていうのは、本多監督のアイディアです。もたもた説明しないってところを教わりました。

 映画はテンポって言われてた時代で、でも本多監督は“ゴジラはドーンと来るもんだ、それがゴジラ。かっと振り向いて”って。ご自分でゴジラの真似をされた(笑)。にらんだような顔をされて、それはいまでも目に残っています」

山下「監督は現場で思い入れを見せるタイプではなくて、いつも淡々と。でもこういう場所、坂道がいいねとか。ロケハンに行ったのが、真鶴、あとは伊豆。冒頭で桂がすわっている海岸は真鶴海岸。

 ぼくが本多組につくと岡本喜八監督に話したら、“いいね”って。本多監督は技の人で勉強になるから、盗んでこいと。

 セットで、ムガール(睦五郎)と真船さん(平田昭彦)がいて、“メカゴジラの逆襲だ!”と力むシーン。あれを、あした撮ると。台本では3ページくらい、予定としては2日くらいかな、と。監督は、賢章くん、そのころになるとそう呼ばれてて、“このセットの中に移動のレールを通し、朝一番にL字型にセッティングしてくれ”と。キャメラは2台、移動車は2台。その2台で、そのシーンは全部撮った。10時ごろからリハーサルで、午後の3時間くらいで全部撮っちゃった。こういうときにはこういう技法だっていううふうに、無理して時間を使うことはない、と。

 いまの映画は手持ちが多くて、ぶれて落ち着きがない。『メカゴジラ』は落ち着いてて、説得力がある。カットバックすることはない」

高山「昔の映画はどっしりしてますね。その後貧乏になっても、昔のテクニックがあると違う」

山下「チタノザウルスの模型を見たとき、赤い怪獣で、何でこういう造形にしたのかなって。あれは、真船先生の憎悪、憤怒の色なのかなって。チタノザウルスは怒りを秘めている。それは真船博士の怒りとイコールじゃないか。監督は、撮影が終わった後で、“ゴジラをチャンピオン祭りになんか出しちゃいかんのだな”とおっしゃった。当時の(公開の)やり方に怒りがあったのかな。真意を吐露されたのだろうと。チタノザウルスは本多監督のハートの色なのかな」

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【その他の発言】

高山「のちにシナリオが映画になるときは、現場に出るようになったら、役者さんはそうでもない。スタッフのかっこよさはすごい。汗とかで何とも言えない匂いで、ロケバスに乗るとすごいんですよ。あるとき成城の街を歩いてたら、ロケのチームがいて、ふわーっと匂いが来て。どんな香水よりも“ああ、いいな”って。そのくらい現場の匂いが好きですね」

山下「みんなバスしか居場所がない。着替えるのも飯くうのもバスの中」

高山「でも東宝ですから、その後に独立プロに行きますから、その汚さに比べれば(笑)」

山下東宝では、俳優とスタッフがいっしょに移動する。この前転落した観光バスみたいなのがあって、それが古いんですよ。メインの俳優さんはタクシーとかで移動して、メインでも気さくな人は(バスに)乗ってくるけど、バスだと(俳優の前では)疲れた顔もできなくて。でも若いときのあの匂いはいいですよ。弁当もバスで食べて、化粧の匂い、おしろいの匂い、佃煮の匂い」

高山「映画のにおいですね。映画が酔わせてくれる」

 

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