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私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

年末年始の大計画(ただの寸評)

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 「年末年始の大計画」はモーニング娘。のユニット・タンポポの曲で、2001年の初冬に発売された(作詞・作曲:つんく)。

 「大計画」と言っても年末年始を彼と過ごせるのが嬉しいというだけの内容なのだが、他愛ないながら丁寧に心情がつづられた歌詞と大団円を思わせるメロディーが印象的で、冬になるとつい思い出される佳曲である。発売当時は9.11テロの後でアメリカがアフガニスタンを攻撃していた時期で、あれから14年を経て昨年秋のフランスでのテロを契機にISの脅威が叫ばれており、浮世の円環を感じてしまう。


 そんな揺れ動く世界とは全く関係なく筆者は狭い範囲で生きているのだけれども、年末年始は小旅行に行った程度であとはもろもろ鑑賞していたので、それをいくつか書き留めてお茶を濁したい。

 

【映画】

◎『君は僕をスキになる』(1989)

 山田邦子 × 斉藤由貴主演で、恋のさやあてを描いた佳作。12月末に神保町で“斉藤由貴映画祭”が行われ、初日にこの作品が上映されて渡邊孝好監督のトークショーもあった。

 渡邊監督は、テレビ『女にも七人の敵』(1996)、『喪服のランデヴー』(2000)、『死者からの手紙』(2001)、『緋色の記憶』(2003)といった海外の原作を翻案した作品を撮っており(『喪服』と『緋色』は脚色が野沢尚で、特に完成度が高い)、その洒脱かつダークな映像感覚は鮮烈だった。一方で、キャリアの初期にこんなバブリーな作品を手がけていたとは…。

 1980年代初期や90年代半ばの映像を見ていても歳月を感じるのみだが、バブル期の映画を見ると古さだけでなく、他のアジアの国の風景を見ているような、パラレルワールドに迷い込んだような錯覚に陥る。それだけ特異な時代だったということか。

 

◎『愛と平成の色男』(1989)

愛と平成の色男 [VHS]

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 『君は僕を』を見た勢いで、石田純一主演『愛と平成の色男』(1989)を紅白と平行して見る。

 歯科医(石田純一)がさまざまな女性と交際するも結婚する気はなくて逃げ回るというだけの話で、何だこりゃというほかはないけれども、本作は公開当時も不評だったらしい。脚本・監督は、『家族ゲーム』(1983)、『それから』(1985)などで日本映画のホープと目されていた故・森田芳光。本作は、森田監督がアホな観客におもねろうとしていた時期である。低迷期を経て、『(ハル)』(1996)や『失楽園』(1997)などで森田は復活を果たすことになる。

 

◎『男はつらいよ 寅次郎恋歌』(1971)

◎『男はつらいよ 私の寅さん』(1973)

◎『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』(1978)

松竹 寅さんシリーズ 男はつらいよ 寅次郎恋歌 [DVD]

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 年が明けて、未見の寅さん映画でも見るかという気になり、とりあえず3本を鑑賞。寅さんシリーズは、1、2本だけでなく、何本も見ないとどうも世界観に入っていけないところがあるように思う。『寅次郎恋歌』は、最高傑作との呼び声もある作品だが、これだけ見ても感じ入ることはないかもしれない。この世界観に馴染んでいるからこそ、『寅次郎恋歌』の前田吟の独白や、おいちゃん(森川信)のギャグ、寅さん(渥美清)が倍賞千恵子を唄わせて気まずくなる場面が胸に迫る(筆者は寅さんに詳しいわけではないんだけど)。

 『寅次郎わが道をゆく』は全くの凡作だけれども、寅さんを舎弟のように慕うチャラい武田鉄矢(ゲスト)が面白い。同じ山田洋次監督の直近の『幸福の黄色いハンカチ』(1977)に武田はほぼ同じキャラで出ており、『あさが来た』(2015)の福沢諭吉役の武田とは全く様相が異なるので笑ってしまう。

 筆者が中学生のときに渥美清の逝去でシリーズは終焉を迎えたのだが、直前に40代の社会科教師が寅さんを見に行きたいとか授業で言っていた際に“おっさんだなあ”と思っていた。その瞬間には、筆者だけではなくクラス全体にジェネレーションギャップ感が漂っており(再評価されて人気の高まったいまと異なり、末期の寅さんは昭和の遺物扱いだった)、『新世紀エヴァンゲリオン』(1995)にて授業中にセカンド・インパクトの地獄図を滔々と語る熟年教師のシーンを思い出した。かのシーンは、戦後生まれの『エヴァ』の作り手が戦中世代の教師に齟齬を感じたのを直裁に描いたのであろう。世代間の断絶は、いつの時代も変わらぬ世の常。いまの筆者はもう30を過ぎたので、当時の社会科教師の年齢に近い。ちなみに最近、その彼が定年を迎えたいまは安倍政権に反対する運動(日本共産党系)の事務局長を務めているのをネットで偶然見つけ、健在ぶりに思わず苦笑い。

 

◎『SPACE BATTLESHIP ヤマト』(2010)

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 録画して3年くらい放置していた作品。おそらくこうだろうと思っていたけれども予想通りの出来だった。筆者は『さらば宇宙戦艦ヤマト』(1978)をリアルタイムで見られなかった世代なので、怒りも少ない。

 『20世紀少年』(2008)の石橋蓮司竹中直人が大味に演じていたように、本作の艦長役・山崎努もいかにも表面的な芝居で、どうして引き受けたか知らないがやる気ないのは明白。他方で、かつて山崎と同じ劇団雲に在籍したベテラン・橋爪功は大まじめな演技で、「イスカンダルからの申し出は、われわれにとって最後の希望なんだ…」という台詞など真に迫っている。こういうところに手を抜くか否かで、人柄が出るね。 

 

◎『ブレードランナー』(1982)〈再見〉

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 テレビ東京のお昼の映画枠で流れていたので、久々に見直す。『エイリアン』(1979)、『オデッセイ』(2015)などで知られる巨匠リドリー・スコット監督の代表作のひとつで、80年代サブカルチャーのヴィジュアルに多大な影響を与えた。

 筆者がいまさら名作にコメントすることもないけれども、吹き替えが寺田農なのがポイント。まだ40代の寺田の脂の乗り切った演技が堪能できる(この映画がきっかけで、『天空の城ラピュタ』(1986)のムスカ役に起用されることに)。寺田はほかに『ガンジー』(1982)の吹き替えという仕事もあり、それもぜひ見てみたいもの。

 

【テレビ】

◎『富士ファミリー』(2016)

 ふたりでひとりの夫婦脚本家・木皿泉の待望の新作は、富士のふもとにあるコンビニ(雑貨屋)に集った人びとのコミカルな物語。ストローの袋の場面など、変わらぬ芸の細かさには笑う。さりげなく現れる幽霊(と吸血鬼)も、いつもの木皿節!

 

嘘じゃないよ。永遠の命がもらえるんだよ。後悔するよ

そうかもね。でも、私は、みんなと限られた時間の中を生きていくわ

 

 薬師丸ひろ子小泉今日子片桐はいり仲里依紗高橋克実、細田義彦、ミムラなど過去の木皿作品を彩った俳優陣が結集し、新顔の吉岡秀隆中村ゆりかなども好演。初冬の富士近辺の映像美にも感嘆する(演出:吉田照幸)。

 全体としては秀作でありもちろん満足なのだが、以前の飄逸な木皿作品に比べると今回は後半の決め台詞があざとく、説明が多い。『おやじの背中/ドブコ』(2014)や本作のような単発ドラマでは、時間的制約からこうなってしまうのだろうか。